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第二章【招集】
23 なにかやっちゃいました?
「チドリさん、王宮から書簡が届いていますよ」
「ありがとう、カティアちゃん。って王宮から? 私に??」
聖女として召喚されてから異世界での暮らしも半年を過ぎたその日、私は書簡でアルゼリオン王国の宰相に呼び出された。出頭命令である。
宰相といえば総理大臣だ。国王の次くらいに偉い人である。もちろん会ったことも話したこともないけど、王宮で何度か見かけたことがある。白髪のナイスミドルの殿方だ。
せっかくの休日だけど、王宮からの呼び出しに応じないわけにはいかない。
その日の昼過ぎ、なんか私《わたくし》やっちゃいましたかね? なんて顔をしながら、近衛隊に案内されてやってきた私は、宰相の執務室で待たされている。
ソファはふかふかだ。このまま横になってしまいたいという欲望がニョキニョキと顔を出す。
二人の男性が部屋に入ってきたのは、ちょっとソファに寝転ぼうとした、まさにそんなときだった。
跳ね上がるように私は立ち上がって背筋を伸ばす。間一髪だった。あと少し遅ければ、ソファで寝ているところを目撃されていた。
「お呼び立てしてすまないね」
そう言って、ロマンスグレーの髪をオールバックにした男性――、宰相が握手を求めてきた。
「いえ、とんでもございません。宰相」
立ち上がって宰相と握手を交わした私は、続いて宰相に付き従う若い男とも握手を交わした。身なりからして彼も高位の貴族なのだろう。モノクルという片方しかレンズのない眼鏡を掛けていて、気難しそうな顔をしている。
あれ? この人……どこかで見たことがある。ああ、そうだ。たまに王宮食堂に来ては、私が考えたメニューに文句を付けるクレーマーだ。身なりと態度がやたら偉そうだったから何者だと思っていたが、宰相付きの役人だったのか。
「私の顔になにか付いていますか?」と男は指先でモノクルに触れる。
まあ、一介の職員である私のことなんて眼中にないのは当然か。
「いえ、はじめまして。白城千鳥です」
「どうぞお掛けください」と柔和な笑みを浮かべて宰相は言った。
「はい」
ローテーブルを挟んで対面のソファに宰相が座ってから、私はソファに腰を下ろした。クレーマーの人は立ったままだ。
「彼は国務室で補佐官をしているディビットです」
宰相の紹介を受けて、モノクルの人が私に会釈した。
「ディビットです。以後お見知りおきを」
「はあ、どうも……」と私も彼に対して会釈する。
「ミス・シラジロは我が国に召喚されてからは確か……、王宮食堂で働いていましたね? なんでも新しい料理を次々と開発しているとか」
「あ……はい、おかげさまでスープと副菜を任されるようになりました」
まさか今さら聖女じゃなかったことを糾弾されるのだろうか。聖女じゃなくてすみませんと謝った方がいいのだろうか……。でも聖女じゃなかったのは私のせいじゃないし。
「そうかそうか。じゃあそろそろキャリアアップの時期だね」
宰相はにこりと微笑んだ。その笑顔になぜか私の背筋がぞわりと粟立つ。
な、なんなのこの感じ……。
なんてことない会話なのに、私の危機管理センサーがアラートを出している。
「ありがとう、カティアちゃん。って王宮から? 私に??」
聖女として召喚されてから異世界での暮らしも半年を過ぎたその日、私は書簡でアルゼリオン王国の宰相に呼び出された。出頭命令である。
宰相といえば総理大臣だ。国王の次くらいに偉い人である。もちろん会ったことも話したこともないけど、王宮で何度か見かけたことがある。白髪のナイスミドルの殿方だ。
せっかくの休日だけど、王宮からの呼び出しに応じないわけにはいかない。
その日の昼過ぎ、なんか私《わたくし》やっちゃいましたかね? なんて顔をしながら、近衛隊に案内されてやってきた私は、宰相の執務室で待たされている。
ソファはふかふかだ。このまま横になってしまいたいという欲望がニョキニョキと顔を出す。
二人の男性が部屋に入ってきたのは、ちょっとソファに寝転ぼうとした、まさにそんなときだった。
跳ね上がるように私は立ち上がって背筋を伸ばす。間一髪だった。あと少し遅ければ、ソファで寝ているところを目撃されていた。
「お呼び立てしてすまないね」
そう言って、ロマンスグレーの髪をオールバックにした男性――、宰相が握手を求めてきた。
「いえ、とんでもございません。宰相」
立ち上がって宰相と握手を交わした私は、続いて宰相に付き従う若い男とも握手を交わした。身なりからして彼も高位の貴族なのだろう。モノクルという片方しかレンズのない眼鏡を掛けていて、気難しそうな顔をしている。
あれ? この人……どこかで見たことがある。ああ、そうだ。たまに王宮食堂に来ては、私が考えたメニューに文句を付けるクレーマーだ。身なりと態度がやたら偉そうだったから何者だと思っていたが、宰相付きの役人だったのか。
「私の顔になにか付いていますか?」と男は指先でモノクルに触れる。
まあ、一介の職員である私のことなんて眼中にないのは当然か。
「いえ、はじめまして。白城千鳥です」
「どうぞお掛けください」と柔和な笑みを浮かべて宰相は言った。
「はい」
ローテーブルを挟んで対面のソファに宰相が座ってから、私はソファに腰を下ろした。クレーマーの人は立ったままだ。
「彼は国務室で補佐官をしているディビットです」
宰相の紹介を受けて、モノクルの人が私に会釈した。
「ディビットです。以後お見知りおきを」
「はあ、どうも……」と私も彼に対して会釈する。
「ミス・シラジロは我が国に召喚されてからは確か……、王宮食堂で働いていましたね? なんでも新しい料理を次々と開発しているとか」
「あ……はい、おかげさまでスープと副菜を任されるようになりました」
まさか今さら聖女じゃなかったことを糾弾されるのだろうか。聖女じゃなくてすみませんと謝った方がいいのだろうか……。でも聖女じゃなかったのは私のせいじゃないし。
「そうかそうか。じゃあそろそろキャリアアップの時期だね」
宰相はにこりと微笑んだ。その笑顔になぜか私の背筋がぞわりと粟立つ。
な、なんなのこの感じ……。
なんてことない会話なのに、私の危機管理センサーがアラートを出している。
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