近頃よくある異世界紀行

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 オレの闘い方は基本的にカウンター型だ。影で罠を張り、風身を囮に死角から攻撃する。時には水球、風刃、火槍等、六属性の魔法を駆使して攻撃する。
 最初は驚いて隙を見せていた椿さんも、すぐに対応してきて、二度三度となってくると、避ける打ち落とす反撃すると、こちらが押されてくる。風身一つじゃ足りず、二つ三つと出すが、それを突破されて鉄拳アイアンフィストで受けることが増えてきた。
 鉄拳は確かに硬度は鋼並みになるのだが、やはりそこは生身であり痛いのだ。しかもさすがは椿さん、その剣筋は速く鋭く重い。
 最初はいい勝負ができていたのだが、段々追い込まれてきて、一時間後にはオレはボロボロにされていた。

 オレは今、源さんの治療を受けている。ああ癒される~(物理的)。
 さすがにこれ以上はオレが続行不可能なので一時休憩。二人して源さんから魔法による治療を受けている。本当に源さんと知り合えてて良かった。
「「凄かった!」」
 ペガサスくんとコップくんは興奮して、何やらお互いに話し合っている。その横でピグルさんとザッカさんは何か作業していた。
「ほい、終わったぞい」
 オレの治療が終わると、次は椿さんの治療である。
 椿さんの治療が終わったら、どうせまた戦闘再開だ。今のうちに対策を考えておかないと。
 問題なのは鉄拳で椿さんの剣を受け止めても、実害がなくても痛い、ということだ。そのために椿さんの次の手への対処が遅れ、二撃目をもろに受けてしまう。これを解消するには、逃げに徹するか、こちらも武器で応戦するかだが、
(武器なんて持ってないしなぁ。もっと風身を増やして、水球系の手数も増やして…)
 どう考えても勝ち筋が見えない。椿さんの風のバフは完全に仕上がりつつある。
 う~む、どうするかなぁ。と思いながらそこら中をウロチョロしていると、ピグルさんとザッカさんが目に入る。
「…さっきから何やってるんですか?」
 二人は何やら石を削っていた。
「ああ、売り物の像を彫っていたんだよ」
「…像?」
 確かに見れば石は人形のような形に彫り出されている。昨日のおじさんの話を信じるなら、想像力に乏しいアマルガム人が、民芸品の像を作っているってことは、どこかの異世界からの要請があったんだろう。
「ナルーンはエーテルライトを多量に含むからね。こうやって彫った像の中にも、たまにエーテルライトが入ってたりするんだよ」
 ほう、当たり付きの像か、それは売れそうだ。だがオレが気になったのは、彫られている像ではなく、それを削り出している道具の方だった。
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