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6 エリナ
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予想外の返事に僕は言葉を詰まらせました。
正直、僕は彼女が涙を浮かべ小さく頷いてくれることを期待していたのです。
ですが、彼女の瞳に映っているのは単純な疑問の色でした。僅かほどの愛情もなく、いくらかの親しみのない、まるで今日会ったばかりの他人を見る様な目の色でした。
僕の心に芽生えたのは落胆や絶望といった負の感情ではありませんでした。
胸中にあったのは、目の前で僕を見つめる彼女と同じ『疑問』でした。
―――この子はリゼであってリゼではない。
僕の心は確信めいた何かを訴えていました。
「ごめん、人違いだったみたいだ……、君は……君は誰なの?」
たまらず僕はそう尋ねていました。
彼女は不思議そうに僕を見つめ、
「私はエリナ、あなたは?」
リゼよりも厚みのない声で質問を返してきました。
良く見ると彼女の肌はリゼよりも白く、どこか儚げで、やはり僕の知るリゼとは別人であることに疑いの余地はありません。
「僕はマキト……、君に良く似た人を探しているんだ。知らないかい?」
「ごめんなさい。分からない……」
彼女は少し目を伏せて首を左右に小さく振りました。そして、彼女は動揺する僕に再び問います。
「あなたはお医者さんなの?」
「お医者さん?」
「だって、白衣を着ているじゃない?」
「違うよ。僕はリゼを探しているだけなんだ……」
「その人は、あなたにとって大切な人なの?」
「うん、とても愛しているんだ。誰よりも愛している」
彼女はなぜか頬を紅く染めて僕から視線を逸らし、
「……私に似た人がこの病院にいるのか、看護師さんに訊いてみるね」
声をうわずらせて、頻りに亜麻色の髪を指先に巻き付けていました。
「君はここで何をしてるの?」
早くリゼを探さなきゃいけないのに、彼女にそう訊いたことを今でも不思議に思います。
ですが、それはもはや運命だったのだと、今では確信しています。
正直、僕は彼女が涙を浮かべ小さく頷いてくれることを期待していたのです。
ですが、彼女の瞳に映っているのは単純な疑問の色でした。僅かほどの愛情もなく、いくらかの親しみのない、まるで今日会ったばかりの他人を見る様な目の色でした。
僕の心に芽生えたのは落胆や絶望といった負の感情ではありませんでした。
胸中にあったのは、目の前で僕を見つめる彼女と同じ『疑問』でした。
―――この子はリゼであってリゼではない。
僕の心は確信めいた何かを訴えていました。
「ごめん、人違いだったみたいだ……、君は……君は誰なの?」
たまらず僕はそう尋ねていました。
彼女は不思議そうに僕を見つめ、
「私はエリナ、あなたは?」
リゼよりも厚みのない声で質問を返してきました。
良く見ると彼女の肌はリゼよりも白く、どこか儚げで、やはり僕の知るリゼとは別人であることに疑いの余地はありません。
「僕はマキト……、君に良く似た人を探しているんだ。知らないかい?」
「ごめんなさい。分からない……」
彼女は少し目を伏せて首を左右に小さく振りました。そして、彼女は動揺する僕に再び問います。
「あなたはお医者さんなの?」
「お医者さん?」
「だって、白衣を着ているじゃない?」
「違うよ。僕はリゼを探しているだけなんだ……」
「その人は、あなたにとって大切な人なの?」
「うん、とても愛しているんだ。誰よりも愛している」
彼女はなぜか頬を紅く染めて僕から視線を逸らし、
「……私に似た人がこの病院にいるのか、看護師さんに訊いてみるね」
声をうわずらせて、頻りに亜麻色の髪を指先に巻き付けていました。
「君はここで何をしてるの?」
早くリゼを探さなきゃいけないのに、彼女にそう訊いたことを今でも不思議に思います。
ですが、それはもはや運命だったのだと、今では確信しています。
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