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確かにいつものような和気藹々というより、何かギクシャクしてるようにも見えるけど、今日はイベントの日だから何かと緊張してるのでしょう。
小泉さんが大袈裟に話してるだけかも知れないわね。

「あらウェルウッドさん、お久しぶり、元気だった?」

「センター長お元気でしたか?」

「まぁ……なんとかやってます」

すこしセンター長が言い淀んだからやっぱりセンター内の人間関係が面倒くさい感じではあるのね。

「そしたら私、ももちゃんに会ってくるわ、庭にいるのかしら?あぁ、こちらみなさんで召し上がってね、ラデュレのマカロンは小泉さんが持ってるわ、あとマリアージュフレールのブランエローズとヒマラヤの薔薇ね、あとホテルリッツのコーヒー、それからスミレの佐藤漬け」

私は色々渡すものをテーブルに乗せていく。

「カトリーヌちゃんがいなくなってからセンターのエレガントさが欠けてしまって寂しかったのよ」

「当たり前ね、じゃあ皆さま今日はよろしくお願いします」

私はそう言ってセンターを出た。

「じゃあこのまま庭に抜けましょう」

小泉さんは私のドレスの裾裳を持ちながら言った。

「今日はどんなメニューなのかしらね?」

「聞いた話だとコーヒーと紅茶にフィンガーフード中心だと聞いてるけど」

「キャビアが食べたいわ」

「それはないと思うわ」

私達はそんな会話をしながら庭へと歩いていく。
立派なヒマラヤ杉の下を通りながら青々とした青葉の甘い香りに辺りが包まれ暖かな日差しが明るく照らしている。

「ちょうど良いお天気で良かったわ、暑くもなく寒くもなく……あら、ももちゃん!!」

私は庭で忙しそうにテーブルセッティングをしているももちゃんに声をかけた。

「あぁカトリーヌさん、素敵なべべ着てるじゃないの」

「ありがとう、素敵なのはドレスだけじゃないのもわかってるわ、さて今日のメニューは何かしら?」

「今日はね、りんごとスモークハムとカマンベールのオープンサンド、きゅうりとサーモンのサンドイッチ、パテドカンパーニュ、ケイジャンチキン、シューアラクレーム、ショコラエクレア、クグロフ、マカロンです、カトリーヌさんがくるからクグロフとマカロンは頑張って作りましたよ」

「まぁありがとうももちゃん、どれも美味しそうだわ」

「カトリーヌさんは今日は何を歌うんですか?」

「オペラからいくつか歌うわ、ヴェルディの運命の力からパーチェでしょ、あと18世紀の作品だけど19世紀にもよく演奏されたドン・ジョバンニからバッティを歌うわ、あとファウストの宝石の歌もね」

私はそこでリハーサルしなきゃと思い出して
控え室に戻って発声練習して、近くの音大の学生さんが伴奏をしてくれることになっていたからしっかり合わせをして準備万端にしていたって訳。




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