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第2話 おでん
実食
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とうとう来てしまった。
俺は今玄関の前にいる。
今までこれほど自分の家に入るのに緊張したことがあっただろうか。
ゆっくりと扉を開ける。
「ただいまー。」
小声で言ってみる。
返事はない。
シャワーの音がする。よかった。今風呂に入ってるみたいだ。
コンロに置かれたおでんを見る。
火が消してあったので、つける。
その時、ガチャリと風呂場のドアが開く。
「あ。」
「えーと、帰ってたんだね。」
「それより、お前……。」
「うん。だからあまり見ないで欲しいんだけど……。まぁ見てもなんとも思わないんだろうけど。」
「バカ言え。取り敢えず何か着ろ!」
部屋に消えるのを確認して肩をなでおろす。
なんとか平然を装えた。
内心はすごくドキドキしている。ケンカのことがなければ襲っていただろう。
「おでん温まって来たし、食べるか?」
「うん。でもその前に髪乾かしたい。」
「あ、そうだ。その前にちょっといいか?」
「ん?何?」
奈々は俺の方を向く。
「ちょっと目瞑ってな。」
ちょっと警戒気味に目を瞑る奈々。
俺は奈々の首に手を回す。
湿った髪を巻き込まないよう気をつけて。
「もういいぞ。」
「ネックレス……?」
奈々は俺が首につけたものを指でいじり呟く。
「一応クリスマスプレゼントってやつ。あと、昼間はごめんな。俺はさ、お前のこと好きだから、下手なことしたくなくて、ならいっそ何もしなければいいんじゃって思って、でもその結果お前を傷つけた。悪いと思ってる。」
「ううん、うちこそなんか1人で突っ走ってた感あったし、もういいよ。ネックレスくれた時こいつもう忘れたのかって思ったけど、ちゃんと考えてくれてたんだって思った。ありがとうね。」
不意に頬に暖かく、柔らかい感触。鼻を冷たく湿った髪の毛がつつく。
「冷て!髪乾かしな!その間におでんテーブルに持って行くから!」
「うん!お願いね。」
俺はおでんを持って行って、取り皿などの準備をする。
そして奈々が髪を乾かしているのをぼーっと見つめている。
どうして女は髪を乾かすのがこんなにも遅いんだろう。あと無駄にいい匂いがする。
待ってるのも暇だし、目の前にはおでんあるし。
……食べるか。
俺は取り皿に少しのダシと大根を1つとる。
昆布と鰹の芳しい香りが鼻をつつく。温かい湯気が心まで温めてくれる。ダシを十分に染み込ませた、茶色く柔らかい大根を一口サイズに箸で割く。
熱いだろうか?唇で温度を確かめる。やや熱めだがいけるだろう。
口の中に放る。
口の中でとろける柔らかさと、中心部の少しの歯ごたえ。柔らかくなりすぎないこの煮込み具合が1番好きだ。
やはりダシはしっかりと染み込んでいる。
昆布や鰹のまろやかさや甘みを抑えた、しょっぱい味付けは、大根本来の甘みや旨さを強調していて味に優しさを感じさせる。
「何1人で食べてるの?」
あ、ばれた。
「はい、あーん。」
誤魔化すように箸にもつ大根のかけらを奈々へ突き出す。
「んもぅ。」
少し頬を染め照れた様子で、目を閉じ口を開く奈々。
ちょっと緊張するな。
顔が赤くなるのを感じながらもなんとか奈々に大根を食べさせることに成功した。
「おいしー。なんかほっこりするね!なんていうか落ち着くっていうか、ここが帰って来る場所なんだって言ってるみたい。」
うっとりとおでんを味わっている。
「酒飲まないのにそれが分かるのか!」
「凛くん付き合う前はあまり誰かと家で温かいもの食べることってなかったからかなぁ?」
「そういやお兄さんしかいないんだっけ?」
「うん。一応母方の叔母さんの所にお世話になってるんだけど、あまり上手くいってなくて……。」
「話しづらい事なら今はいいよ。ほら、食べよ!」
俺たちはそれからゆっくりとゆったりと、イブの日の夜、おでんを楽しみ、2人一緒にいるこの時間を感じていた。
~fin~
俺は今玄関の前にいる。
今までこれほど自分の家に入るのに緊張したことがあっただろうか。
ゆっくりと扉を開ける。
「ただいまー。」
小声で言ってみる。
返事はない。
シャワーの音がする。よかった。今風呂に入ってるみたいだ。
コンロに置かれたおでんを見る。
火が消してあったので、つける。
その時、ガチャリと風呂場のドアが開く。
「あ。」
「えーと、帰ってたんだね。」
「それより、お前……。」
「うん。だからあまり見ないで欲しいんだけど……。まぁ見てもなんとも思わないんだろうけど。」
「バカ言え。取り敢えず何か着ろ!」
部屋に消えるのを確認して肩をなでおろす。
なんとか平然を装えた。
内心はすごくドキドキしている。ケンカのことがなければ襲っていただろう。
「おでん温まって来たし、食べるか?」
「うん。でもその前に髪乾かしたい。」
「あ、そうだ。その前にちょっといいか?」
「ん?何?」
奈々は俺の方を向く。
「ちょっと目瞑ってな。」
ちょっと警戒気味に目を瞑る奈々。
俺は奈々の首に手を回す。
湿った髪を巻き込まないよう気をつけて。
「もういいぞ。」
「ネックレス……?」
奈々は俺が首につけたものを指でいじり呟く。
「一応クリスマスプレゼントってやつ。あと、昼間はごめんな。俺はさ、お前のこと好きだから、下手なことしたくなくて、ならいっそ何もしなければいいんじゃって思って、でもその結果お前を傷つけた。悪いと思ってる。」
「ううん、うちこそなんか1人で突っ走ってた感あったし、もういいよ。ネックレスくれた時こいつもう忘れたのかって思ったけど、ちゃんと考えてくれてたんだって思った。ありがとうね。」
不意に頬に暖かく、柔らかい感触。鼻を冷たく湿った髪の毛がつつく。
「冷て!髪乾かしな!その間におでんテーブルに持って行くから!」
「うん!お願いね。」
俺はおでんを持って行って、取り皿などの準備をする。
そして奈々が髪を乾かしているのをぼーっと見つめている。
どうして女は髪を乾かすのがこんなにも遅いんだろう。あと無駄にいい匂いがする。
待ってるのも暇だし、目の前にはおでんあるし。
……食べるか。
俺は取り皿に少しのダシと大根を1つとる。
昆布と鰹の芳しい香りが鼻をつつく。温かい湯気が心まで温めてくれる。ダシを十分に染み込ませた、茶色く柔らかい大根を一口サイズに箸で割く。
熱いだろうか?唇で温度を確かめる。やや熱めだがいけるだろう。
口の中に放る。
口の中でとろける柔らかさと、中心部の少しの歯ごたえ。柔らかくなりすぎないこの煮込み具合が1番好きだ。
やはりダシはしっかりと染み込んでいる。
昆布や鰹のまろやかさや甘みを抑えた、しょっぱい味付けは、大根本来の甘みや旨さを強調していて味に優しさを感じさせる。
「何1人で食べてるの?」
あ、ばれた。
「はい、あーん。」
誤魔化すように箸にもつ大根のかけらを奈々へ突き出す。
「んもぅ。」
少し頬を染め照れた様子で、目を閉じ口を開く奈々。
ちょっと緊張するな。
顔が赤くなるのを感じながらもなんとか奈々に大根を食べさせることに成功した。
「おいしー。なんかほっこりするね!なんていうか落ち着くっていうか、ここが帰って来る場所なんだって言ってるみたい。」
うっとりとおでんを味わっている。
「酒飲まないのにそれが分かるのか!」
「凛くん付き合う前はあまり誰かと家で温かいもの食べることってなかったからかなぁ?」
「そういやお兄さんしかいないんだっけ?」
「うん。一応母方の叔母さんの所にお世話になってるんだけど、あまり上手くいってなくて……。」
「話しづらい事なら今はいいよ。ほら、食べよ!」
俺たちはそれからゆっくりとゆったりと、イブの日の夜、おでんを楽しみ、2人一緒にいるこの時間を感じていた。
~fin~
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