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◈◈忌み子の少年◈◈
いらない子
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「な、名前が無いとはどういうことです?」
「どういうごとって言われでも……」
「名前がねぇなんて、ありえねぇだろーが。あー、ほら。こう、なんかあるだろ、なんか」
ルディウスとヴァンフリートに言われて、少年は首をかしげた。
喋ることに慣れてきたのか、声のかすれが少なくなり、喋るスピードもスムーズになってきた。
「い"らない子になまえ"、いる?」
「何を、言ってるんだ……?」
「?お"れは、いらな"い子だ。ずっと、あそこにいた。ただ、殴られるための、道具。そのだめに、う"まれてきた。それなのに"、名前、いる?」
2人は絶句した。この子は、自分がいらない子だと言うのだ。
「あなたの親は……?」
ルディウスは、最後の希望とばかりに声を絞り出した。
「親なんて、知らない。気づいたら、あそこにいた。暗い中、ずっと。たまに誰か来て、殴られる"けど、それが終わったら、ご飯をくれる。前は、もう1人来てたけど、いづの間にか来なくなった。」
確定だ。この子は、虐待をされていたのだ。ずっと。それも、物心つく前から。
「ッ!!」
ルディウスは思わず、少年を抱きしめた。そして、口を開き声を震わせて言った。
「泣いて、泣いていいんですよ。もう、あなたをあそこに閉じ込める人はいません。ご飯がないということも、殴られたり、蹴られたりということも、もうないんです。我慢なんてしなくていいんです。あなたは道具なんかじゃありません。ちゃんと立派な1人の人間です。大切な1人の子供です。もう、もう大丈夫ですよ。」
しかし、少年は首を傾げた。
「泣くって、何だ?」
「な、何言ってんだよ。ほら、寂しかったり、悲しくなったり、辛かったりしたら、誰だって泣くだろう?」
「?……“さびしい”?“かなしい”?“つらい”?何だ、それ?」
2人はまたもや絶句した。
「“笑う”って、知ってますか……?」
「何だ、それ?」
「“嬉しい”ってのは?」
「“楽しい”は?」
「???」
いくら言っても、少年は首を傾げるばかりだ。いくらかそういうことが続いて、2人は気づいたのだ。
「嘘…だろ?」
「そんな、まさか……!!」
三度目の絶句。
「そんなことがあるはずない!!感情が無いなんて……!!」
ルディウスは綺麗な顔を歪めた。
「どれだけ、どれだけ虐待をしていたというのですか、こんな子供に‼感情が無くなるってことは、随分小さい頃からやっていたとしか思えません!!」
「……例えば、物心つく前から……とか?」
「ッッッ!!!!!!」
部屋が急激に冷える。
「お、おい!!魔力、魔力漏れてんぞ!!」
「!!すみませんっ、つい……」
「いや、俺も同じ気持ちだからな。自分で言っておいてあれだが、俺ももう少しで魔力が漏れて大変なことになっただろうからな。だが、次からは気をつけてくれ。コイツもいることだし。」
「ハッ、そうでした。大丈夫でしたか?」
ルディウスはバッと少年を見た。
「だいじょ…ぶ」
「そうですか……良かった」
ホッと胸をなでおろして、ルディウスはヴァンフリートを振り返った。
「団長、この子は私が引き取ろうと思うのですが……」
「ああ。俺もそれがいいと思う。お前には懐いてるようだしな」
ヴァンフリートは少年を見て言った。少年は自分のことを話していることに気づいてないのか、ルディウスとヴァンフリートの間でキョロキョロとしていた。
ルディウスは少年にスッと近寄った。それに気づいた少年は、ルディウスをじっと見る。
「急で申し訳ありませんが、あなたは私が引き取ることになりました」
「引き、とる?」
「ええ。つまり、これから私があなたの父親です」
「父親……父、さん?俺の?」
「はい。父親になるにはちょっと若すぎる気がしなくもないですが……」
「別にいいじゃねぇか、父・さ・ん♪」
「団長!!」
ヴァンフリートがルディウスをからかう。
「んで?こいつの名前どうすんの?」
「私がつけようかと。あなたもいいですか?」
ルディウスが少年の顔を見て言った。すると、今まで感情が全くなかった瞳に、微かに光が浮かんだ。
「ん。名前、欲しい」
「それでは、そうですね……。心……シャルルなんてどうでしょう?」
「シャルルか……。うん、いいんじゃねぇか?確か、古代語で心って意味だったよな?」
「はい。この子は心がないようなので、早く心を取り戻して、感情豊かで優しい子に育って欲しいと思いまして。」
「俺は気に入ったぜ!!おい。お前はどうだ?」
「しゃるる……シャルル!!俺の、名前……!!」
少年――シャルルは、微かにほんの少し弾んだような声で言った。
ルディウスとヴァンフリートは、それを少し微笑ましそうに見ていた。ルディウスは恥ずかしそうにしながらだが。
「どういうごとって言われでも……」
「名前がねぇなんて、ありえねぇだろーが。あー、ほら。こう、なんかあるだろ、なんか」
ルディウスとヴァンフリートに言われて、少年は首をかしげた。
喋ることに慣れてきたのか、声のかすれが少なくなり、喋るスピードもスムーズになってきた。
「い"らない子になまえ"、いる?」
「何を、言ってるんだ……?」
「?お"れは、いらな"い子だ。ずっと、あそこにいた。ただ、殴られるための、道具。そのだめに、う"まれてきた。それなのに"、名前、いる?」
2人は絶句した。この子は、自分がいらない子だと言うのだ。
「あなたの親は……?」
ルディウスは、最後の希望とばかりに声を絞り出した。
「親なんて、知らない。気づいたら、あそこにいた。暗い中、ずっと。たまに誰か来て、殴られる"けど、それが終わったら、ご飯をくれる。前は、もう1人来てたけど、いづの間にか来なくなった。」
確定だ。この子は、虐待をされていたのだ。ずっと。それも、物心つく前から。
「ッ!!」
ルディウスは思わず、少年を抱きしめた。そして、口を開き声を震わせて言った。
「泣いて、泣いていいんですよ。もう、あなたをあそこに閉じ込める人はいません。ご飯がないということも、殴られたり、蹴られたりということも、もうないんです。我慢なんてしなくていいんです。あなたは道具なんかじゃありません。ちゃんと立派な1人の人間です。大切な1人の子供です。もう、もう大丈夫ですよ。」
しかし、少年は首を傾げた。
「泣くって、何だ?」
「な、何言ってんだよ。ほら、寂しかったり、悲しくなったり、辛かったりしたら、誰だって泣くだろう?」
「?……“さびしい”?“かなしい”?“つらい”?何だ、それ?」
2人はまたもや絶句した。
「“笑う”って、知ってますか……?」
「何だ、それ?」
「“嬉しい”ってのは?」
「“楽しい”は?」
「???」
いくら言っても、少年は首を傾げるばかりだ。いくらかそういうことが続いて、2人は気づいたのだ。
「嘘…だろ?」
「そんな、まさか……!!」
三度目の絶句。
「そんなことがあるはずない!!感情が無いなんて……!!」
ルディウスは綺麗な顔を歪めた。
「どれだけ、どれだけ虐待をしていたというのですか、こんな子供に‼感情が無くなるってことは、随分小さい頃からやっていたとしか思えません!!」
「……例えば、物心つく前から……とか?」
「ッッッ!!!!!!」
部屋が急激に冷える。
「お、おい!!魔力、魔力漏れてんぞ!!」
「!!すみませんっ、つい……」
「いや、俺も同じ気持ちだからな。自分で言っておいてあれだが、俺ももう少しで魔力が漏れて大変なことになっただろうからな。だが、次からは気をつけてくれ。コイツもいることだし。」
「ハッ、そうでした。大丈夫でしたか?」
ルディウスはバッと少年を見た。
「だいじょ…ぶ」
「そうですか……良かった」
ホッと胸をなでおろして、ルディウスはヴァンフリートを振り返った。
「団長、この子は私が引き取ろうと思うのですが……」
「ああ。俺もそれがいいと思う。お前には懐いてるようだしな」
ヴァンフリートは少年を見て言った。少年は自分のことを話していることに気づいてないのか、ルディウスとヴァンフリートの間でキョロキョロとしていた。
ルディウスは少年にスッと近寄った。それに気づいた少年は、ルディウスをじっと見る。
「急で申し訳ありませんが、あなたは私が引き取ることになりました」
「引き、とる?」
「ええ。つまり、これから私があなたの父親です」
「父親……父、さん?俺の?」
「はい。父親になるにはちょっと若すぎる気がしなくもないですが……」
「別にいいじゃねぇか、父・さ・ん♪」
「団長!!」
ヴァンフリートがルディウスをからかう。
「んで?こいつの名前どうすんの?」
「私がつけようかと。あなたもいいですか?」
ルディウスが少年の顔を見て言った。すると、今まで感情が全くなかった瞳に、微かに光が浮かんだ。
「ん。名前、欲しい」
「それでは、そうですね……。心……シャルルなんてどうでしょう?」
「シャルルか……。うん、いいんじゃねぇか?確か、古代語で心って意味だったよな?」
「はい。この子は心がないようなので、早く心を取り戻して、感情豊かで優しい子に育って欲しいと思いまして。」
「俺は気に入ったぜ!!おい。お前はどうだ?」
「しゃるる……シャルル!!俺の、名前……!!」
少年――シャルルは、微かにほんの少し弾んだような声で言った。
ルディウスとヴァンフリートは、それを少し微笑ましそうに見ていた。ルディウスは恥ずかしそうにしながらだが。
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