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第二章【招集】
35 敬語になっちゃうときって
壁ドン、こんなシチュエーションをどれだけ夢見たことか。少女漫画的展開、ここに極まれり。……いや、全然違う。これはただ単に追い詰められているだけ。
私は唇をきゅっと結び、真正面から彼を見つめ返す。
「国務室の連中が絡んでいるのか?」
「ち、違います」
否定した瞬間、私の視線が逸れた。
「俺は元衛士だ。目を見れば嘘を見抜ける。質問に目を逸らす奴は、やましいことがあるか嘘をついているかのどちらかだ」
「……」
こうなったら黙秘権の行使だ。
「聖女召喚されていることを隠そうとしたな? お前をここに送り込んだ奴にしゃべるなと言われたか? 明日にでも他の連中にバラしてもいいんだぞ?」
冷たい声音が私を責め立てる。
ちゃんと説明しないとクラウディオは納得しそうにない。
「う、うぅ……はい、その通りです……私がやりました……」
私は観念して自白した。
まさか、たった一日でこうなるなんて。ハイノーブル待遇と二倍の給料は諦めよう。
ああ、さよなら私のリッチな生活。推しのグッズに囲まれながら乙女ゲーをやりたいだけの人生だった……。
「頼まれたのよ、司令官のフリをしてくれって……」
「誰の依頼だ?」
「宰相と、その補佐官……」
「なぜお前なんだ?」
「それは私も聞きたい」
クラウディオは舌打ちをした。
「ふざけやがってあいつら……。自分たちの手に負えないからって、こんな一般人の権限も経験もないド素人を送り込みやがって」
「ご期待に沿えなく悪かったわね」
彼が怒るのも当然だ。振るっていたのが指揮ではなくフライパンなんだから。
……あれ? 今ちょっと上手いこと言った?
「王宮食堂の仕事はどうなった?」
「急にクビになったの……それでこの仕事を引き受けるしかなくて。クレームなら無能で役に立たない素人の私を送り込んだ宰相にどうぞしてください」
もはやどうにでもなれだ。焼くなり煮るなり好きにしろー!!
「ここではお前は文字通り、ただの〝かかし〟だ。俺はお前を司令官として認めない」
言い方はムカつくけど、事実だから言い返せない。
だが、と彼は続けた。
「他の連中には黙っておいてやる。お前はそのまま司令官のフリを続ければいい」
「へ? ど、どうして?」
「無駄に威張り散らすばかりの無能な貴族より、お前みたいな何も知らないド素人の方が都合がいい。俺は俺の好きにやらせてもらう」
踵を返しかけた彼が、そこで足を止める。
「仮に……仮だとしても司令官を続けるつもりなら、俺たちの頭に立つ覚悟を持って相応の力を示せ。俺たちの命はお前の一言で生き死にが決まるんだからな」
忘れていた。護衛役だったとき、彼は自分の命に代えて私を守ろうとしてくれた。それが騎士団長から与えられた命令だったから。
今度は私がその命令を下すことになるかもしれない。
そう考えると、司令官という肩書の重さが一気にのしかかってきた気がした。
私は何も言えず、部屋を出ていく彼の背中を見つめることしかできなかった。
私は唇をきゅっと結び、真正面から彼を見つめ返す。
「国務室の連中が絡んでいるのか?」
「ち、違います」
否定した瞬間、私の視線が逸れた。
「俺は元衛士だ。目を見れば嘘を見抜ける。質問に目を逸らす奴は、やましいことがあるか嘘をついているかのどちらかだ」
「……」
こうなったら黙秘権の行使だ。
「聖女召喚されていることを隠そうとしたな? お前をここに送り込んだ奴にしゃべるなと言われたか? 明日にでも他の連中にバラしてもいいんだぞ?」
冷たい声音が私を責め立てる。
ちゃんと説明しないとクラウディオは納得しそうにない。
「う、うぅ……はい、その通りです……私がやりました……」
私は観念して自白した。
まさか、たった一日でこうなるなんて。ハイノーブル待遇と二倍の給料は諦めよう。
ああ、さよなら私のリッチな生活。推しのグッズに囲まれながら乙女ゲーをやりたいだけの人生だった……。
「頼まれたのよ、司令官のフリをしてくれって……」
「誰の依頼だ?」
「宰相と、その補佐官……」
「なぜお前なんだ?」
「それは私も聞きたい」
クラウディオは舌打ちをした。
「ふざけやがってあいつら……。自分たちの手に負えないからって、こんな一般人の権限も経験もないド素人を送り込みやがって」
「ご期待に沿えなく悪かったわね」
彼が怒るのも当然だ。振るっていたのが指揮ではなくフライパンなんだから。
……あれ? 今ちょっと上手いこと言った?
「王宮食堂の仕事はどうなった?」
「急にクビになったの……それでこの仕事を引き受けるしかなくて。クレームなら無能で役に立たない素人の私を送り込んだ宰相にどうぞしてください」
もはやどうにでもなれだ。焼くなり煮るなり好きにしろー!!
「ここではお前は文字通り、ただの〝かかし〟だ。俺はお前を司令官として認めない」
言い方はムカつくけど、事実だから言い返せない。
だが、と彼は続けた。
「他の連中には黙っておいてやる。お前はそのまま司令官のフリを続ければいい」
「へ? ど、どうして?」
「無駄に威張り散らすばかりの無能な貴族より、お前みたいな何も知らないド素人の方が都合がいい。俺は俺の好きにやらせてもらう」
踵を返しかけた彼が、そこで足を止める。
「仮に……仮だとしても司令官を続けるつもりなら、俺たちの頭に立つ覚悟を持って相応の力を示せ。俺たちの命はお前の一言で生き死にが決まるんだからな」
忘れていた。護衛役だったとき、彼は自分の命に代えて私を守ろうとしてくれた。それが騎士団長から与えられた命令だったから。
今度は私がその命令を下すことになるかもしれない。
そう考えると、司令官という肩書の重さが一気にのしかかってきた気がした。
私は何も言えず、部屋を出ていく彼の背中を見つめることしかできなかった。
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