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最終章 魔族の主
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「うおらぁっっ!」
S級魔族シャバ。豪快な踏み込みからの一撃。
アッパー気味の拳打はフレイアの腹にまともに入り、宙に浮かせる。
「っっしゃああああっっ!」
そこから4本腕のラッシュ。
フレイアはメッタ打ちになりながら宙を舞う。竜殺剣バルムンクも手放した。
「くたばりやがれぇっっ!」
トドメの一撃とばかりに4本腕同時の拳打。
大気を震わせる程の衝撃。フレイアの身体は大砲の弾のように真上に吹っ飛んでいく。
「ぶはぁ~っ、やったぜ。口ほどにもねえ。全身、骨やら内蔵がグチャグチャだろうぜ」
大きく息を吐き、そしてシャバは空を見上げた。
フレイアの姿はもう見えないほど上空に打ち上げられた。
シャバはカカカカッ、と豪快に笑うと地面に落ちている大剣の柄に触れる。
「いい剣じゃあねーか。せっかくだからこの俺様が使ってやるとするか」
片手で持ち上げようとしたがわずかに浮いただけ。シャバはウソだろ、と言いながら2本腕でやっと持ち上げた。
だが構えるとなると3本の腕で支えるのがやっと。
これを振るとなると4本腕でようやくといったところだった。
「おい、気安くアタシの剣に触れないでくれるかな。バッチィから」
突然の背後からの声。シャバは驚いて大剣を放し、飛びずさる。
「テメエッ、どうしてっ! なんでこんなとこにっ」
シャバのうしろにいたのはフレイアだった。片手で大剣を軽々と拾い上げ、肩に担ぐ。
「いやー、あんなに吹っ飛んだのはじめてだわ。アンタのことナメてた。ゴメンゴメン」
口元に流れる血を拭いながらフレイアは軽い調子で謝る。
そして竜殺剣バルムンクの先をシャバへと向けた。
「……でもねぇ。アタシ、こんなふうにしてても結構怒ってるんだ。大事な仲間を失ったからサ」
「テメーはバケモノかっ! なんでさっきので死なねーんだ! クソッタレがあっ!」
シャバがヤケクソ気味に突っ込んでくる。フレイアは剣先を下げてから軽く上に振る。
ボンッ、と爆発したように今度はシャバが打ち上げられた。
きりもみながら落下。すでに意識がないのか、シャバは動く様子はない。
「バケモノにバケモノ呼ばわりされるのもねぇ。そら、竜閃──」
竜殺剣バルムンクを逆手に持ちかえ、グッと溜める構え。
シャバが眼前まで落ちてきたときに投擲──。
大剣が触れた直後にシャバの全身は崩壊。木っ端みじんに吹っ飛ぶ。
大剣の勢いは弱まらず、そのまま一直線に追っ手の軍勢のほうへ。
大剣の着弾地点で爆発。魔族たちの断末魔が響き、バラバラになった黒い残骸が辺りに降り注ぐ。
今の一撃で追っ手の軍も全滅。ペッ、と血の混じった唾を吐いてフレイアは踵を返す。
「どれ、葵さんたちのところに急ぐかね」
歩きだすが、その視点がどんどん低くなっていく。大股に歩いていたつもりだが、ほとんど進んでいない。
「あや! アタチの身体……またか! かんじんなときに!」
フレイアの身体は幼女化していた。さらに先程の戦闘で橋に入った亀裂がビキビキと広がっていく。
「おいおい、ウソやよ……」
幼女フレイアは懸命に走るが──ついに橋が崩壊。
びゃあああ、と泣き叫びながら幼女フレイアは落下していった。
📖 📖 📖
その頃葵と戦姫たちは──。
すでに市庁舎が見える街の大通りにいた。
魔族の群れが溢れかえってはいたが、戦姫5人の前進を止めることはできない。
「へー、少し減ってるけど、ちゃんとたどり着けてるじゃん。感心、感心」
市庁舎前の広場。噴水の前で足を組んで拍手しているのは学者ふうのローブに羽根付き帽子、メガネの少年。
ネコヒゲとシッポを持つ、S級魔族テネスリードだ。
「余裕かましちゃって。ムカつくっ」
鴫野みさきが右足を昆虫のような脚に変化。
デストラクションホッパー。
魔族を踏み潰しながら空高く跳躍し、さらに右手を凶刃デッドエンドチェーンソーに変化。
飛行型魔族を数体斬り裂きながら落下。
狙うのはテネスリードの首。
「おっとお、危ない」
魔法の防御壁で防ぐテネスリード。みさきはさらに左腕を魔狼マーナガルムに変化。
「死ねえぇっ!」
ガアッ、と牙をむき出したマーナガルムが防御壁に噛みつく。わずかにヒビが入り、そこにデッドエンドチェーンソーをねじ込む。
防御壁を粉砕。チェーンソーの刃はテネスリードの顔面をかすめた。
「調子に乗ってるねぇ、キミ」
テネスリードの懐から魔法弾が発射される。無数の魔法弾に撃ち抜かれ、みさきは血を噴き出しながら倒れた。
「みさきっ! おいっ、助け出すぞっ!」
葵は戦姫たちに命じる。
群がる魔族をなぎ倒しながらなんとか広場に到着。
みさきはマルグリットが回収した。
市庁舎前の広場に着いたところで周りの魔族の動きが止まる。テネスリードもそれ以上攻撃を加えようとしない。
市庁舎の最上階。そこにはテラスがあり、見下ろしているのは貴族ふうの姿をしたヤギ角の美青年。
S級魔族フォゼラム。
フォゼラムはそこからスーッ、と浮遊しながら下りてくる。
「来たか、創作者と戦神八姫。約束通りの時間に間に合ったようだな」
テネスリードの横に並び、葵に話しかけてきた。
「シノを返してもらうぞ。……無事なんだろうな。もしあいつに何かあったら……」
怒気を含む葵の言葉に呼応するように戦姫たちが身構える。
フォゼラムは肩をすくめながらその前に、と自身が下りてきたテラスのほうを見上げる。
「お前たちに会われるそうだ。我ら魔族を統率される頂点にして絶対の存在……主が」
魔族の主──ここにいるのか。
葵たちの最終目標。
そいつさえ倒すことが出来れば、この街、国、世界中にいるであろう魔族を全滅させることができる。
現在の世界がどうなっているか。状況もわかってくるはず。生存者ももっと見つかる。世界は救われる。いや、救わなくてはならない。
「俺にしか出来ないんだ。俺がやらなくちゃいけない」
葵は市庁舎最上階のテラスを睨みつけた。
S級魔族シャバ。豪快な踏み込みからの一撃。
アッパー気味の拳打はフレイアの腹にまともに入り、宙に浮かせる。
「っっしゃああああっっ!」
そこから4本腕のラッシュ。
フレイアはメッタ打ちになりながら宙を舞う。竜殺剣バルムンクも手放した。
「くたばりやがれぇっっ!」
トドメの一撃とばかりに4本腕同時の拳打。
大気を震わせる程の衝撃。フレイアの身体は大砲の弾のように真上に吹っ飛んでいく。
「ぶはぁ~っ、やったぜ。口ほどにもねえ。全身、骨やら内蔵がグチャグチャだろうぜ」
大きく息を吐き、そしてシャバは空を見上げた。
フレイアの姿はもう見えないほど上空に打ち上げられた。
シャバはカカカカッ、と豪快に笑うと地面に落ちている大剣の柄に触れる。
「いい剣じゃあねーか。せっかくだからこの俺様が使ってやるとするか」
片手で持ち上げようとしたがわずかに浮いただけ。シャバはウソだろ、と言いながら2本腕でやっと持ち上げた。
だが構えるとなると3本の腕で支えるのがやっと。
これを振るとなると4本腕でようやくといったところだった。
「おい、気安くアタシの剣に触れないでくれるかな。バッチィから」
突然の背後からの声。シャバは驚いて大剣を放し、飛びずさる。
「テメエッ、どうしてっ! なんでこんなとこにっ」
シャバのうしろにいたのはフレイアだった。片手で大剣を軽々と拾い上げ、肩に担ぐ。
「いやー、あんなに吹っ飛んだのはじめてだわ。アンタのことナメてた。ゴメンゴメン」
口元に流れる血を拭いながらフレイアは軽い調子で謝る。
そして竜殺剣バルムンクの先をシャバへと向けた。
「……でもねぇ。アタシ、こんなふうにしてても結構怒ってるんだ。大事な仲間を失ったからサ」
「テメーはバケモノかっ! なんでさっきので死なねーんだ! クソッタレがあっ!」
シャバがヤケクソ気味に突っ込んでくる。フレイアは剣先を下げてから軽く上に振る。
ボンッ、と爆発したように今度はシャバが打ち上げられた。
きりもみながら落下。すでに意識がないのか、シャバは動く様子はない。
「バケモノにバケモノ呼ばわりされるのもねぇ。そら、竜閃──」
竜殺剣バルムンクを逆手に持ちかえ、グッと溜める構え。
シャバが眼前まで落ちてきたときに投擲──。
大剣が触れた直後にシャバの全身は崩壊。木っ端みじんに吹っ飛ぶ。
大剣の勢いは弱まらず、そのまま一直線に追っ手の軍勢のほうへ。
大剣の着弾地点で爆発。魔族たちの断末魔が響き、バラバラになった黒い残骸が辺りに降り注ぐ。
今の一撃で追っ手の軍も全滅。ペッ、と血の混じった唾を吐いてフレイアは踵を返す。
「どれ、葵さんたちのところに急ぐかね」
歩きだすが、その視点がどんどん低くなっていく。大股に歩いていたつもりだが、ほとんど進んでいない。
「あや! アタチの身体……またか! かんじんなときに!」
フレイアの身体は幼女化していた。さらに先程の戦闘で橋に入った亀裂がビキビキと広がっていく。
「おいおい、ウソやよ……」
幼女フレイアは懸命に走るが──ついに橋が崩壊。
びゃあああ、と泣き叫びながら幼女フレイアは落下していった。
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その頃葵と戦姫たちは──。
すでに市庁舎が見える街の大通りにいた。
魔族の群れが溢れかえってはいたが、戦姫5人の前進を止めることはできない。
「へー、少し減ってるけど、ちゃんとたどり着けてるじゃん。感心、感心」
市庁舎前の広場。噴水の前で足を組んで拍手しているのは学者ふうのローブに羽根付き帽子、メガネの少年。
ネコヒゲとシッポを持つ、S級魔族テネスリードだ。
「余裕かましちゃって。ムカつくっ」
鴫野みさきが右足を昆虫のような脚に変化。
デストラクションホッパー。
魔族を踏み潰しながら空高く跳躍し、さらに右手を凶刃デッドエンドチェーンソーに変化。
飛行型魔族を数体斬り裂きながら落下。
狙うのはテネスリードの首。
「おっとお、危ない」
魔法の防御壁で防ぐテネスリード。みさきはさらに左腕を魔狼マーナガルムに変化。
「死ねえぇっ!」
ガアッ、と牙をむき出したマーナガルムが防御壁に噛みつく。わずかにヒビが入り、そこにデッドエンドチェーンソーをねじ込む。
防御壁を粉砕。チェーンソーの刃はテネスリードの顔面をかすめた。
「調子に乗ってるねぇ、キミ」
テネスリードの懐から魔法弾が発射される。無数の魔法弾に撃ち抜かれ、みさきは血を噴き出しながら倒れた。
「みさきっ! おいっ、助け出すぞっ!」
葵は戦姫たちに命じる。
群がる魔族をなぎ倒しながらなんとか広場に到着。
みさきはマルグリットが回収した。
市庁舎前の広場に着いたところで周りの魔族の動きが止まる。テネスリードもそれ以上攻撃を加えようとしない。
市庁舎の最上階。そこにはテラスがあり、見下ろしているのは貴族ふうの姿をしたヤギ角の美青年。
S級魔族フォゼラム。
フォゼラムはそこからスーッ、と浮遊しながら下りてくる。
「来たか、創作者と戦神八姫。約束通りの時間に間に合ったようだな」
テネスリードの横に並び、葵に話しかけてきた。
「シノを返してもらうぞ。……無事なんだろうな。もしあいつに何かあったら……」
怒気を含む葵の言葉に呼応するように戦姫たちが身構える。
フォゼラムは肩をすくめながらその前に、と自身が下りてきたテラスのほうを見上げる。
「お前たちに会われるそうだ。我ら魔族を統率される頂点にして絶対の存在……主が」
魔族の主──ここにいるのか。
葵たちの最終目標。
そいつさえ倒すことが出来れば、この街、国、世界中にいるであろう魔族を全滅させることができる。
現在の世界がどうなっているか。状況もわかってくるはず。生存者ももっと見つかる。世界は救われる。いや、救わなくてはならない。
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