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12 こんなはずでは
迎えた次の休日。
宿舎の前でそわそわと待っていると、文字通り白馬に乗ったナイト様が現れた。
朝の光を反射する白馬。その背に跨る金髪の騎士。
うわぁ、白馬に跨る金髪の騎士めちゃくちゃ映える! イン〇タにアップしたら、たぶん一瞬でバズる! まるで映画のワンシーンじゃん!
「お待たせしました」
馬から軽やかに降りたノエルは、ためらいもなく私の前で片膝をつき、騎士らしい所作で手を差し出した。
ちょっと待ってよ。こんなの絵本か乙女ゲームの世界じゃない? すんごい……。こんな世界、本当に存在してたんだ……。
頭では理解しているのに現実感が追いつかない。
差し出された手を見ることしかできず、完全に思考停止していた私が気づいたときには、王都の街道を美少年と一緒に白馬に乗って、ぱっかぱっかと進んでいた。
実際に夢のような体験をしてみて率直な感想を言ってしまうと、アニメやマンガで見るのと実際にやるのとでは全然違った。
これはノエルがどうこうという話では断じてない。彼は完璧だ。
態度もセリフも姿勢も、存在も。
では、完璧ではないのは誰か。
……そう、他ならぬ私だ。
自分が白馬に乗っている姿を想像すると、どうしても耐えられない。どこか浮いている気がするし、そもそも似合っていない?
胸の奥がむず痒くて、羞恥心がじわじわと込み上げてくる。
こういうのは本物のお姫様がやるから絵になるのであって。私はどう頑張っても、どこにでもいる凡人である――、意識がそちらに引っ張られてしまう。
どうやら私は、物語の主人公になりきれない性分らしい。
それに街道沿いから向けられる、王都の人々の視線!!
敬意や羨望ならまだいい。でも仮に「痛い人」扱いされていたら?
そんな想像をしてしまう、勝手に卑屈になる私!!
やはり陰の者の私には、このイベントは難易度が高すぎるのではないか!?
くぅ~~~っ!
本当に……本当に惜しいのだけど――。
「あ、あのね……ノエルくん」意を決して私は声をかけた。
「なんでしょう?」
背中越しに返ってくる相変わらず柔らかな声。
「ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」
「もちろんです」
「で、出来れば……お馬さんを、もう一頭用意してほしいんだけど……」
言い終えた瞬間、胸の奥がきゅっと縮こまる。
わがままに聞こえたかもしれないし、せっかく用意してくれた予定を狂わせてしまう気がする。
「え? もちろん構いませんよ」
彼はカラリと言った。
そしてその後、私たちはレンタカーならぬレンタルホース店で馬を借りて二頭の馬に跨り、並んで街道を進んでいく。
「すみません、チドリさんが乗馬できると知っていれば最初から用意していたのですが……」
申し訳なさそうに眉を下げるノエル。
「気にしないで、馬に乗れるなんて思わないよね」
実際、王都で馬に乗っている女性を見たことがない。農場の娘なら話は別かもしれないけれど、ノエルの反応を見る限り〝馬は男が乗るもの〟という認識が一般的らしい。
なぜ私が乗馬できるのかというと、実はオーストラリアに短期留学していた時期があり、そのときに乗馬を習っていたのだ。えへん。
まさか異世界でこのスキルが役立つとは思わなかったぜ。
王都から出るのって初めてだな――、ワクワクしながら城門を抜けると視界いっぱいに青い草原が広がっていた。
風が抜け、空がとても広い。
私は思わず息を呑んだ。
「さあ、行きましょう」
ノエルの声が前から届く。
私は深く息を吸い、手綱を握り直した。
宿舎の前でそわそわと待っていると、文字通り白馬に乗ったナイト様が現れた。
朝の光を反射する白馬。その背に跨る金髪の騎士。
うわぁ、白馬に跨る金髪の騎士めちゃくちゃ映える! イン〇タにアップしたら、たぶん一瞬でバズる! まるで映画のワンシーンじゃん!
「お待たせしました」
馬から軽やかに降りたノエルは、ためらいもなく私の前で片膝をつき、騎士らしい所作で手を差し出した。
ちょっと待ってよ。こんなの絵本か乙女ゲームの世界じゃない? すんごい……。こんな世界、本当に存在してたんだ……。
頭では理解しているのに現実感が追いつかない。
差し出された手を見ることしかできず、完全に思考停止していた私が気づいたときには、王都の街道を美少年と一緒に白馬に乗って、ぱっかぱっかと進んでいた。
実際に夢のような体験をしてみて率直な感想を言ってしまうと、アニメやマンガで見るのと実際にやるのとでは全然違った。
これはノエルがどうこうという話では断じてない。彼は完璧だ。
態度もセリフも姿勢も、存在も。
では、完璧ではないのは誰か。
……そう、他ならぬ私だ。
自分が白馬に乗っている姿を想像すると、どうしても耐えられない。どこか浮いている気がするし、そもそも似合っていない?
胸の奥がむず痒くて、羞恥心がじわじわと込み上げてくる。
こういうのは本物のお姫様がやるから絵になるのであって。私はどう頑張っても、どこにでもいる凡人である――、意識がそちらに引っ張られてしまう。
どうやら私は、物語の主人公になりきれない性分らしい。
それに街道沿いから向けられる、王都の人々の視線!!
敬意や羨望ならまだいい。でも仮に「痛い人」扱いされていたら?
そんな想像をしてしまう、勝手に卑屈になる私!!
やはり陰の者の私には、このイベントは難易度が高すぎるのではないか!?
くぅ~~~っ!
本当に……本当に惜しいのだけど――。
「あ、あのね……ノエルくん」意を決して私は声をかけた。
「なんでしょう?」
背中越しに返ってくる相変わらず柔らかな声。
「ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」
「もちろんです」
「で、出来れば……お馬さんを、もう一頭用意してほしいんだけど……」
言い終えた瞬間、胸の奥がきゅっと縮こまる。
わがままに聞こえたかもしれないし、せっかく用意してくれた予定を狂わせてしまう気がする。
「え? もちろん構いませんよ」
彼はカラリと言った。
そしてその後、私たちはレンタカーならぬレンタルホース店で馬を借りて二頭の馬に跨り、並んで街道を進んでいく。
「すみません、チドリさんが乗馬できると知っていれば最初から用意していたのですが……」
申し訳なさそうに眉を下げるノエル。
「気にしないで、馬に乗れるなんて思わないよね」
実際、王都で馬に乗っている女性を見たことがない。農場の娘なら話は別かもしれないけれど、ノエルの反応を見る限り〝馬は男が乗るもの〟という認識が一般的らしい。
なぜ私が乗馬できるのかというと、実はオーストラリアに短期留学していた時期があり、そのときに乗馬を習っていたのだ。えへん。
まさか異世界でこのスキルが役立つとは思わなかったぜ。
王都から出るのって初めてだな――、ワクワクしながら城門を抜けると視界いっぱいに青い草原が広がっていた。
風が抜け、空がとても広い。
私は思わず息を呑んだ。
「さあ、行きましょう」
ノエルの声が前から届く。
私は深く息を吸い、手綱を握り直した。
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