熾火

しょうじ

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熾火

1998年10月(3)

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 昌行が2社めの勤務先としてサプライ・システムズへと転職したのは、1996年4月のことだった。「30歳程度まで」とあった求人広告に応募した時、昌行は、既に31歳だったが、3月が誕生月なので、新年度には32歳になってしまうことになる。それでも何とか滑り込んだ昌行は、今後拡張されるというサポート部門への配属を希望した。
 1995年11月に、A社のオペレーション・ソフトが発売されると、個人向けパソコンの市場が爆発的に拡大した。それと併せるように、パソコン・メーカー各社にとっては、ユーザー問い合わせの窓口拡大が急務となっていた。サプライ・システムズは、B社のサポート窓口業務の一部門の受託に成功し、部門を急拡大しているさなかにあった。
 それからほぼ3年が経った。問い合わせ時間の拡張や、電話回線数の増強等、B社の要望には、概ね応えてきた。しかし、B社のサポート体制が一新されることが決定され、サプライ・システムズが受託していた部門は、統廃合されることとなったのだ。昌行には、自分が在籍する部門の閉鎖が現実になるとは、考えが及んでいなかった。
 「それならばせめて・・・」
 昌行は、自分の手で拡張した部門の幕引きは、自分の手でしたいと思ったのだ。しかしその仕事は、後輩の須永陽平が担うことになっていた。ぼくが幕引きするとなると、情が絡んでくると判断されたのかな、須永さんには申し訳ないことになったなと思いながら、昌行は自席に戻った。
 昌行が自席に戻るのを、須永は待っていたようだった。
 「谷中さん、ちょっといいですか」
 「そうですね、手短に話しておきましょうか」
 入社の年次では昌行が先だったが、須永は昌行より年齢が上だったので、昌行は後輩扱いはせずに敬語で接していた。須永とは、単に業務を引き継ぐことだけではなく、サポートを担当している派遣社員たちが不安にならないようにすることを打ち合わせなければならないだろう。どうやら受けた指示以外にも、やるべきことは多そうだなと思った、須永に応えて喫茶コーナーへ向かった。
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