怪談レポート

久世空気

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№11 匂い

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 窓開けなくて大丈夫ですか?

――細田さんは最初にそう私に聞いた。

 そうですか。じゃあ話しますね。
 私は先日出張に行きました。仕事の内容を詳しく言うことはできませんが、うちではとある企業向けの商品を扱っておりまして、それを売りに行ったり、専門色の強い使い方をレクチャーしに行ったり、メンテナンスをしたりと、とにかく出張が多いんです。
 今回も新規で購入してくださった企業にレクチャーしに出向しました。それは大体2、3日かかり、遠方だったので近くのビジネスホテルに部屋を用意してもらっていました。フロントに入った時ふと生臭いような、かび臭いような微妙な臭いが鼻を突きました。気づかなければそれほど気にならない物ですが、気づいてしまったらずっと鼻をふんふんと鳴らしてしまう。そんな臭いでした。

 ホテルについたその日の昼から私は顧客を訪ねました。受付もないような小さな会社です。その会社の社長が直々に出迎えてくださいました。そこで私はぎょっとしました。ホテルの変わった臭いが社長から強く感じたからです。社長だけではありません。社内に入るといたるところから同じ匂いがするのです。私は建物にその地方の独特の素材が使われているのではないかと考えたのですが、誰かが動くたびに強く臭うようなので人から発されている物のようでした。仕事の合間にこの辺りの特産品は何かと聞いてみました。しかし誰もが笑って「そんなものはない」だの「強いて言うなら米だ」だの、臭いに関するヒントが得られません。食事も大した珍しいものも出てきませんし、思ったような臭いしかしませんでした。そもそも口が臭いわけではないのです。

 出張最後の夜、私はその社員の女性をホテルの部屋に招きました。ええ、褒められたことではありませんが。ですがその彼女が脱いだ時、一番強く臭いを感じました。そう、それは間違いなく体臭でした。体臭にも地域性があるんだな、と私はその時思いました。

 しかし出張が終わって家に帰ると妻がきょとんとして言いました。「あなた、変なにおいするわね」と。服を脱いで消臭剤をかけ、風呂でしっかり体を洗いましたが消えません。確実に私の毛穴から臭っているようです。
 妻は、たまらなくなったようで子供を連れて実家に帰りました。会社では誰も何も言いませんが誰もが私を遠巻きに見ています。たぶん臭うのでしょう。
 そして最近あの時の女性社員から頻繁に連絡が来るようになったのです。内容はたわいのないものですが、言外にまた来いといってるように思えます。この臭い……もう取れないんでしょうか?

――細田さんが帰った後、私は窓を全開にした。 
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