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第1部 剣聖 羽鳴由佳
66 もにょっ娘
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アルマが動く。二刀ダガーを構え、じりじりと近づいてくる。
わたしは納刀し、居合いの構え。
間合いに入った瞬間、叩き伏せる。わたしの刀のほうがリーチが長い分、先に届く。
投げナイフは太刀風で迎撃する。
いくつかのパターンを想定。この構えからなら、どんな攻撃にも対応できる。
ぐっ、とアルマの姿勢が低くなった。
──来るか。
頭から突っ込んできた。間合いに入る──抜刀。
ヒュオッ。
わたしの刀は空を切る。まさかこのタイミングで、かわされた?
アルマ。舞台に背がつくほどにのけ反ってかわしている。まるでリンボーダンスの達人みたいに。
いかん、抜刀後の無防備状態。上体を起こしたアルマのダガーが──こない。頭からわたしの腹にぶつかってきた。
「うごっ」
美少女がうごっ、とか言うだろうか。そんなことを考えつつ、腹を押さえながら後退。
アルマは距離を空けないように、くっつくように接近。
次こそはダガー攻撃か。いや、ダガーは握っているが、拳の部分で殴りつけてきた。
わたしの肩や胸にヒットしたが、もちろん致命傷にはならない。いたた、と言いながらさらに離れようと後へ跳ぶ。近すぎては刀が使えない。
跳んだところで、アルマもまた頭から突っ込んできた。がしっ、と抱きつかれ、倒れこむ。
まったく、なんなんだ。わたしとアルマは倒れた状態でくんずほぐれつ。なんだか学校の柔道の授業を思い出した。
「……たくない」
アルマが抱きつきながらぼそりと呟く。
え、なんだって? 聞き返すと、アルマは抱きついた腕にグググと力を込める。いだだだだ。
「……由佳を傷つけたくないし、あたしも死にたくない。あたしの相絶殺の技は、自分の命を引き換えにして相手を殺す技……」
アルマ……カーラさんを暗殺するといったが、そんな技を使おうとしていたのか。
わたしも周りに悟られないように、アルマを引き剥がそうとしながらぼそぼそと話しかける。
「だったら、そんな命令無視して逃げ出すんだ。大体、なんであんなヤツらに従ってるんだ」
「こっちの世界に来たときから、ミリアムにはいろいろ恩があるから……それに、ヨハンやラーズグリーズに見張られているの。あたしが裏切らないか」
「……わかった。わたしが守ってやるから。それにカーラさんがいれば、アイツらも手を出せないはず。この試合もわたしにまかせろ」
アルマは涙目で頷いた。
相手のメンバー……間宮京一とヨハンは医務室。すぐには動けないだろう。
ショウは試合の結果を見ないですでに立ち去ったようだ。
見ているのはラーズグリーズだけ。アイコンタクトでアルマに意思を伝える。
ババッ、と離れて居合いの構え。願望の力を一気に高めた。鍔と鞘の隙間からキイイィ、と練った気の光が漏れ出てくる。
アルマもダガーに炎の属性を付け、それを最大まで引き上げる。
ダガーをまとう炎がボボボ、と勢いを増す。
観客からワアアア、と大きな歓声。派手な技のぶつかり合いを期待しているようだ。
抜刀──巨大な剣閃が発生。舞台を削りながらアルマへ向かって飛ぶ。
アルマは跳躍。回転落下しながら炎の二刀ダガーを剣閃に叩き込む。
二人の技が舞台上で炸裂。相殺したかに見えたが、わたし達の目的は別にある。アルマによって剣閃は軌道を変え、しかも炎をまとって舞台下のラーズグリーズへ。
不意を突かれたラーズグリーズは対応できない。まともに剣閃を喰らい、観客席下の壁まで激突。崩れた壁の下敷きになった。
瓦礫の中から出てくる様子はない。おそらく気を失ったのだろう。
これで現時点でアルマを見張っている者はいない。あとは観客たちに不審がられないように、わざとアルマに負けてもらうだけだが……。
ゴッ、とアルマが頭から突っ込んできた。またか。あまりの勢いに倒れ、わたしはうげふ、と呻く。
アルマは泣きじゃくりながらわたしの胸に顔をうずめた。
「……ごめ、ごめんなさい、由佳。あたし、今まで……」
あとはもにょもにょと、なに言っているか分からない。良かった。いつものもにょっ娘……わたしの知っているアルマだ。
「いいから……もういいから。わたしが守ってやるから。またこれからは一緒だ」
わたしはアルマの頭を優しく撫でた。
この一年間、寂しい思いをしてきたのではないか。いや、この世界に来てから、気を許せる仲間などいなかったのではないか。あのミリアムでさえも。
む、観客がざわつきはじめた。さっきから抱きあったままだから当たり前か。
「羽鳴選手、アルマ選手、どうしたのですか? 早く離れて、試合の続きを」
審判からの指導。わたしはアルマを引き剥がそうとするが……ダメだ。だだっ子みたいに首を振って離れそうにない。
「このまま動かなければ、両者失格ですよ」
再度の審判の指導にも、アルマは離れそうにない。わたしも手足をバタバタさせたが……結局は一定時間過ぎても戦わなかった為に両者失格になった。
せっかくの決勝、その大将戦での最後のグダグダっぷりに観客席からは非難の声も聞こえたが、藤田戦ほどではなかった。
結果──決勝戦は二勝一敗、二引き分けでわたし達、チームナギサの優勝が決まった。
わたしは納刀し、居合いの構え。
間合いに入った瞬間、叩き伏せる。わたしの刀のほうがリーチが長い分、先に届く。
投げナイフは太刀風で迎撃する。
いくつかのパターンを想定。この構えからなら、どんな攻撃にも対応できる。
ぐっ、とアルマの姿勢が低くなった。
──来るか。
頭から突っ込んできた。間合いに入る──抜刀。
ヒュオッ。
わたしの刀は空を切る。まさかこのタイミングで、かわされた?
アルマ。舞台に背がつくほどにのけ反ってかわしている。まるでリンボーダンスの達人みたいに。
いかん、抜刀後の無防備状態。上体を起こしたアルマのダガーが──こない。頭からわたしの腹にぶつかってきた。
「うごっ」
美少女がうごっ、とか言うだろうか。そんなことを考えつつ、腹を押さえながら後退。
アルマは距離を空けないように、くっつくように接近。
次こそはダガー攻撃か。いや、ダガーは握っているが、拳の部分で殴りつけてきた。
わたしの肩や胸にヒットしたが、もちろん致命傷にはならない。いたた、と言いながらさらに離れようと後へ跳ぶ。近すぎては刀が使えない。
跳んだところで、アルマもまた頭から突っ込んできた。がしっ、と抱きつかれ、倒れこむ。
まったく、なんなんだ。わたしとアルマは倒れた状態でくんずほぐれつ。なんだか学校の柔道の授業を思い出した。
「……たくない」
アルマが抱きつきながらぼそりと呟く。
え、なんだって? 聞き返すと、アルマは抱きついた腕にグググと力を込める。いだだだだ。
「……由佳を傷つけたくないし、あたしも死にたくない。あたしの相絶殺の技は、自分の命を引き換えにして相手を殺す技……」
アルマ……カーラさんを暗殺するといったが、そんな技を使おうとしていたのか。
わたしも周りに悟られないように、アルマを引き剥がそうとしながらぼそぼそと話しかける。
「だったら、そんな命令無視して逃げ出すんだ。大体、なんであんなヤツらに従ってるんだ」
「こっちの世界に来たときから、ミリアムにはいろいろ恩があるから……それに、ヨハンやラーズグリーズに見張られているの。あたしが裏切らないか」
「……わかった。わたしが守ってやるから。それにカーラさんがいれば、アイツらも手を出せないはず。この試合もわたしにまかせろ」
アルマは涙目で頷いた。
相手のメンバー……間宮京一とヨハンは医務室。すぐには動けないだろう。
ショウは試合の結果を見ないですでに立ち去ったようだ。
見ているのはラーズグリーズだけ。アイコンタクトでアルマに意思を伝える。
ババッ、と離れて居合いの構え。願望の力を一気に高めた。鍔と鞘の隙間からキイイィ、と練った気の光が漏れ出てくる。
アルマもダガーに炎の属性を付け、それを最大まで引き上げる。
ダガーをまとう炎がボボボ、と勢いを増す。
観客からワアアア、と大きな歓声。派手な技のぶつかり合いを期待しているようだ。
抜刀──巨大な剣閃が発生。舞台を削りながらアルマへ向かって飛ぶ。
アルマは跳躍。回転落下しながら炎の二刀ダガーを剣閃に叩き込む。
二人の技が舞台上で炸裂。相殺したかに見えたが、わたし達の目的は別にある。アルマによって剣閃は軌道を変え、しかも炎をまとって舞台下のラーズグリーズへ。
不意を突かれたラーズグリーズは対応できない。まともに剣閃を喰らい、観客席下の壁まで激突。崩れた壁の下敷きになった。
瓦礫の中から出てくる様子はない。おそらく気を失ったのだろう。
これで現時点でアルマを見張っている者はいない。あとは観客たちに不審がられないように、わざとアルマに負けてもらうだけだが……。
ゴッ、とアルマが頭から突っ込んできた。またか。あまりの勢いに倒れ、わたしはうげふ、と呻く。
アルマは泣きじゃくりながらわたしの胸に顔をうずめた。
「……ごめ、ごめんなさい、由佳。あたし、今まで……」
あとはもにょもにょと、なに言っているか分からない。良かった。いつものもにょっ娘……わたしの知っているアルマだ。
「いいから……もういいから。わたしが守ってやるから。またこれからは一緒だ」
わたしはアルマの頭を優しく撫でた。
この一年間、寂しい思いをしてきたのではないか。いや、この世界に来てから、気を許せる仲間などいなかったのではないか。あのミリアムでさえも。
む、観客がざわつきはじめた。さっきから抱きあったままだから当たり前か。
「羽鳴選手、アルマ選手、どうしたのですか? 早く離れて、試合の続きを」
審判からの指導。わたしはアルマを引き剥がそうとするが……ダメだ。だだっ子みたいに首を振って離れそうにない。
「このまま動かなければ、両者失格ですよ」
再度の審判の指導にも、アルマは離れそうにない。わたしも手足をバタバタさせたが……結局は一定時間過ぎても戦わなかった為に両者失格になった。
せっかくの決勝、その大将戦での最後のグダグダっぷりに観客席からは非難の声も聞こえたが、藤田戦ほどではなかった。
結果──決勝戦は二勝一敗、二引き分けでわたし達、チームナギサの優勝が決まった。
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