全寮制の男子校に転入して恋をした俺が、本物のセックスを思い知らされるまで

tomoe97

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翔の部屋にて、学校に行く準備を整えてもらい、朝飯を食べていると、じーっとこちらを見つめる視線を感じた。

「…何」
「あのさ、晴くん」
「ん?何だよ」
「今さらもいいところなんだけど…」
「だから何」
「俺が言えたあれじゃないんだけど、色気やっばいね」
「は?」
「抱かれました感満載すぎる。まじやばい。今日は俺、守りに徹するわ。トイレとかも離れないから」
「きしょくね?」
「辛辣!なら、まじでそのぽやーっとしたオーラ消して!頼むから!」
「何言ってるかわかんねぇ。」

だるかったので翔の言ってることを無視して普通に部屋から出て教室に向かう。
途中で啓に出会った。

「おはよ~二人とも…って晴!?ちょっと、お前やべえって!」
「なんなんだよ、本当」

啓は俺を見るなり顔が真っ赤に染まった。
どいつもこいつもなんなんだ。仕込みか?

「とりあえずボタン全部止めてキスマーク隠せ!あとはなんだ?なんかマスクとかして、顔隠して、あ、サングラスもかけとく?」

キスマークのせいか。じゃあ翔のせいじゃんと思い視線をやると、耳元で俺にもめちゃくちゃついてるからおあいこでしょ、と言われ、躱された。

「マスクにサングラスは不審者じゃない?」
「そうでもしないと襲われるって!色気ハンパない!」

翔がへらへら笑いながら謝ってくる。

「ごめんね、晴くん」

その言葉に啓が苦い顔をしていた。

「薄々気づいてたけど、やっぱり近場すぎだってお前ら。生徒会の一年三人のうち、2人デきてるとか気まずいんだけど」
「デキてないけど」
「え?やることヤってんじゃないの?」
「ヤッてるけど?」
「何それ怖い!付き合ってからそういうことはしようよ!」
「え、だって啓も親衛隊の子と遊んでるでしょ?一緒じゃん」
「俺は!付き合ってない子とはやらないから!部屋に呼んでチューしてイチャイチャして終わり!本当に付き合うまでは誰ともエッチしません!」
「啓は真面目なんだなあ」
「純だなあ」

俺と翔の二人のほのぼのした目が向けられる。

「え?俺がおかしいの?最近の男子高校生こわ…」


授業はちんぷんかんぷんなので、落書きのクオリティが上がっていく。おかげで1日があっという間に過ぎる。
今日も今日とて放課後に生徒会室へと向かう。ペース配分や休みやすいポイントがだんだん分かってきた。
一週間で慣れる、というのは案外本当かもしれない。

「お、名取弟。今日は息切れしてないんだな。…なんでマスク?」

生徒会室には、風紀委員長が来ていて、兄と棗先輩と共に何やら話し合いをしていた様子だった。

「こいつ、体調悪いみたいなんで」

翔がすかさずフォローをいれる。流石に不審者すぎるので、来る前にサングラスは外した。
体調が悪い、と聞いて途端に落ち着きがなくなった兄は俺の気持ちを知っているので、俺と委員長が喋るたびに青ざめて口をぱくぱく動かしている。
バレるからやめてほしい。
翔は色々察したのか伏せて笑いを堪えている。
啓は状況についていけないらしく、憧れている会長の百面相に慌てていた。こりゃ今日も翔のところに泊まりかな。

「そうだ、名取弟、名前で呼んでもいいか。弟だと呼びづらくて」
「は、はい、もちろん。」
「ん、じゃあ…晴。俺のことも、名前で呼んでほしい」
「え…いいんですか?」
「駄目…か?嫌なら強制しない」
「全然!皆から名前で呼ばれてる印象ないんで、驚いただけです」
「親しい人には名前で呼ばれてることの方が多いよ。晴とは…もっと親しくなりたいから」
「えっ」

嬉しいことを言われてドキ、とした。マスクがあって良かった。確実に今の俺の顔は真っ赤だろう。

「じゃあな、晴。お大事に」

名前を呼ばれて、ふわっと微笑みを浮かべた風紀委員長…じゃない、連夜先輩は去り際に頭をポンポンしてくれた。
あ~幸せ。

「なるほど。本当に罪な男ですね、蓮夜」

副会長が一部始終をみて妖しい笑みを浮かべていたことに気が付かなかった。



「「「お疲れ様でした~」」」

今日の分の仕事も終わって、一年組で食堂に向かおうとしていたら、兄に引き留められた。

「あの、晴…」
「なに、飯行くんだけど」
「……俺も行く」
「え?来ないで」

俺の機嫌が途端に悪くなったのを、啓と翔が諌める。

「まぁまぁ、いいじゃん!席離れて座ればそんなに話さないでも大丈夫でしょ。会長、一緒に行きましょ!」

啓は兄のファンだったみたいだから、めちゃくちゃ積極的だ。

「葉も食堂で食べるんですか?では今日は僕も」
「え、副会長も?珍しい」

結局全員で食堂に向かうことになった。
19時を過ぎているのにそこそこ賑わっていた食堂は、俺たち生徒会役員全員の出現により、とてつもないざわめきに包まれた。
皆すごい人気だな、と感心した。


今日はB定食が鱈の西京焼きだったので、そちらを選んだ。
定食を食べながら、翔と今日の出来事を話す。今日授業中に描いた落書きは翔の似顔絵なので自慢していると、呆れた顔で授業受けなと怒られた。
ちなみに、俺の横に翔、俺の目の前には棗先輩、その横に兄、啓という席順になった。
兄はもっと端行けよと思ったが、まあいつもなら絶対目の前か隣を死守しているので、かなり譲歩したのかもしれない。

「晴くんって、蓮夜のこと好きですよね」

いきなり飛び出た棗先輩の爆弾発言に俺と兄が味噌汁を吹いた。

「わ、ちょっと!兄弟揃って汚いな」
「…俺、分かりやすいですか?」
「そりゃもう。めちゃくちゃ分かりやすいです。ね、合田くん?」
「めちゃくちゃ分かりやすいですね。あと会長の反応も相まって」
「え?なに?晴って風紀委員長のこと」

大きい声で言い始めた啓の口を慌てて兄が抑える。よくやった。

「……ごめん」

察したのか、謝られた。

「え。なんで?何か接点あったの?」

啓が疑問に思ったのか、質問してきた。

「んや、まあ、倒れそうになったのを助けてくれたけど、実をいうと一目惚れ」
「「「へぇ~」」」

啓、翔、棗先輩は興味津々といった感じだ。兄は無言のまま、話を真剣に聞いている。

「でも人を好きになるのはじめてだから、なんかなんもわかんない。とにかくかっこいいことくらいしか考えられないし、なんか頭の中連夜先輩で一杯で、ぽわーってなる」

気が付けば、皆無言になっていた。え、引かれた?何かキモかったかな今の発言。啓も、翔も、手で顔を覆っているし、棗先輩は終始にこやかだ。

「いやぁ、これは可愛いですね、葉。あなたが大事にしてた理由がよく分かりました。」
「……俺の可愛い晴が…」

ようやく口を開いた兄に、啓が疑問をぶつける。

「え、会長ってブラコンなんすか!?」
「それ、今更じゃない?」

翔が冷静なツッコミをいれる。俺も、今更?と思った。啓は鈍感なのかな。

「晴くん」

棗先輩に改まって名前を呼ばれると、何事かと身構えてしまう。

「は、はい…なんですか」
「蓮夜についていいこと教えてあげましょうか」
「え、なんですか?」
「連夜って実は経験がないって知ってました?」

経験がない?何って、ナニの?そんな訳ない、あの容姿で、あの噂で。

「は?そんな訳ないだろ。親衛隊を取っ替え引っ替えしてるって噂を聞いたぞ」

すかさず兄が抵抗する。

「それが大マジです。あんな遊んでそうな見た目ですが、天然で。無意識でタラしてるだけなんですよね。性知識が疎いんですよ、彼。親衛隊の子達に乗っかられたり襲われたりしても鈍すぎてマッサージと勘違いすることもあるみたいで」
「どこ情報なんですか、それ」
「蓮夜の親衛隊隊長。僕の幼馴染なんです。」
「え?」
「ついでにいうと蓮夜も幼馴染ですよ。出会ったのは中等部からですが…。僕と連夜が役職持ちになる時に、連夜の方がボケ~っとしてて危ないからってもう一人の幼馴染が親衛隊を結成しました」

棗先輩は幼稚舎から、蓮夜先輩は中等部からの入学だったらしい。
棗先輩の幼馴染と蓮夜先輩が中等部に上がって最初の同室だったことから意気投合し、仲良くなったらしいが、仲良くなるにつれて判明した事実、蓮夜先輩はとてつもなく天然タラシということ。

絶対に手慣れているであろう甘い発言の数々、無意識の頭撫で、自然なエスコート。色気たっぷりのタレ目もフェロモンな匂いも全部天然もので、本人はタラシているつもりはなく、無自覚で行っているものらしい。
一方でこれまた天然な両親から大事に大事に育てられた彼は、性知識から遠ざけて育てられ、中等部での彼は『赤ちゃんってどう作るの?』状態だったらしい。
なんでも、いまでこそ雄っ気増しましの男に成長したが、昔はそれはそれは儚げな美少年だったらしく怪しい人に狙われたい放題だったらしい。
それならといっそのこと性知識を全く遠ざけられた結果、ぽやぽやのタラシが完成したと。
蓮夜先輩自体も性欲が皆無に等しいらしく、年に一、二回の無精くらいしか経験がないとか。これは棗先輩の憶測らしいけど。天然記念物か?


しかしうちの学園の、蓮夜先輩の親衛隊は肉食であった。
蓮夜先輩の普段の色気ダダ漏れな様子と親衛隊隊長と仲良くしている様子を見て、謎の勘違いを起こし、自分達も関係を持ちたいと代わる代わる、あの手やこの手で蓮夜先輩を誘惑し、上に乗ってみたり股間を揉んでみたりと一時期それはそれは凄まじかったらしい。

蓮夜先輩は本当に性知識がないので、その度に「マッサージ?ありがたいな~。腰凝ってるんだよね」や、「最近はそんな所もマッサージするんだ?俺時代遅れだな~」とボケボケして何もしないまま帰されていたらしい。

そこを幼馴染の親衛隊隊長が見逃さず,身の危険が及ばないように、せめて事情を知っている隊員達同士で、夜に部屋に行き、マッサージ屋を開き、嘘の情報を流しているらしい。
蓮夜先輩は親衛隊を取っ替え引っ替えして遊んでる。その噂が産まれた。
当の本人はそのことを一切知らないという徹底ぶり。恐るべし。

「晴?晴~?飛んでるよ~帰ってきて~」

翔が俺の肩をがくがく揺さぶってくれて意識を取り戻した。

「情報が多くて異世界いってた」
「でもなんか合点がいった。委員長の部屋から出てきた子が泣いてたからそのまま持ち帰って何人かと寝た事あるけど、全然キスマークとかなかったんだよね。あれ、そういうことだったのか」
「こいつ、最悪じゃね?」

翔の手早さは凄まじい。

「そうだったのか…俺はてっきり…。外見と噂で人のことを判断してしまって申し訳ない。晴!高山は安心できる!いい男だ!応援するぞ!」
「お、おう…急だな」

突然兄が応援しだしたので苦笑する。態度変えすぎだろ。

「でも、風紀委員長のタイプってどんな人なんですか?それじゃ交際経験もろくにないでしょ」
「そうなんです。この学園においてはなかなか難しい条件なんですよね。あ、ノンケではないみたいなんですけど。」
「あ、それは分かってるんだ」
「いい感じになりそうなのは大体男みたいで、本人はどっちもいけると思ってます。まあ幼い頃からこの学校にいたらね、そうなりますよね。」
「で、その条件って」
「…純情な子」

翔と啓は遠い目をしていた。俺はがっくりと項垂れた。

「つまりは、処女?」
「詰んだな……」
「失恋した…」
「晴!残念だったな!でも大丈夫!お兄ちゃんがいるぞ!」

涙が出てきた。
兄が打って変わってなぜか嬉しそうなのが気に食わない。

「あらら…晴くんは既に経験がお有りでしたか」
「そりゃ、まぁ…」

啓が翔と俺をちらっと見る。それだけではないけどな。

「でも脈なしではないと思いますけどね、僕から見れば」
「え?」
「蓮夜ってあのビジュアルだから遊び目的か遠巻きにしか見られなかったんです、今まで。でも晴くんみたいな純粋な好意って恐らくはじめてだから出会ってからすごく嬉しそうだし」
「本当ですか……ズッ、」
「割とあからさまですよ。声かけたり笑顔向けたり。彼、生徒会室に特に用がなくても来てますし。いくらタラシでもあれはさすがに狙ってますね」
「そうだよ!脈ありだって!泣くなよ~!」

完全に泣きはじめた俺をみんなで慰めるムーブになってその日は解散した。

泣いてたからか、本当に俺が蓮夜先輩のこのを好きだとようやく分かったらしく、兄が妙に優しくなって風呂後のドライヤーと寝かしつけもしてもらった。



俺は、純情なんかではない。ましてや処女ではない。
はじめて好きになった蓮夜先輩のタイプに、箸にも棒にもかからないなんて、悲しくて悲しくて、自分のこれまでの行動を恨んだ。
過去の自分は変えられないから、せめて蓮夜先輩に少しでもいいと思ってもらえるような人になろう。
俺はそう誓った。
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