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第二章【招集】
30 出会って五秒で身バレ
顎クイするエドガー、される私。
更衣室で向かい合う男女。このシチュエーションを誰かに見られたら、いかがわしい想像に至るのもやむなし!?
徐々に彼の顔が近づいてきた。私の眼を見つめて離さない。
わわっ……ちょっと待って、これってこのままキスする流れ!?
硬直する私の眼前で彼は、顎クイしていた手で私の頬を挟んでグニッと握った。
「ふがっ?」
彼はアホみたいに開いた私の口の中を覗き込み、「なるほど……」と呟いた。
「ひゃるほど?」
「いえ、大したことではありません。ただ、右下の奥歯の治療痕はこちらの世界の技術のものではありませんね。やはりあの経歴書はフェイク……、もしかして、あなたは以前王宮内で噂になっていた異世界から召喚された方では?」
「はっ、あはは……。な、なんのことでしょうか……」
そう言って私はエドガーの手を払う。
聖女として召喚されたことは、なんとなく言わない方がいいような気がした。一つの歪から色々なことが芋づる式にバレてしまうことだってある。
「いいえ、こちらの話です。秘め事を内包している、そんな眼をしてらっしゃる。嘘が下手なようですね」
「え?」思わずギクッとなってしまう。
「いえ、なんでもありません。それではレクチャーに戻ります。真っ直ぐ立ったら背筋を伸ばし、腕は真っ直ぐ下ろして指先は伸ばす。かかとを揃えて、つま先は四十五度に開きます」
ドキドキしながら言われたとおり体を動かしていく。なかなか窮屈な姿勢だ。これを維持するのは結構キツい。早くも太ももの裏あたりがプルプルしてきた。
彼は直立不動で動けない私の前髪に触れた。そのままそっと前髪をかき上げる。私のおでこが露わになる。
「前髪は上げた方がいいですね」と言った。
「ど、どうして?」
目を細めて尋ねる私に、エドガーは視線を合わせるように腰を屈めた。
「目がとても綺麗なので、髪で隠してしまっては勿体ないかと思いまして」と甘え声で囁き、微笑んでみせる。
「っ!?」
カッと耳の先まで一気に熱を帯びていく。
もうさっきからなんんなのぅぉ! スキンシップが強引すぎなんだけど!!
「それから部下の前では堂々としてください。なにがあっても顔に出してはいけません。動揺や不安といった感情が周囲に伝わってしまいます。あなたは司令官なのですから、常に冷静沈着でなければなりません」
そうは言われても心臓がバクバクだ。
小さくコクリとうなずいた私の頬に、彼は優しく触れた。
ああ、なんかもうどうにでもなってしまえ……。
「悪ふざけはそれくらいにしろよ、タイチョー」
私の頬に触れるエドガーの手首を乱暴に掴んだのは、まさかの人物だった。
私は自分の眼を疑った。
だって、だってそこにいたのは――、クラウディオ!?
「これは失礼しました」
私の頬から手を離したエドガーは、
「イーグル、司令に今日いるメンバーを紹介する。ヒトサンフタマルに執務室へ案内するように。司令、しばらくは司令官室で待機していてください。それでは失礼します」
クラウディオに指示を与えて更衣室から出て行った。
ぱたんとドアが閉まると同時に私は、「ク、クラウディオ!? どうしてあなたがここに!?」と声を上げる。
イーグルと呼ばれたクラウディオは、返事をする代わりにふんと鼻を鳴らした。
「ついて来い」
ぶっきらぼうに踵を返したクラウディオの後に続こうとしたが、突然立ち止まって振り向いた。そして心底蔑んだような眼をして私に告げる。
「欲求不満そうなツラしているから、タイチョーに付け入れられるんだ」
「なっ……」
私は言葉を失った。さっきまでの夢心地気分も、クラウディオに再会できて嬉しいと思った気持ちも、一瞬で吹き飛んでしまう。
そしてなぜかクラウディオとの関係がリセットされている!?
更衣室で向かい合う男女。このシチュエーションを誰かに見られたら、いかがわしい想像に至るのもやむなし!?
徐々に彼の顔が近づいてきた。私の眼を見つめて離さない。
わわっ……ちょっと待って、これってこのままキスする流れ!?
硬直する私の眼前で彼は、顎クイしていた手で私の頬を挟んでグニッと握った。
「ふがっ?」
彼はアホみたいに開いた私の口の中を覗き込み、「なるほど……」と呟いた。
「ひゃるほど?」
「いえ、大したことではありません。ただ、右下の奥歯の治療痕はこちらの世界の技術のものではありませんね。やはりあの経歴書はフェイク……、もしかして、あなたは以前王宮内で噂になっていた異世界から召喚された方では?」
「はっ、あはは……。な、なんのことでしょうか……」
そう言って私はエドガーの手を払う。
聖女として召喚されたことは、なんとなく言わない方がいいような気がした。一つの歪から色々なことが芋づる式にバレてしまうことだってある。
「いいえ、こちらの話です。秘め事を内包している、そんな眼をしてらっしゃる。嘘が下手なようですね」
「え?」思わずギクッとなってしまう。
「いえ、なんでもありません。それではレクチャーに戻ります。真っ直ぐ立ったら背筋を伸ばし、腕は真っ直ぐ下ろして指先は伸ばす。かかとを揃えて、つま先は四十五度に開きます」
ドキドキしながら言われたとおり体を動かしていく。なかなか窮屈な姿勢だ。これを維持するのは結構キツい。早くも太ももの裏あたりがプルプルしてきた。
彼は直立不動で動けない私の前髪に触れた。そのままそっと前髪をかき上げる。私のおでこが露わになる。
「前髪は上げた方がいいですね」と言った。
「ど、どうして?」
目を細めて尋ねる私に、エドガーは視線を合わせるように腰を屈めた。
「目がとても綺麗なので、髪で隠してしまっては勿体ないかと思いまして」と甘え声で囁き、微笑んでみせる。
「っ!?」
カッと耳の先まで一気に熱を帯びていく。
もうさっきからなんんなのぅぉ! スキンシップが強引すぎなんだけど!!
「それから部下の前では堂々としてください。なにがあっても顔に出してはいけません。動揺や不安といった感情が周囲に伝わってしまいます。あなたは司令官なのですから、常に冷静沈着でなければなりません」
そうは言われても心臓がバクバクだ。
小さくコクリとうなずいた私の頬に、彼は優しく触れた。
ああ、なんかもうどうにでもなってしまえ……。
「悪ふざけはそれくらいにしろよ、タイチョー」
私の頬に触れるエドガーの手首を乱暴に掴んだのは、まさかの人物だった。
私は自分の眼を疑った。
だって、だってそこにいたのは――、クラウディオ!?
「これは失礼しました」
私の頬から手を離したエドガーは、
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クラウディオに指示を与えて更衣室から出て行った。
ぱたんとドアが閉まると同時に私は、「ク、クラウディオ!? どうしてあなたがここに!?」と声を上げる。
イーグルと呼ばれたクラウディオは、返事をする代わりにふんと鼻を鳴らした。
「ついて来い」
ぶっきらぼうに踵を返したクラウディオの後に続こうとしたが、突然立ち止まって振り向いた。そして心底蔑んだような眼をして私に告げる。
「欲求不満そうなツラしているから、タイチョーに付け入れられるんだ」
「なっ……」
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