世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
17 / 643

成長・発展・展開

しおりを挟む
 学校と言う場所は奇特な所である。


 世の中に好き好んで二月の寒空の下、校庭でサッカーをしたい奴なんていないだろう。体操着の上にジャージ着てても寒いわ。


 ボーッと突っ立ってるのがいけないのだろうか。少しは身体を動かせば温かくなるかな?


 コロコロコロと丁度良くボールが俺の前に転がり込んできた。


「げっ! 工藤だ! 工藤に渡ったぞ! 全員退避!」


 クラスメイトの一人の号令で、ボールを追っていたクラスメイトたちが一斉に俺から離れていく。なんだこの扱い。


 そう思いながら俺は味方のペナルティーエリアから、敵ゴールに向かってボールを蹴り出した。


 ボールは一直線に敵ゴールポストに向かい、既にキーパーも退避済みのゴールに突き刺さる。


「やべえ……! 人間じゃねえよアイツ」


 失敬だな。人間だよ。……人間だよね?



『変なところで自信を失くしておるな』


「そりゃあねえ。失った足が生えてきようものなら、自分が人間なのか疑いたくもなるって」


 学校で周りから恐れられながら一日を過ごし、帰宅した俺は今日も穴掘りをしていた。異世界でレベルアップをした俺の肉体は、どうやら地球では規格外になってきているようだ。


 そんな俺が学校であまり目立っていないのは、タカシのハーレムが派手で衆目を集めているからだろう。


『ふむ。地球人と言うのは、魔物などを倒してレベルアップした時に、傷や欠損部位が回復したりしないのか?』


「そもそも地球に魔物はいないから。動物殺してレベルアップした。なんて話も聞いた事ないし」


『ふむ。傷の回復を人間の自然治癒力に任せるとなると、随分と生き難い世の中なのだな。文明はかなり発達しているように見えたのだがな』


「う~ん、どうだろう? 地球であっても国や地域によっても文明レベルは違うしなあ。アニンだって長い事眠ってたんだ。もしかしたらこっちの世界だって文明レベルが上がってるかもよ?」


『ふむ。確かにそれはあり得るな』


 文明云々と言うと、テレビやネットで見る限りでは、桂木翔真によって組織された異世界調査隊は、異世界の現地人とそれなりに上手く交流しているようだ。


 特番だった番組は、既に週一放送に切り替わっており、地球人類未踏の異世界の映像に、全世界の人たちが注目し始めていた。


 番組に出てくる異世界人は見た目俺たちとあまり変わりなく、ただ髪色や瞳の色が違うだけのように見える。ピンクや青い髪とか、異世界では普通らしい。


 生活は素朴で、魔法、魔法陣や魔石に依拠した暮らしのようだ。ただ、生活圏の外には人間より強い魔物なども多く存在するようで、地球のように人間の生活圏を広く取れていないので、文明レベルが高いようには見えなかった。困っているようにも見えなかったけど。



 アニンが変化した真っ黒なツルハシでサクサク穴を掘り、掘って出た岩くれを、またもやアニンを変化させたスコップで一輪車に載せる。そしてそれを地下墓地を通って崖下まで運んでいくのだ。この運ぶ作業が面倒臭い。


 穴掘り自体はアニンのお陰でサクサク進むようになったのだが、お陰様でトンネルの道程が長くなり過ぎ、一輪車の往復が一苦労だ。まあ、これは嬉しい悲鳴と言う事にしておこう。


「ふう」


 崖下で岩くれを一輪車から降ろすと、一息吐いて天を仰ぐ。見えるのは狭い狭い空の景色だ。ああ、あの空をもっと広い場所でのんびり眺めたいものだ。


 などと思いを巡らせていると、何かが岩壁を這う気配を感じ取った。視線をそちらに向けると、トカゲだ。なんだろう? 今まで見なかったのに、この時期に立て続けに見ると言う事は、崖の外でトカゲが繁殖した。と言う事なのか? それとも今が繁殖期で、エサを求めてここまで下ってきたのだろうか?


 まあ、どちらでもいいか。殺すだけだ。俺は腕輪形態だったアニンを、剣へと変えた。


 黒剣は見た目は普通の直剣だ。刀身は一メートルはないだろう。俺はそれを両手で握り、正眼に構える。俺は生まれてこの方剣なんて扱った事がない。なのでこんな感じで構えるのかなってところだ。


 トカゲと対峙すると、この間の事を思い出して背中を冷や汗が流れる。


『大丈夫だ。あんなトカゲに負けはせん』


 そう言ってくれるアニンが心強い。


 ふう、ふう、と浅くなる息を整えているうちに、トカゲがこちらへ猛突進してきた。


 俺は剣を振り上げ、大口開けて俺を飲み込もうとするトカゲと交錯する直前、黒剣を振り下ろした。


 すると、ザシュッと黒い刃の波動が黒剣からトカゲに向かって迸り、五メートル以上あるトカゲは、一刀両断されたのだった。


 真っ二つになったトカゲを見下ろしながら、そう言えば地下墓地で戦ったトカゲも、こんな感じに真っ二つになっていたなあ。と思い出す。


 なんと言うか、剣の技量は要らなかったな。


『言ったであろう。トカゲなんぞに負けはせんと』


 確かに、トカゲ程度ならどうにかなるが、今後アニンの扱い方に関して気を使う事になりそうだ。



 地下墓地からトンネルを掘り進めて一週間。俺の感覚がざわついている。外が近い気がするのだ。間違いないだろう。


 なのでツルハシを振るうのに気合いが入る。掘り起こされた岩くれを運び出すのも煩わしく、それらはそこら辺に放置してどんどん掘り進める。そして、


 ザクッ、ガラガラッ!


 と眼前の岩が砕け落ち。外から眩しい光が差し込んできた。そう、光だ。今度こそ本当に外に出られたのだ。と穴を拡張して、俺は外に飛び出した。


 確かにそこは外だった。眼前は林で、木々が鬱蒼と生い茂っている。その向こうに微かに見える太陽が、真っ赤に染まって見えるので、今は夕暮れなのだろう。


「外に、出たんだな」


『うむ。そうだな』


 はあ~、と俺はその場に大の字になって倒れ伏した。見上げる空は暗くなり始め、星がチラチラ瞬き始めている。


 大きく息を吸い込むと、崖下からここまでのトンネルの中とは違い、新鮮な空気の匂いがする。美味しい。


 トンネルを掘り進める事約半年。やっと、やっと外に出られた。嬉しい。凄い達成感が心の底から沸き起こる。俺は成し遂げたのだ!


 ……いやいやいや。何を言っとるんだ俺は。成し遂げたって、トンネル開通させただけじゃねえか。ここから、広い異世界を冒険するんだろうが。


 そう、ここからがメイン。今までのは前菜だ。……前菜だけで結構お腹いっぱいだな俺。


 はあ、今後の事はまた今度考えるとして、今はこの達成感に浸るとしよう。そう思い直し、俺は空の星々を再度見上げるのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

処理中です...