はなれ小島のぐー

みくもっち

文字の大きさ
上 下
1 / 35

1 サビ猫のぐー

しおりを挟む
 今日もいい天気。窓から見える青い空にぷかぷか浮かぶ白い雲。
 穏やかな海の景色。カモメの鳴き声。気持ちのいい潮風がカーテンを揺らしています。

 お気に入りのクラシック音楽をレコードで流し、紅茶を飲みながらぼんやりと外を眺めます。
 窓際のテーブルにヒジをついて、サビ猫のぐーは大きなあくびをしました。

 街を離れて3ヶ月。この周りを海で囲まれた小さな小さな島……歩いて一周するのに30秒もかかりません。ここの生活にぐーはとても満足しています。

 この青い景色はずっと見ていて飽きません。
 水平線に船が見えたりすると、どこの船だろう? 輸送船かな? 漁船? もしかしたら海賊船かも! なんて想像がふくらみます。

 しばらくのんびりして、ぐーは裏の畑に行くことにしました。
 キッチン横の裏口を出ればすぐの場所です。
 それこそ猫の額ほどの小さな小さな畑ですが、そこで育ててるナバンの野菜をひとりで収穫するにはちょうどいいのです。

 元気いっぱいに緑の葉を広げてよく育っています。
 じょうろで水をあげながらひとつひとつに声をかけていきました。

「大きくなったね。よくがんばったね。もうすぐ収穫するからね。おいしくおいしく育ってよ」

 カブに似たナバンの野菜たちは、ぐーの声に応えるように葉っぱを揺らします。
 
 畑の雑草を抜いたあと、ぐーは家に戻ってシャワーを浴びました。 

 ぶるるる、と身体を震わせてからバスタオルで丁寧に拭きます。
 そのあとは冷蔵庫からオレンジジュースを出して飲みました。
 電気は屋根の上のソーラーパネルから供給されています。この電力もぐーひとりで使うには十分だし、もしものときは物置に発電機があります。

 そうこうしているうちに夕食の用意をしなければいけません。
 ぐーはもう一度冷蔵庫をのぞきました。
 卵が3個。ベーコンが5切れ。野菜室にはナバンの野菜を切って保存したものが少々……。冷蔵庫の横のカゴには食パンが一袋。

 そろそろ食材を買い出しに行くか、注文しなければいけません。
 そんなことを考えながら今日はもういいや、と卵とベーコンを焼いてパンに乗せたものと、ナバンの野菜スープ。これで夕食を済ませました。

 夜になると、ぐーは釣りに出かけました。
 出かけるといっても、家を出てすぐのところで椅子に腰かけ、隣にランタンを置いて釣糸をたらすだけです。
 エサは畑を掘ったら出てくるミミズを使います。
 
 キレイな三日月の夜でした。
 波の音がザザ、ザザーンと心地よく耳に届いてきます。

 
 

 

 
しおりを挟む

処理中です...