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誰もどうぞとは言わないけど扉が開くと3人の男性と1人の女性が無表情で入ってきた。
不躾だわ、と思ったけど態度で警察の人だとわかったわ。

「事件が起きたので、皆さん一人一人にお話をお伺いしています、まずは……」

「きっと私からでしょうね」

ノリちゃんはサンドイッチを片手にソファから飛び上がって警察の人に言った。

「なんといっても私が第一発見者なんだもの」

得意げに言うことじゃないけど、多分ノリちゃんは気分が高揚していたのでしょうね、無理もないわ。
4人がかりで一人の話を聞く訳ではなく、花梨さん、宮内さん、小泉さんが事情聴取に別室に行った。

皆、おおよそ殺人に向かさなそうな人達だけど大丈夫なのかしら?
私がそんなことを思っているとぎゃあぎゃあと部屋の外が騒がしく現実に引き戻された。
農場の豚小屋に来たようなけたたましさだわ。
するとノックもなくドアが開かれた。

「ちょっとみんな聞いてよ!!ひどいのよ!!」

そう言って、いえ、叫んでの方が正しいわね、入ってきたのは丘田さんだった。
私はひどいのはあなたのアイライナーかマスカラが滲んでパンダみたいになってるメイク崩れよと言おうと思ったけど思いやりが無さすぎるわと考えなおして黙っておいたの。

「あんな感じがいい、ハンサムな人が殺されるなんて世の中か狂ってるわよ!!」

もし舞台の上なら賞賛されるくらいドラマチックに叫んでいるけどみんなバカバカしいくらい大袈裟な丘田さんにあきれ始めていたのよ。
当人もみんなが静かなのに気づいて

「なんでみんな人が殺されたのに平然としていられるのよ!!」

と泣きながら言って床に座り込んだから吹き出しそうになったわ。

「それはあなたが騒ぎすぎてドン引きしてるからだし、自分と無関係な人が亡くなっても取り乱したりはしないものよ、あなたもう大人になってだいぶ過ぎるんだから分別がついてもいいはずよ、とにかく床に座らないで人間らしく椅子におかけなさいな」

私がそう言うと黙って丘田さんは椅子に座った。

「次から次へと事件が整理できないわね、まず、四重弦楽奏演奏中に塔屋に人影が見えた、多くの人が目撃したもの、そして一瞬のうちに消えたの」

「やだわやっぱり幽霊がいたのよ、殺人事件も絶対に幽霊の仕業だわ」

丘田さんは震えながらそう言い放った。

「殺人がなければそう思ったかも知れないけど、幽霊の仕業なんかじゃないでしょう、幽霊からもっと幽霊らしい殺し方をするでしょう、少なくとも絞殺か刺殺かわからないような殺し方はしないと思うわ」

私がそう言うとみんな便秘気味のように唸った。
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