怪談レポート

久世空気

文字の大きさ
139 / 254

№139 いらない子

しおりを挟む
 母親になったらね、お化けなんか怖がってられないんですよ。でもやっぱり誰かに聞いて欲しくて……。

――明田さんは妊娠8ヶ月らしい。お腹をなでながらゆっくり話し始めた。

 私の母は多分子供なんて好きじゃなかったんです。でも周りの友達が皆妊娠して、赤ちゃんを見せてもらっている内に、自分も欲しくなったんでしょう。
 でも母はいつもイライラしていました。私は可愛い服を着ても似合わないし、頭も良くない。母は外では「仲良し母子」と法螺を吹き、家では私を疎んでいました。
 当然反発するようになり、結局大学は他県に行ってそのまま就職、結婚しました。結婚相手も結婚式も母の意に沿わなかったのでずっと披露宴の間むくれていましたね。
 妊娠したとき、私はそのまま家の近くの病院で出産を希望しましたが、夫が長期出張になってしまい、夫の実家も遠方なので仕方なく里帰りしました。それに関して母は文句言わずに受け入れてくれたんですが、多分「孫が生まれる」ということを周りにアピールしたかったんでしょう。
 実家につくと、すでに部屋の掃除と準備がされていて、産婦人科も私が生まれた病院を予約してくれていました。病院は古いところかと思いましたが意外ときれいで待合室は私と母が座るともう満員でした。母は周りの人を見渡して小さいため息をついて、私にだけ聞こえるようにつぶやきました。

「あんたがもっと可愛ければ、可愛い孫が生まれたでしょうけどね」

 いつもの嫌みのつもりかもしれませんが、その言葉に私はかーっとこめかみが熱くなりました。言って良いことと悪いことがあるだろう、そう抗議しようとしたとき、長椅子の隣に座っていた女性が声を掛けてきたんです。

「その子、いらないんですか? じゃあください」

 母は聞こえているとは思わなかったらしく「えっ」と言ったきりだまり、私も何を言われたか分からずあっけにとられていました。すると待合室にいた女性が次々に「私も欲しい」「私も」「いや私が」と私のお腹に向かって白い手を伸ばしてきたんです。
 私は床に降りてお腹を守るようにうずくまりました。母の悲鳴が遠のいていきます。その他の記憶はありません。ただ「いやだ」「やめろ」「ふざけんな」ととにかく思いつく限りの拒絶の言葉を吐いていたと思います。
 男性の声が聞こえ、待合室が静かになりました。私ははっと顔を上げると、白髪のおじいさんとその後ろに隠れるように女の子がおびえるような目で私を見ていました。周りを見渡すと、そこは公園で待合室ではありません。私が産婦人科にいたはずだと言うことを話すとおじいさんは首をかしげて
「その病院なら結構前に潰れたけどなぁ。院長がなんかやらかしたと聞いたが」
 と。私はそのまま家に帰り、無理を言って夫の出張先について行き、そこで出産しました。母からはあれから何度も連絡はありましたが、謝罪も言い訳も一切なく今ではもう連絡が来ても無視しています。
 あの病院が何だったのか分かりませんが、もし彼女たちが幽霊なら早く成仏して、こうやって新しく生まれ直してほしいものです。その方がきっと希望がある。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM
ホラー
一話完結型のショートショートです。 短いけれど印象に残るそんな小説を目指します。 毎日投稿して行く予定です。楽しんでもらえると嬉しいです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...