異世界の剣聖女子

みくもっち

文字の大きさ
157 / 185
第2部 消えた志求磨

49 盾と機械(レオニード・ザハロフ視点)

しおりを挟む
 もうだいぶ長いこと突っ立ったままだ。いい加減飽きてきた。
 隣のガンマンヤローは無愛想で話しかけてもロクに返事もしねぇ。
 どうせ一緒なら由佳みたいなイイ女が良かった……。

「ちっ、退屈だぜ……。《宝剣男子》だか包○男子だか知らねーが、来るならさっさと来やがれ」
 
「おい、レオニード。気を緩めるなよ。来やがったぞ」

 クレイグが腰のホルダーから2丁拳銃を引き抜く。
 通路の曲がり角から姿を現した男──間違いない、《宝剣男子》華叉丸かしゃまるだ。

「この一本道の通路でまっすぐ向かってきやがる。バカが──」

 クレイグの銃撃。ドドドドンッ、と2丁拳銃が火を吹く。
 俺もサボってるわけにはいかない。両手をバキバキと硬質化、鋭利な爪と頑丈な皮膚を持つ魔物のような手に変化。

 身長以上もある大弓に矢をつがえ、狙いを定める。ヤツは背後から出したデカイ剣で銃弾を防いではいるが、それ以上進めないようだ。この隙に仕止める。

 願望の力を一気に高め、矢に乗せて放った。
 矢は孔雀緑色の尾を引きながら一直線に華叉丸へ──。

 ヤツは大剣を床に突き立てる。ゴッ、と白い光が立ち昇り、俺の矢はそれに吸い込まれた。

 光が収まり、ヤツがいたところには大型の盾がズンとそびえ立つ。

「なんだぁ、ありゃ。あのヤローの能力か」

「……らしいな。おい、動きだしたぞ」

 重そうな大型の盾が持ち上がった。盾を持っているのは白い甲冑の大柄な男。長い金髪になかなか整った顔立ち。

《聖騎士》マックス・ロックウッド。

 頭の中にダダダダと文字が打ち込まれた。華叉丸はたしか剣を人に戻すこともできると聞いていた。あのロン毛はそうやって出てきたのだろう。

 マックスは盾を前面に構えてズンズン歩いてくる。
 後ろの華叉丸をかばいながらここを突破するつもりだ。

「ナメやがって……クソが」

 クレイグが2丁拳銃をホルダーへ戻し、ババッ、とコートをひるがえす。
 ジャララララッ、と弾帯が大蛇のようにのたうち出てきた。
 ガシャアッ、と構えたのは──回転式多銃身機関銃ガトリングガン

「おいっ、いきなりぶちかますつもりか」

「うるせぇ……チマチマやんのは面倒なんだよ。コイツでまとめて肉片にしてやる」

 ドギャギャギャギャギャッ、と激しい射撃音に舌打ちしながら耳を塞ぐ。
 バラバラと飛び散る薬莢も当たり、熱っちい、くそっ、と悪態をつく。
 
 全弾撃ち尽くし、キイイイ、と銃身の回転が止まる。
 盾野郎と華叉丸は──。
 硝煙で視界が遮られている。だがあれほどの射撃を受ければ跡形も残らないだろう。だが──。

 ゴウッ、と硝煙を突き破って前進する大型の盾。おいおいおいっ、と慌てて矢を連続で放ち、クレイグも再び2丁拳銃で攻撃。
 だがあえなく矢も銃弾も盾に弾かれ、あと数歩のところまでマックスが迫る。
 
「クソがっ!」

 クレイグと同時に叫ぶ。突き出された盾の一撃をかわし、わずかな下の隙間に矢を射つ。クレイグはショットガンに持ち替え、やはり足元へ散弾をブッ放つ。
 これは効いた。マックスはガシャッとヒザをつく。瞬間、盾の陰からバッと飛び出したのは華叉丸。跳躍して俺達の頭上を飛び越えた。

「行かせるかよっ!」

 すかさず矢を放つ。しかし、ヤツの背中から1本の剣が飛び出して叩き落とされた。その剣はゴテゴテとした機械のような剣。カッ、と光ったと思えば人の形に変化。
 俺の頭の中にダダダダがくる。

《願望式人型戦闘兵器》シトライゼ。

 オレンジ色のおかっぱ頭に海外の近未来SF映画に出てきそうな濃い顔。ムチムチの赤いハイレグボディースーツに身を包んだ女だ。
 シトライゼはジャキッ、とこちらに指先を向ける。イヤな予感がして飛び退いた。俺のいた場所にズガガガッ、と機銃掃射のように銃弾が撃ち込まれた。
 指が銃……コイツ、まさかロボットの願望者デザイアなのか。

「目標は攻撃を回避。確実にダメージを与えるため、接近戦モードに移行します」

 無表情、棒読みでシトライゼが向かってくる。くそ、コイツにかまっている場合じゃない。華叉丸を追わなければ。クレイグは──ダメだ、マックスの対応に手いっぱいのようだ。俺がどうにかするしかない。
 
 大弓を構えようとして──ギャアッ、とシトライゼが一気に距離を詰めてきた。この速さ……よく見ればシトライゼの足の底がローラーブレードに変化している。
 弓を叩き落とされ、左腕と首を掴まれて壁に押さえつけられる。なんてばか力だ……。このまでは首の骨がへし折られてしまう。
 
 ヒザ蹴り。相手は微動だにしない。右拳で脇腹を何度も殴る。これも効果なし。
 願望の力を高め、バキバキと硬質化した右手でシトライゼの顔面を掴んだ。ヤツの顔がミシミシと音を立てる。

 こうなったら我慢比べだ。俺の首が折れるのが先か、そっちの顔面が潰れるのが先か──。

 
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

処理中です...