近頃よくある異世界紀行

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 疲れた、なんなんだアイツらは。行動範囲が被っているのか、行動時間が被っているのか、とにかく行く先々でアイツら四人と出くわすのだ。
 ニュー・ファンタジア号はかなり広い。言ってしまえば街をひとつ船の形にしました。って感じで、とにかく広く、施設だって色々ある。各国各世界のレストランにカジノ、劇場の他に、シネコンにアミューズメント施設にスポーツ施設、緑豊かな公園にデパートに総合病院まであるのだ。
 なのに被る。いつもと違う行動をしていても被る。なので最終手段としてコンダクターの人に相談して、四人部屋へお引っ越し。次の世界に入港する日までそこで籠ることに決めた。
「…椿さん。もしかして椿さんあの四人組に触られました?」
「まぁ、筋肉男とはやり合ったからな」
 筋肉男だけだと可能性は低いな。
「…他の三人とは?」
「? 何かあるのか?」
「…いや、これだけ行く先々で出くわすということは、マッパーにチェック入れられてるかもしれないと思って」
「マッパー? チェック?」
「…マッパーはマッピングっていうディー系魔法の使い手のことだよ。自分が行ったことある場所を地図化できるんだ」
「へぇ~、こういう旅だと便利そうだな」
「…そう。そのマッパーで厄介なのがチェックってやつなんだ。対象物にパスでマーカーをつけ、それが今どこにあるのか分かるようにするんだ」
「それじゃ今アイツらオレ達がここにいるって分かってるのか!?」
「…可能性の話だよ。そういう使い手もいるってこと」
「あの、もしかしたらボクがチェック入れられてるかも知れません」
 そろりと手を上げるペガサスくん。そういえばペガサスくんも椿さんと一緒に行動してたっけ。
「四人部屋に引っ越すのにいったん元の個室に戻った時に、途中であの四人組に出くわしたんです。その時に「チッ、ガキ一人かよ」って、言って何もされず行ってしまいました」
「…なるほどな。ペガサスくん背中をこっちに向けて」
 素直なペガサスくんはオレに背中を向ける。オレがペガサスくんの肩に片手を置いて、もう片方の手で指を鳴らすと、ペガサスくんの身体からも、指を鳴らしたような音がした。
「…もういいよ。やっぱりマーカーつけられてたね」
 ペガサスくんがシュンとしてるがペガサスくんが悪いわけじゃない。というか子供使って相手の位置を探るとか、四人組の道徳心を疑う。オレは落ち込むペガサスくんの頭をなでなでしてやる。
「ふむ。バフにデバフにマッピングか。なかなか癖の強い奴が揃っておるのう。……というか、もう四人部屋の意味無いんじゃないかのう」
「「「あ!」」」
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