転生先は水神様の眷属様!?

お花見茶

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···❆転生前・狭間編❆···

子供好きの理由

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「暑い……」

 まだ6月だというのに30℃を超える天気の中、じりじりと太陽に焼かれながらも道路を進む少女の姿があった。そう、私、柚月ゆづき弥生やよいだ。道路を進む足取りは重く、顔は汗でびっしょり、腰まである自慢のサラサラヘアーは体にベットリとへばりついている。

「ああもう。何でこんな時に限って下校が早まるわけ?」

 実は今日も、いつも通り6限目までやって部活をしての、早くて夕方、遅くて7時頃に帰る予定だったのだ。だが、先生達の都合で4限目が終了したと同時に放送があり、昼食を食べた者から速やかに下校するようにと言われたのだ。

「何も今日じゃなきゃいけない理由でもあったの?……ん?」

 公園の前を通ると、そこには沢山の子供たちが!!

「キャーッ!!何あの子達、可愛すぎる!!」

 何を隠そう、私は大の子供好きなのだ。 

 私には親がいない。両親はもともと仲が悪かったらしく、私が生まれてからはもっと険悪になったらしい。そんな両親は、私にご飯を与えない、暴力をふるうなど虐待をしていたらしい。“らしい”というのは、私にはその記憶がないのだ。施設の人達が見つけて保護したときには栄養失調、脱水症状で倒れていて、急いで救急車を呼び病院に運んだらしい。起きたときにはもう両親の記憶は無く、自分の名前すら分からない状態だった。つまり、完全な記憶喪失だったのだ。だが、両親の与えた虐待は、私の心に確かに傷を与えた。

 最初は親戚の人の誰かに預けようとしたらしいのだが、両親は家族とは縁を切っていたらしく、見つけることができなかった。仕方なく施設に預けられた私は、施設の先生に自分の名前を聞き、当時8歳だった私はそこで天使たちと出会った。子供たちだ。自分よりも年下の小さなその子達は、とても無邪気で純粋で。私ははじめて泣いた。見ていると心が洗われたような、そんな気持ちになった。それから自分より小さい子は、私にとって保護対象――天使になった。空いてる時間があれば、施設の子の世話をして過ごした。

 12歳になったある日、私は父方の祖父母に引き取られた。祖父母は父とは絶縁状態で、連絡も取り合ってなかったそうで、4年かけてようやく見つけ出すことができたらしい。私がいたことも知らず、父に子供――自分たちに孫がいると知ったときはたいそう驚いたらしい。父と絶縁しているとはいっても、その父の娘である私には関係ないことだし、むしろ被害者だと言って私を引き取ってくれた。それに孫が前から欲しかったらしい。

 祖父母はそれはもう私のことを大事にしてくれた。でも、私が中学2年生のある日、突然パタリと逝ってしまった。銀行強盗で犠牲になったらしい。その場にいた人が言うには、祖父は拳銃を持った強盗相手に『私が人質になるから他の人たちを逃してやってほしい』と勇敢にも立ち向かっていったそうだ。祖母は、拳銃の標的になった子供をかばって撃たれたらしい。銀行にいた人たちや警察からは、『感謝してもしきれない』『守ってやれなくてすまない』と泣いて言われ、私が『祖父母も自分以外に犠牲が出なくて喜んでますよ』と涙を堪えて言うと、もっと泣かれたのには正直困った。その事件は新聞やテレビに取り上げられ、全国に放送された。私の自慢の祖父母だ。

 祖父母が死んでからは、知り合いの保育園でバイトさせてもらっている。今では、赤ちゃんのお世話もお茶の子さいさいだ。

 話が反れたが、そんなわけで私は子供が大好きだ。自分より年が小さい子は皆天使。

 そんな沢山の天使を見つけた私は、ふらふらと引き寄せられるように公園に入っていった。

 保育園の園児のようだ。皆お揃いの制服を着て、走り回っている。近くには先生と思われる人たちもいた。その人達に駆け寄り、私は声をかけた。

「あ、あの!!」
「あら?どうかしましたか?ま、まさかうちの園児達が何か粗相を!!」
「ち、違います!!そうじゃなくて、私も一緒に遊ばせてほしくて。私子供が大好きなんです!!あ、保育園でバイトもさせてもらってるので、小さい子の扱いには慣れてます!!」
「そんなの全然構わないわ!!むしろ助かるから、こちらこそお願いしてもいいかしら?」
「はいっ!!」

 先生から許可をもらった私は子どもたちのところに向かった。それから3時頃になるまで遊び、先生達がそろそろ帰るというので遊ぶのをやめて立ち上がったその時。
 何気なく道路を見ると、5歳くらいの男の子が野良猫を追いかけ飛び出していた。男の子の横からトラックが迫ってくる。

「危ないっっ!!!!!!」

 男の子はトラックに気づいていない。気づいたとしても、男の子の足では逃げ切れないだろう。

 気がついたときには、足が走り出していた。あともう少し……!!

 トラックはもうすぐそこまで迫ってきている。

 ……届いた!!

 掴んだ男の子の服の裾を思いっきり引っ張る。男の子が私の胸にぶつかり、ギュッと抱え込む。と、次の瞬間。

 キキィーッ!!
 バンッ!!

 何かが体にあたり、体が宙を舞う。私は男の子をもう一度ギュッと守るように丸くなり、来るだろう衝撃に備える。

 ガガガガッッッ!!!!

 地面にぶつかり、体が跳ね返る。しかし、男の子には当たらないようにと上を向く。体がコンクリートの少しデコボコした地面を擦り、体中に痛みがはしる。必死に堪えて男の子を抱えていると、動きが止まった。もう大丈夫だと判断し腕の力を弱める。腕の下で男の子がもぞもぞと動く。

 ああ、よかった。男の子には傷はついてないみたいだ。先生や通りすがりの人達が、叫んだり走ってきたりしているのが分かる。

「おい、誰か跳ねられたぞ!!」
「救急車を!!誰か!!」
「早く!!彼女を、彼女を助けて!!」
「何だ?何かあったのか?」

 何か言っているのが分かるが、ボヤボヤとして聞き取ることができない。体を起こそうとしても力が入らず、かろうじて指先が動いた。指が動くと、ぴちゃん…と音がした。開かない目を無理やりこじ開けると、目の前が真っ赤だった。

 あぁ、血か……。

 どんどん意識が遠のいていく。

 寒い…な…………

 それを最後に私の意識は途切れた。
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