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第三部【後編】
21 犠牲者
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咲と照を乗せた緊急車両は厚労省庁舎地下駐車場の駐車スペースのラインに沿って停まった。
車から降りた咲はまず厚生局職員が使用する公用車を確認する。その中で異能管理室が自由に使える車両は全部で八台、いま自分たちが使っていた車両を含めてこの場所にあるのは全部で五台、つまり三台が使用中ということになる。
二人はエレベーターで十二階に上がり、異能管理室のドアを開けた。デスクで書類を作成していたリサが勢いよく開かれたドアに視線を移し、咲と彼女の後方にいる照を見やる。
「あら、急に飛び出していったから何事かと思ったけど、今度は二人して血相かいてどうしたの?」
咲は事務所を見回す。事務所内にはリサの姿しか見当たらない。
次いで、彼女はパーティションで区切られただけの室長室に目を向けた。
「リサ、室長は自室ですか?」
「マークなら出掛けたわよ」
「どこに行ったか分かりますか?」
「さあ? 行先は訊かなかったけど」
訝しげにリサが小首を傾げたそのとき、常時付けっぱなしのTVから緊急速報の音が流れ、画面上部にテロップが表示される。
『―――ニュース速報、来年オープン予定の新国立博物館を視察中の森本首相が心肺停止で緊急搬送―――』
眼を見開いた咲は言葉を失い、照は顔を苦渋に滲ませる。
「そんな……私の異能で……、人が……、殺された……」
「まだそうと決まった訳じゃない。リサさん、咲を頼みます」
そう言い残し颯爽と踵を返して異能管理室を出ようとする照の手首を咲が掴んだ。咲は振り返った照の眼に鋭い眼差しを向ける。
「私も行きます!」
状況が解らずリサは二人を交互に見つめる。
「なによ? どういうことなの?」
「ダメだ。異能を失った君になにができる。足手まといだ」
小さく首を振った照は口調を強めてハッキリと言い放つが、咲は掴んだ照の腕をさらに強く握り締めて離そうとしない。
「私の異能で人が殺されたのです! 黙って見てなんかいられない!」
「そんなトンファーだけで勝てる相手じゃない」
言い聞かせようとする照の腕をスッと離した咲が向かったのは事務所の端に備え付けらえている金庫のように重厚なロッカーだった。咲はロッカーの鍵穴に鍵を差し込み、分厚い鋼鉄製の両開き扉を開ける。その中は数段に仕切られ、棚の上に拳銃と弾薬が整然と並んでいた。
比較的小さい自動拳銃を取り出した咲はトンファーの代わりに拳銃を腰のホルスターへ収める。
そして再び照の前に立ち、彼の眼を毅然と見つめた。
「これは私の責任です。自分でカタを付けます」
彼女の覚悟は変わらない。最初から彼女の意志に敵うはずもないのだ。
照は小さく息を付いて、
「……わかった、行こう」
足早で事務所を出るとその後に咲が続く。
「ちょ、ちょっとあなたたち!」
「リサはここにいてください!」
二人の後を追うリサに向かって咲は言った。
車から降りた咲はまず厚生局職員が使用する公用車を確認する。その中で異能管理室が自由に使える車両は全部で八台、いま自分たちが使っていた車両を含めてこの場所にあるのは全部で五台、つまり三台が使用中ということになる。
二人はエレベーターで十二階に上がり、異能管理室のドアを開けた。デスクで書類を作成していたリサが勢いよく開かれたドアに視線を移し、咲と彼女の後方にいる照を見やる。
「あら、急に飛び出していったから何事かと思ったけど、今度は二人して血相かいてどうしたの?」
咲は事務所を見回す。事務所内にはリサの姿しか見当たらない。
次いで、彼女はパーティションで区切られただけの室長室に目を向けた。
「リサ、室長は自室ですか?」
「マークなら出掛けたわよ」
「どこに行ったか分かりますか?」
「さあ? 行先は訊かなかったけど」
訝しげにリサが小首を傾げたそのとき、常時付けっぱなしのTVから緊急速報の音が流れ、画面上部にテロップが表示される。
『―――ニュース速報、来年オープン予定の新国立博物館を視察中の森本首相が心肺停止で緊急搬送―――』
眼を見開いた咲は言葉を失い、照は顔を苦渋に滲ませる。
「そんな……私の異能で……、人が……、殺された……」
「まだそうと決まった訳じゃない。リサさん、咲を頼みます」
そう言い残し颯爽と踵を返して異能管理室を出ようとする照の手首を咲が掴んだ。咲は振り返った照の眼に鋭い眼差しを向ける。
「私も行きます!」
状況が解らずリサは二人を交互に見つめる。
「なによ? どういうことなの?」
「ダメだ。異能を失った君になにができる。足手まといだ」
小さく首を振った照は口調を強めてハッキリと言い放つが、咲は掴んだ照の腕をさらに強く握り締めて離そうとしない。
「私の異能で人が殺されたのです! 黙って見てなんかいられない!」
「そんなトンファーだけで勝てる相手じゃない」
言い聞かせようとする照の腕をスッと離した咲が向かったのは事務所の端に備え付けらえている金庫のように重厚なロッカーだった。咲はロッカーの鍵穴に鍵を差し込み、分厚い鋼鉄製の両開き扉を開ける。その中は数段に仕切られ、棚の上に拳銃と弾薬が整然と並んでいた。
比較的小さい自動拳銃を取り出した咲はトンファーの代わりに拳銃を腰のホルスターへ収める。
そして再び照の前に立ち、彼の眼を毅然と見つめた。
「これは私の責任です。自分でカタを付けます」
彼女の覚悟は変わらない。最初から彼女の意志に敵うはずもないのだ。
照は小さく息を付いて、
「……わかった、行こう」
足早で事務所を出るとその後に咲が続く。
「ちょ、ちょっとあなたたち!」
「リサはここにいてください!」
二人の後を追うリサに向かって咲は言った。
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