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第2部 消えた志求磨
42 新名刀変化
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「おい、お前の相手はこっちだ。意識を失っている相手じゃないと戦えないのか」
納刀し、わたしは居合いの構えを取りながら挑発。
李秀雅は振り返りハッ、と笑った。
「バカか、お前……弱ったヤツから始末するのがわたしらのやり方だ。お前はあとできっちり殺してやるから安心しろ」
まずい、挑発に乗らない……。このままではアルマとビノッコがやられる。
わたしは願望の力を集中──できるか、まだ練習中の新名刀変化。
鞘と柄の部分が深い緑──常磐色に変化。刀の形状や長さは変わらない。
打刀──名刀臥竜。
成功だ。このフォームは敵の注意をこちらに引きつける特徴がある。これでイ・スアがわたしを標的にしてくれればいいのだが。
しかし、このフォームには問題がある。
この居合いの構え……いつもより低く、重心を前に置いているのだが、わたし自身の意思で刀を抜くことができない。というか一歩も動けないのだ。
自動迎撃型のフォーム。間合いに入った敵には完全無比のカウンターをぶちかますことができる。だが、もし敵が飛び道具のような距離を取った攻撃をしてくれば意味がない。
これは賭けだ。イ・スアが銃や手榴弾を使ってくれば……負ける。
でもわたしにはこのフォームしかない。これしか他に勝つ方法が思いつかない。
イ・スアはまたこちらをチラと振り返る。だが向かってはこない。
あのおっかない目つきで睨んでいるだけだ。わたしはさらに叫ぶ。
「どうしたっ! わたしの新しい力に怖気づいたのかっ!」
だがヤツは鼻で笑って、再び背を向けて歩き出す。くそ、何か勘づいているのか。
「お前なんて恐くないぞ! わたしはっ──あの葉桜溢忌だって倒したんだっ!」
本当はわたしだけの力で倒したわけじゃない。でも他に有名な敵の名前を思いだせない。こんなんで反応するとは思えないが、やけくそだ。
意外にもイ・スアは立ち止まり、完全にこちらを向いた。
「お前が? ……冗談にしては笑えねェな。わたしにすら勝てないお前がアイツを倒したなんてな。アイツのバカげた強さは昔の取引相手だからよく知っている……」
イ・スアは口元の血を拭い、シャツの左袖をまくり上げる。
左腕には黒い蜂の刺青。
裂けたシャツの隙間から黒のブラが丸見えなので妙に色っぽいが……その左腕を中心に寒気がするような願望の力を込めている。
「まあいい……その安っぽい挑発に乗ってやるよ。死ぬ順番が変わるだけだ」
そう言ってイ・スアは消えた。
──来る。超高速攻撃。このフォームではヤツの姿をとらえられないが、関係ない。一瞬が何十秒にも感じる。極限の集中によるものか。
わたしの身体が動いた。無意識の反応。
相手の姿が見えないまま腰を引き、踏み込みながら──抜刀。
手応えあり。ギュバアアァッ、とイ・スアは竜巻に巻き込まれたように宙を舞う。
きりもみながら落下──その間にわたしはバチイッ、と納刀。さっきより深く、低く構え──抜刀。
ガカッッ、カアッ、と落雷のような轟音とともにイ・スアは吹っ飛んでいった。フロアの壁を破壊し、塔の外へ。
この高さから落ちれば、いくらヤツでも……。
ヒザをつき、わたしは臥竜のフォームを解除。
一撃放っただけでかなり疲れた……。いや、正確には二撃か。
臥竜のフォーム独自の技。二段抜刀、逆鱗双破。
「ギリギリだったけど……勝てた。アルマとビノッコは……」
ふたりのもとへと歩き出す──が、3歩ほどでコロンと転んだ。
消耗しているとはいえ、これはおかしい。手足が震え、呼吸が荒くなる。苦しい、頭もぼんやりしてきた。
胸元に違和感。衣服をはだけさせて見ると、胸の中心に黒いアザ。あの天魔まいの首のうしろにあったのと同じものだ。
「やばい、これってたしか……」
毒だ。完璧にカウンターを決めたつもりだったのに……イ・スアの攻撃を受けていたのか。
わたしは這いながらアルマとビノッコに近づこうとしたが、それもできなくなった。
完全に身体が動かない。息も……止まりそう……だ。
せっかく勝つことができたのに。こんなところでわたしは死ぬのか。
アルマ、ビノッコ……みんな……。
志救磨……ゴメン。わたし、ここまでみたい。
納刀し、わたしは居合いの構えを取りながら挑発。
李秀雅は振り返りハッ、と笑った。
「バカか、お前……弱ったヤツから始末するのがわたしらのやり方だ。お前はあとできっちり殺してやるから安心しろ」
まずい、挑発に乗らない……。このままではアルマとビノッコがやられる。
わたしは願望の力を集中──できるか、まだ練習中の新名刀変化。
鞘と柄の部分が深い緑──常磐色に変化。刀の形状や長さは変わらない。
打刀──名刀臥竜。
成功だ。このフォームは敵の注意をこちらに引きつける特徴がある。これでイ・スアがわたしを標的にしてくれればいいのだが。
しかし、このフォームには問題がある。
この居合いの構え……いつもより低く、重心を前に置いているのだが、わたし自身の意思で刀を抜くことができない。というか一歩も動けないのだ。
自動迎撃型のフォーム。間合いに入った敵には完全無比のカウンターをぶちかますことができる。だが、もし敵が飛び道具のような距離を取った攻撃をしてくれば意味がない。
これは賭けだ。イ・スアが銃や手榴弾を使ってくれば……負ける。
でもわたしにはこのフォームしかない。これしか他に勝つ方法が思いつかない。
イ・スアはまたこちらをチラと振り返る。だが向かってはこない。
あのおっかない目つきで睨んでいるだけだ。わたしはさらに叫ぶ。
「どうしたっ! わたしの新しい力に怖気づいたのかっ!」
だがヤツは鼻で笑って、再び背を向けて歩き出す。くそ、何か勘づいているのか。
「お前なんて恐くないぞ! わたしはっ──あの葉桜溢忌だって倒したんだっ!」
本当はわたしだけの力で倒したわけじゃない。でも他に有名な敵の名前を思いだせない。こんなんで反応するとは思えないが、やけくそだ。
意外にもイ・スアは立ち止まり、完全にこちらを向いた。
「お前が? ……冗談にしては笑えねェな。わたしにすら勝てないお前がアイツを倒したなんてな。アイツのバカげた強さは昔の取引相手だからよく知っている……」
イ・スアは口元の血を拭い、シャツの左袖をまくり上げる。
左腕には黒い蜂の刺青。
裂けたシャツの隙間から黒のブラが丸見えなので妙に色っぽいが……その左腕を中心に寒気がするような願望の力を込めている。
「まあいい……その安っぽい挑発に乗ってやるよ。死ぬ順番が変わるだけだ」
そう言ってイ・スアは消えた。
──来る。超高速攻撃。このフォームではヤツの姿をとらえられないが、関係ない。一瞬が何十秒にも感じる。極限の集中によるものか。
わたしの身体が動いた。無意識の反応。
相手の姿が見えないまま腰を引き、踏み込みながら──抜刀。
手応えあり。ギュバアアァッ、とイ・スアは竜巻に巻き込まれたように宙を舞う。
きりもみながら落下──その間にわたしはバチイッ、と納刀。さっきより深く、低く構え──抜刀。
ガカッッ、カアッ、と落雷のような轟音とともにイ・スアは吹っ飛んでいった。フロアの壁を破壊し、塔の外へ。
この高さから落ちれば、いくらヤツでも……。
ヒザをつき、わたしは臥竜のフォームを解除。
一撃放っただけでかなり疲れた……。いや、正確には二撃か。
臥竜のフォーム独自の技。二段抜刀、逆鱗双破。
「ギリギリだったけど……勝てた。アルマとビノッコは……」
ふたりのもとへと歩き出す──が、3歩ほどでコロンと転んだ。
消耗しているとはいえ、これはおかしい。手足が震え、呼吸が荒くなる。苦しい、頭もぼんやりしてきた。
胸元に違和感。衣服をはだけさせて見ると、胸の中心に黒いアザ。あの天魔まいの首のうしろにあったのと同じものだ。
「やばい、これってたしか……」
毒だ。完璧にカウンターを決めたつもりだったのに……イ・スアの攻撃を受けていたのか。
わたしは這いながらアルマとビノッコに近づこうとしたが、それもできなくなった。
完全に身体が動かない。息も……止まりそう……だ。
せっかく勝つことができたのに。こんなところでわたしは死ぬのか。
アルマ、ビノッコ……みんな……。
志救磨……ゴメン。わたし、ここまでみたい。
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