呪いなんて怖くない!〜木こりの息子と仮面の少年

閑人

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22.不審者

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 執事さんによると御当主様は急に馬車で現れ『母がご迷惑をおかけしたお詫びに〝1人で〟来た。ルドルフ様に直に謝罪できるチャンスを逃してはと…無礼は承知しているが是非取り次いで欲しい』と言っているらしい。どうすればいいのか俺が決める事ではないけど悩ましい。

 「謝罪?何を言うのか楽しみだわ。会ってみましょう」

鼻でフンと音をたてシャルロッテ様がキッパリと言った。「みませんか?」ではなく「みましょう」なのが小気味いい。

 「しかしなぁ…」エルンスト様が渋る。

貴族の屋敷に急に来た客は追い返されても文句は言えないのが普通らしいのでやんわりと追い返すのが無難ではあるのだが…

 「何故こちらばかり迷惑かけられるのか不満でしたの。相手の手の内見せてもらいましょう。ルドルフ、リュさん!力を貸しなさい!」

うわっ!こちらに火の粉飛んできた。でもこの様な事は日常的なのか誰もシャルロッテ様に逆らわない。まあ筋は通ってるしいいか、じゃあ俺も

 「私から意見を言っても?」

 「どうぞ」

 「まずは…」


 俺の意見は採用された。ルドルフは庭師のヴァルター兄弟を呼び出した。今警護ができるような人間はこの屋敷には門番の2人だけらしいのでせめて力持ちかつ背の高い人間を面会する場所に置き威圧感を与えるためだ。ヴァルター兄弟は2人とも背が高く力もあるとの事でお願いした。
 俺はというと…執事さんと馬車の側で尚且つ向こうからの死角になる場所にこっそりきた。御当主は屋敷内に入った為御者は暇そうにぶらぶらしてるのが見える。

 「何をなさるので?」

俺は小石を拾いそれを馬車に向かって投げた。コツンと当たる。それを何回か繰り返す。

 「馬車に人が乗ってるかの確認。『1人で来た』とは言ってるけど隠れて彼女が乗ってる可能性があるでしょ?でも何か音がすれば外を見るか、御者に確認させる為呼びつけるはず…馬車には誰もいないみたいだね。次はっと」

「こんにちは執事さん。おや坊ちゃんのお友達も一緒かい?」

屋敷の庭の外の散歩道からお爺さんに声をかけられた。坊ちゃんの帰宅も友達連れて来たこともこの領地では筒抜けか…でもちょうどいい。

 「はい。リュと申します。ルドルフ様と仲良くさせていただいております。あの、つかぬことを伺いますが、この辺りで不審な人や馬車などを見かけませんでしたか?」

 「…うちの婆さんたちがさっきこの辺では見かけない2人組がこそこそしてるのを見たって。お屋敷にお知らせするかどうか悩んでたんだけど」

 御当主〝1人〟じゃないじゃないか…

 「執事様、一応確認なんですが、領内の不審者を取り押さえる権限をお持ちなのは?」

 「エルンスト様です。あと私に『様』はいりません。『オリバー』とお呼び下さい」

 「じゃあオリバーさん、私がその不審者を捕まえてきますので、あなたはお客様に知られないようその旨エルンスト様にお伝え下さい。お爺さん、その不審者のところに私をコッソリ案内してもらえますか?あと他にも不審者がいないかも聞いてもらえたら…」


 俺はイザーク。この屋敷のフットマン見習いだ。この勤め先はお給金は安いが『優しい人しかいない』と評判だ。どのくらい優しいかというと俺が勤め始めてすぐの時体調を崩して寝込んだら、薬と体に良い食べ物がウチに届いたくらい優しい。今日そんな素晴らしい勤め先のお坊ちゃんに絡んでいる家の御当主とやらが急に現れた。謝罪をとは言ってるものの急に来るなんて無礼だ!と怒ってもいいのに誰も怒っていない…シャルロッテ様なんて『話を聞きましょう』とおっしゃってる。姿形も美しいが心まで美しいとは。
 先程ルドルフ様のご友人と執事さんが外の様子を見に行ったと思ったら、慌てた様子で執事さんだけが戻って来て俺に言った。

 「リュ様があの客人の連れと思われる不審者を単身捕まえに行ってしまいました。私はご主人にこのことを伝えに行きますが、君にはリュ様を追って加勢して下さい」

 「お、俺が?」腕っぷしに自信は全くない。

 「そうです。あなたのお爺さんが不審者の情報を知らせてくれて、その場所へリュ様と一緒に向かっています。だからお願いします」

 なんて危ない事をしようとするんだろう…爺ちゃんが怪我でもしたら大変だ!追いかけよう。道々で『爺ちゃんとご友人さん見かけなかった?』と聞きつつ急いでそちらの方向に進んでいると、前方から荷車をすごい勢いで引いてくる人が…ってあれご友人さんだ!

 「おぉーい大丈夫ですか?」

俺の横をすり抜けようとしたところを何とか止める事が出来た。

 「え?ちょっと急いでるんだけど。あれ?あなたはお屋敷の?」俺の顔に見覚えがあったらしい。

 「爺ちゃんは?あと不審者は?」

 「…あぁあのお爺さんならずっと後ろから来るはず、あと不審者はここ」

 と荷車の荷台を指差した。そこには荷物が2つ…いやぐるぐる巻きにされた人間が2人乗せられていた。

 「まさかこれお1人で?」

 「そう。あ、でもぐるぐる巻きにするのはお爺さんに手伝ってもらったけど。紐の結び方がすごい上手だよね。っていけない!早くこの2人をルドルフの所に届けないと。あなたも手伝って!」
 
 この人不審者2人を1人で捕まえたってしれっと言ってるよな?俺が今話してるのって12歳の少年だよな?頭が色々ついていかないが手伝います…
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