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魔法使いと役目
とても痛い
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暗闇
どこまでも広がる黒
誰かが呼んでいる。
アデレードは走っているが、黒しかない空間と、何故か重たい足のせいで感覚がなかった。
誰、と呼びかけても誰も何も答えない。
何度も呼び続ける。
「誰…誰よ…ねえ!」
『アデレード…』
「え…」
『こっち、こっち、』
胸がどくんとした
その声を知っている。
そうだ、つい先ほど、自分が、この手で…
殺した
「っ…!?ルア!!」
何かを言おうとしたはずなのに、急に言葉の発っし方を忘れたかのように口が動かない。
『アデレード…ルアね…』
ーーー ーーー
「あ、起きた。おはようアデレード」
目の前には幻影であるものの、ちゃんと形になっているユリス。
そしてアデレード自信は二階の自室のベッドに寝ていた。
「アデレードがあんまりうなされてたから、目の中から出て起こそうとしてたんだ」
そう、か…
夢だったのだと気づく。
カーテンの隙間からもれる朝日がアデレードを照らした。
昨晩の事を思い出す。
アデレードは、人を二人も殺した。
ちゃんと、役目にそって。
殺しを依頼した代償としてメリッサを殺し、依頼そのものであるルアも殺した。
それが、本来のことなのに。
心がとてもとても痛い。
アデレードは体を起こし、はっとして棚の上の手のひらくらいの瓶を見る。
中には赤黒い液体と、ぐちゃぐちゃのなにかが入っている。
あれは…メリッサだったものだ。
そうだ、ルアを殺した後に…
思えばどうやって帰ってきたのかも分からない。だが、ちゃんと服は着替えられており、一滴の返り血もなく、臭いもしない。
ちゃんとお風呂にも入ったようだ。
「でも良かったね、深夜だったから魔法使わなくても誰にも見つからずに帰ってこれて」
アデレードは立ち上がり、棚の上の瓶を手に取る。
「それ、やっぱり材料にするの?」
「…いや…」
殺しの代償は依頼主の肉体だ。
それを使い、アデレードの母は魔法薬を作っていた。
もちろん病気を治したりいい気分にさせたりするという綺麗なものではなかったが。
「アデレード一切使ってないよね、君の母が残した人間の材料。」
母は魔法薬のためなら代償関係なしに、客でないものも殺し、材料にしていた。
そう考えると、アデレードはとても使う気になれないし、使いたいとも思わない。
理由はそれだけではないけど
「もったいないな…」
ユリスがアデレードの手の瓶を見つめる
そして
「僕のは使ってくれないの?」
胸がどくんとなる。
今度は夢の中ではなく、現実ではっきりと。
思わず瓶を落としそうになる。
また、十年前の記憶が…
苦しむユリスの体と声
はっきりと覚えている
ずっと視線をそらさなかったのだから
ずっとまとわりついているのだから
「…!私…は!」
「ふ…ごめんね?冗談だよ。その依頼主の材料も、別に使わなくたっていいよ。それはむしろ君の始めての報酬だからさ。」
ばくばくなる心を押さえ、瓶を置く。
「私は…絶対に使わないわ…」
ユリスはそっかと一言だけ言い、小さく笑った。
「アデレード、僕思うんだけど、あの子…ルアって言ってたっけ…最期にありがとうって言ってたけど、あれは本心なんじゃないかな」
「え…」
予想外のユリスの言葉に声がもれる。
「あの子は自分で自分を洗脳してたけど、心では解放されたいと思っていたんだよ。でも、自分ではできない。だから、死ぬ時、長い苦しみから解放されたんだよ。」
「そんな…こと…」
「それにアデレードはあの子を笑顔にした。それだけでも十分だよ。 母親に殺されるよりずっといい」
ルアに、謝りたかった。
未来を切ってしまったこと、目の前で母親を殺したこと。
でもルアは、ありがとうと…
ルアは、救われたのだろうか…
いや、それを願っていいのか…
アデレードは、はっとした。
ユリスが自分を無にしてくれたのはこのためだったのか…?
どうすることもできない運命を、死というやすらぎで終わらせるために。
「苦しまないように優しさをはらってほしかったけど、無理だったね…やっぱり、アデレードは優しいよ。」
ユリスは、分からない。
昔も今も。
それでも心が落ち着いていった。
でも、忘れてはいけない。
自分がした罪は永遠に消えないと。
どこまでも広がる黒
誰かが呼んでいる。
アデレードは走っているが、黒しかない空間と、何故か重たい足のせいで感覚がなかった。
誰、と呼びかけても誰も何も答えない。
何度も呼び続ける。
「誰…誰よ…ねえ!」
『アデレード…』
「え…」
『こっち、こっち、』
胸がどくんとした
その声を知っている。
そうだ、つい先ほど、自分が、この手で…
殺した
「っ…!?ルア!!」
何かを言おうとしたはずなのに、急に言葉の発っし方を忘れたかのように口が動かない。
『アデレード…ルアね…』
ーーー ーーー
「あ、起きた。おはようアデレード」
目の前には幻影であるものの、ちゃんと形になっているユリス。
そしてアデレード自信は二階の自室のベッドに寝ていた。
「アデレードがあんまりうなされてたから、目の中から出て起こそうとしてたんだ」
そう、か…
夢だったのだと気づく。
カーテンの隙間からもれる朝日がアデレードを照らした。
昨晩の事を思い出す。
アデレードは、人を二人も殺した。
ちゃんと、役目にそって。
殺しを依頼した代償としてメリッサを殺し、依頼そのものであるルアも殺した。
それが、本来のことなのに。
心がとてもとても痛い。
アデレードは体を起こし、はっとして棚の上の手のひらくらいの瓶を見る。
中には赤黒い液体と、ぐちゃぐちゃのなにかが入っている。
あれは…メリッサだったものだ。
そうだ、ルアを殺した後に…
思えばどうやって帰ってきたのかも分からない。だが、ちゃんと服は着替えられており、一滴の返り血もなく、臭いもしない。
ちゃんとお風呂にも入ったようだ。
「でも良かったね、深夜だったから魔法使わなくても誰にも見つからずに帰ってこれて」
アデレードは立ち上がり、棚の上の瓶を手に取る。
「それ、やっぱり材料にするの?」
「…いや…」
殺しの代償は依頼主の肉体だ。
それを使い、アデレードの母は魔法薬を作っていた。
もちろん病気を治したりいい気分にさせたりするという綺麗なものではなかったが。
「アデレード一切使ってないよね、君の母が残した人間の材料。」
母は魔法薬のためなら代償関係なしに、客でないものも殺し、材料にしていた。
そう考えると、アデレードはとても使う気になれないし、使いたいとも思わない。
理由はそれだけではないけど
「もったいないな…」
ユリスがアデレードの手の瓶を見つめる
そして
「僕のは使ってくれないの?」
胸がどくんとなる。
今度は夢の中ではなく、現実ではっきりと。
思わず瓶を落としそうになる。
また、十年前の記憶が…
苦しむユリスの体と声
はっきりと覚えている
ずっと視線をそらさなかったのだから
ずっとまとわりついているのだから
「…!私…は!」
「ふ…ごめんね?冗談だよ。その依頼主の材料も、別に使わなくたっていいよ。それはむしろ君の始めての報酬だからさ。」
ばくばくなる心を押さえ、瓶を置く。
「私は…絶対に使わないわ…」
ユリスはそっかと一言だけ言い、小さく笑った。
「アデレード、僕思うんだけど、あの子…ルアって言ってたっけ…最期にありがとうって言ってたけど、あれは本心なんじゃないかな」
「え…」
予想外のユリスの言葉に声がもれる。
「あの子は自分で自分を洗脳してたけど、心では解放されたいと思っていたんだよ。でも、自分ではできない。だから、死ぬ時、長い苦しみから解放されたんだよ。」
「そんな…こと…」
「それにアデレードはあの子を笑顔にした。それだけでも十分だよ。 母親に殺されるよりずっといい」
ルアに、謝りたかった。
未来を切ってしまったこと、目の前で母親を殺したこと。
でもルアは、ありがとうと…
ルアは、救われたのだろうか…
いや、それを願っていいのか…
アデレードは、はっとした。
ユリスが自分を無にしてくれたのはこのためだったのか…?
どうすることもできない運命を、死というやすらぎで終わらせるために。
「苦しまないように優しさをはらってほしかったけど、無理だったね…やっぱり、アデレードは優しいよ。」
ユリスは、分からない。
昔も今も。
それでも心が落ち着いていった。
でも、忘れてはいけない。
自分がした罪は永遠に消えないと。
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作品を読ましていただきました。誤字が無くしっかりと内容が書かれており、とても良かった思います。「〜〜〜。」と最後に丸を付けて書かれていると思いますが人の発する言葉の最後に丸は付けなくても良いかと思いました。また、ルビなどを振ったりすると読書が読みやくなると思うのでやってみると良いかもです。これからも作品頑張って下さい。
丁寧な感想ありがとうございます!頑張っていきたいと思います!