世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
8 / 643

魔石

しおりを挟む
 魔石らしきものを手に入れた。薄い緑色の宝石だ。我ながら良く見付けられたものだ。緑色のスライムに緑色の魔石って、普通見付けられそうにない。


 必ずしも魔石に固執した訳じゃないが、魔石は手に入れたかった。ラノベやマンガだと、魔石は魔法を行使する為の触媒である事が多い。これがあれば俺も魔法が使えるかも知れないのだ。


 自室でベッドに腰掛け、手の上に乗る魔石を見ながら、顔が綻んでいるのが自分でも分かる。ふふん。魔法か。テンション上がるな。やはり最初はあの魔法だろう。


「ステータスオープン!」


 シーン。何も起こらなかった。くっ、これでも駄目なのか。集中力か足りなかったのかな? それともイメージ力? 魔法陣が必要とかになると難しいな。それともステータスを見る魔法に適性がないのか。


「はあ~」


 俺は息を吐きながらベッドにうつ伏せになる。他の四属性の魔法なんかも試してみたいが、部屋の中で火の魔法を使って火事になんてなったら、目も当てられない。


 これ以上は異世界に行ってからかな。



 家族が留守中にホームセンターから一輪車やツルハシなどを買い込み、異世界に持ち込む。


 しかし、俺以外に使用者はいないし、盗む人間もいないから、ツルハシやスコップ、一輪車はそこら辺に放置なのだが、どこかに物置か何か作った方が良いんだろうか?


 そう言えば、今掘っている穴が丁度物を収納するのに良いぐらいの大きさ、深さだな。あれに戸板を付ければ十分なんじゃないか?


 そう考えた俺は、掘った横穴の周りの瓦礫を、スコップと一輪車でどかして綺麗にすると、ツルハシ、スコップ、一輪車を収納してみる。


 あ、これで良いな。戸板は……別に必要ないか。


「さて」


 俺は工具類を物置と言う名の横穴に仕舞うと、近場の岩の上に胡座をかいて座る。魔法を使う為、魔石に集中する為だ。なぜ胡座をかくのか。理由は俺にも分からない。が俺は格好から入るタイプだ。



 胡座をかいて目を閉じ精神を集中させてみる。シーンと静まり返った崖下。何もないこの空間が、俺の集中力を高めてくれている気がする。


 良し。このまま集中力を極限まで高めるぞ! と思っていると、カサカサカサと俺の足下を動き回る何かの気配が聞こえた。俺がそうっと目を開いて足下を見れば、あのデカいムカデが三匹、俺の身体をよじ登っていた。


「うわああああああッ!!」


 思わず悲鳴を上げた俺は、ムカデを振り払いながら、岩の上から転げ落ちる。頭を打って痛かったが、それどころではない。俺は急いで物置までツルハシを取りに行くと、それで三匹のムカデを刺し殺していく。


「はあ……、はあ……、はあ……」


 異世界なら集中出来るだろうと考えたが、そんな事はなかった。思えばこの崖下にはカエルもスライムもいるのだ。他の生き物もいるかも知れない。精神集中なんてしている時間はなかった。


「はあ~」


 とりあえずムカデを殺して一息吐いたところで、ムカデの死骸を漁る。死骸に興味がある訳じゃない。ムカデにも魔石があるかも知れないからだ。


 結論。あったにはあったが、滅茶苦茶小さい。まあ、結構大きいあのスライムで大豆程度の大きさの魔石なのだ。五十センチ程のムカデでは、ほとんどないに等しい。ムカデから魔石を取り出すのは現実的じゃないかも知れない。宝石なんかも、あんまり小さいのは値打ちがないって聞くしなあ。今後ムカデの魔石は放置で。



 さて、魔法の検証に戻ろう。集中は出来ないが、魔法が使えないと決まった訳じゃない。


 俺は魔石を持った右手を前に突き出すと、


「ファイアボール!」


 呪文を唱えてみる。しかし何も起こらなかった。ファイアボールは初級の初級だと思っていたが、駄目か。


「ウインドカッター!」


「ウォーターアロー!」


「ストーンショット!」


 ……四属性どれにも全く何にも引っ掛からなったな。あれかな? 転移門なんて使えるんだから俺の属性は時空系なのかな? 良し!


「時よ止まれ!」


 シーン。何も起こらない。俺は膝から崩れ落ちた。


 駄目か。まあそうだよな。転移門だけで魔法のリソースのほとんどを使い切っていると考えるべきなんだろう。転移門なんて一般人には一生掛かっても使えない大魔法なんだから。それで納得しよう。


 ……でももうちょっと頑張ってみても良いよね?


 可能性として、魔法を行使するには魔石が小さ過ぎる、と言うのがあるのかも知れない。もっと大きな魔石か、もっと多量の魔石があれば、魔法を使う事が出来るんじゃないだろうか? もしくはもっと小さな魔法であれば行使出来るのかも知れない。


 俺は息を整えると、右手で魔石を握り、熱くなれ! と念じてみる。


 するとどうだろう。右手に握られた魔石がほんのりじんわり温かくなってきたではないか!


「おお! 本当に温かくなってきた!」


 と俺は右手を開いて、魔石を見詰め、このままどんどん熱くなれ! と念じるが、パキッと言う音とともに魔石が真っ二つに割れたかと思うと、砂となってしまった。


 くっ、成程。やはり魔石が小さ過ぎたのだ。この小さな魔石一個では、じんわり温める程度の事しか出来ないんだな。


 しかしこれは大きな学びだ。この世界には魔法が存在し、魔石を触媒にすれば、俺にも魔法が行使出来る事がここに立証されたのだから。


 おお! これは俄然やる気が出てきたぞ!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...