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第一話
しおりを挟む私の家族は変わってる。
父は広大な領地を治めている領主で、私たち家族にはいつも優しく、何をしていても見守っていてくれる。
それにとても強くて私が暴漢に襲われそうになった時もデコピンだけで暴漢を飛ばしていた。本当に強い自慢の父。
母は父とは身分の差があったらしいが、父が一目惚れし熱烈に求婚して、しつこさのあまり渋々やってきたそうだ。母曰く「致し方なく」、父曰く「嫌よ嫌よも好きの内」だそうだ。つまり犬も食わないということ。
マナーとか淑女教育とかに厳しくて、間違うと叱られるけど、感情的に怒ったりは絶対にしない。
私が悲しんでる時は近くで寄り添ってくれるし、甘いお菓子をくれる。
淑女はこんなに食べません、とお菓子を食べさせてくれないこともあるのに、なんだかんだ言って優しくて、甘えてしまう。早く母離れしなくちゃと思うんだけどなかなかできない。
二人は結婚後、私を含めて子供五人と暮らしている。
最初は二人だけだったのに随分と賑やかになったそうだ。
長男のお兄さまはとても男とは思えないほど美しい人だった。
少し変なところはあるけれど、いつも周囲の女性や男性を魅了している。
私も気を抜くとぼんやりとその美しさに目を離せなくなる。
私に対して非常に心配性で過激なところもあるけど、両親には兄の好きなようにさせてあげてと言われているのであまり気にしないようにしてる。
時々、頭にある角で人を刺すらしく血だらけで帰ってくることがあるが、血が滴っても美しさが損なわれないのはすごいと思う。
長女のお姉さまはいつも溶けている。
何が溶けているのかというと、彼女の体がとしか言えない。
その体は水のような、スライムのような柔らかいもので作られていて、触れると柔らかく、少し冷たい。夏場は気持ちいいけれど冬場の姉はとても冷たくて痛い。
いつも親身で、私が悩んでいたりすると相談に乗ってくれるし、頭を撫でてくれる。
そばにいると安心するのは、姉からマイナスイオンが出ているからなのかな。
次男のお兄さまは元気。とにかく元気。
元気が有り余っているのか、いつも領地内を走り回っている。
少し血の気が多くて喧嘩っ早いけど、自分から喧嘩を売ることはないし、喧嘩を買うのも私を守るためだってわかってるからヒーローみたいでかっこいい。
身体が大きくて毛で覆われてるから身だしなみを整えるのが大変みたい。彼のブラッシングをするのは私の役割だ。
大きな耳とか鋭い爪や牙とか私にないものがたくさんあるけれど、私の家族たちはみんな違うから、個性なんだろうな。私も遠くまで聞こえる耳とか欲しい。
三男のお兄さまはとっても恥ずかしがり屋。
家にいるはずなのに全く見かけないから、すごく不思議。
けど兄は私のことを見ているみたいで、私の話を色々と知っているみたい。
いつも黒い塵のような形をしていて、実体がないから仕方がないのかも。でも時々誰かの姿を借りて現れる。普段会えない分、会えた時すごく嬉しい。
口数も多い方じゃないけど、私が困ってると必ず来てくれる優しい人。
こんなに個性的な家族なのに、私は全然取り柄がなくて普通。
父のような立派な黒い角とか、母のような髪の毛が蛇だったりしない。
特徴らしい特徴がないから、本当にこの人たちと家族なのかなと疑ったりするけど、そう言うとみんなが泣くから絶対に口に出したりはしない。
たまに悩むことがあるけど、家族からはこれ以上なく愛されてるってわかるから、普通だっていうのも個性かもと思い直してる。
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