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虹色のベール
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「あんたがティティの旦那かい?」
俺が一歩離れたところで魔女たちを眺めていると、鷲鼻の一人の魔女がその輪を離れて話し掛けてきた。
「は? え? 旦那、ですか?」
俺が動揺していると、あっという間に魔女たちに囲まれた。
「どうなのティティとの夫婦生活は?」
「二人して新婚旅行しているのでしょう?」
「楽しい? ねえ、楽しい?」
一気に色々言われても処理しきれん。と思っていると、俺と魔女たちの間にバヨネッタさんが割って入ってきた。
「皆様、私とハルアキはそう言う関係ではありませんから。あくまでも主人と従僕。それが私たちの関係の全てです」
焦ったように説明するバヨネッタさんだったが、魔女たちはそんなバヨネッタさんを更に質問攻めにしていく。
「若いわね。皆最初はそう言うのよ」
「そんな事言って、ずいぶんと大事そうにしているって話だよ?」
「すっごいラブラブで、旦那が傷付いたら烈火の如く怒るのでしょう?」
「誰がそんな話を?」
魔女たちの視線は輪から離れたところで佇む一人の魔女、紫煙の魔女へと向けられる。
「オラコラ!」
「ええ? でも本当の事じゃない。ねえ、ハルアキくん」
そこでウインクされてもな。いや、睨まないでくださいバヨネッタさん。なんだか俺も巻き込まれてタジタジだ。
「皆様、時間です」
そこへオルさんが和気あいあいとした時間の終了を告げる。すると魔女たちは一転して真剣な顔付きに変わった。オンオフの切り替えがはっきりしている人たちだな。俺も見習って気持ちを切り替えよう。
「オルさん、俺は何をすれば良いのですか?」
「ハルアキくんはこの魔法円の中心に立ってくれるかい」
言われるままに、パラボラアンテナ近くの魔法陣の中央に描かれた円の中に立つ。周囲を見渡すと、俺が立つ魔法円の周りには十個の魔法円があり、それぞれに魔女が一人ずつ立ち、その腕に何やらリストバンド型の装置を装着していく。リストバンドはコードで発電機のような機械に繋がっていて、その発電機からパラボラアンテナにこれまた太いコードが延びていた。
「ハルアキくんも」
そう言ってオルさんが俺にリストバンドを装着していく。結構ずしりと重かった。
「人工衛星、正常に展開しました。システムいつでも起動出来ます」
研究員の言葉にオルさんが頷き返す。
「では皆様、準備はよろしいでしょうか?」
オルさんの言葉に魔女たちが頷き、次いで俺が頷く。それを確認したオルさんが口を開く。
「魔法スキル遠隔照射システムを起動してください」
「魔法スキル遠隔照射システム起動します」
研究員がパソコンのエンターキーを押すと、発電機のような機械が動き始めた。
「では魔女の皆様、魔力を注いでください」
オルさんの言葉に首肯する魔女たち。そしてそれに呼応するように、増田宇宙通信所に張り巡らされた魔法陣が光り始める。
「魔力、正常にアンテナから衛星へと照射されています」
どうやらシステムは正常に起動しているようだ。
「人工坩堝の稼働を確認しました。GPS衛星にも順調に魔力供給が行われています。スキル発動の条件整いました」
「ハルアキくん!」
「分かりました! 『聖結界』、展開します!」
言って俺は夕闇に染まる天に向かって両手を伸ばす。すると俺の魔力は腕のリストバンドからどんどんと抜けていく。あ、これ別に上に両手を伸ばす必要なかったなあ。なんて思いながら、でも今更下ろす事も出来ないので、そのまま『聖結界』を展開させ続ける。
「スキル『聖結界』、衛星に到達。このままGPS衛星を経由して、地球全域へと展開していきます」
俺が空を見上げると、上空では薄っすらと虹色をしたものがどんどんと広がっていくのが見えた。凄いなあれが地球を覆う『聖結界』か。そして十分しないうちに、夜空は薄い虹色のベールに包まれたのだ。
「『聖結界』、地球全土を覆ったのを確認しました。成功です!」
パソコンとにらめっこしていた研究員の言葉に、他の研究員たちも歓声を上げる。が、
「まだよ!」
そう発したのはバヨネッタさんだ。全員の視線がバヨネッタさんに集中した。
「この魔法、このままだと二日しか保たないのよね?」
バヨネッタさんがオルさんに尋ねる。それに首肯するオルさん。
「でもそれじゃあ、約十日程効力が続くだろう『狂乱』のスキル付与薬の力を、完全に封殺するには至らないわ」
それは確かにそうかも知れないが、それはどうしようもないのでは? そう思う俺たちを、バヨネッタさんは鼻で笑った。
「ふふ。分かっていないわね。何で私が魔女を十人も集めたと思っているの?」
十人の魔女。魔女じゃなきゃいけない理由があったって事か? と俺は思考を巡らせ、そして一つの答えに行き着く。
「『限界突破』!」
魔女が持つ固有スキル。周囲の事象を限界以上に強化出来るあれか!
「気付いたわね!」
俺がそう口にした次の瞬間、地上の魔法陣が更に強く輝き始めた。魔女たちが『限界突破』を使用したのだ。そうやって強く輝く魔法陣から、更なる魔力が人工衛星へと流れ込み、『聖結界』を強化していく。上空の虹色のベールが、更に色濃く揺らめき始めた。
「これで『聖結界』の持続時間も長くなったでしょう」
息を吐いてバヨネッタさんは額の汗を拭う。
「全く、こっちは魔力がすっからかんよ」
ジンジン婆様や他の魔女たちも、しゃがんだり地面に手をついたりと、へとへとになっていた。
「ご苦労さまです。こっちも魔力がすっからかんです」
言いながらもう一度空を見上げれば、夜空はまるで全面がオーロラをまとったかのように虹色に揺らめき、こんな時だと言うのに、なんだか感動を覚えてしまう程美しかった。
俺が一歩離れたところで魔女たちを眺めていると、鷲鼻の一人の魔女がその輪を離れて話し掛けてきた。
「は? え? 旦那、ですか?」
俺が動揺していると、あっという間に魔女たちに囲まれた。
「どうなのティティとの夫婦生活は?」
「二人して新婚旅行しているのでしょう?」
「楽しい? ねえ、楽しい?」
一気に色々言われても処理しきれん。と思っていると、俺と魔女たちの間にバヨネッタさんが割って入ってきた。
「皆様、私とハルアキはそう言う関係ではありませんから。あくまでも主人と従僕。それが私たちの関係の全てです」
焦ったように説明するバヨネッタさんだったが、魔女たちはそんなバヨネッタさんを更に質問攻めにしていく。
「若いわね。皆最初はそう言うのよ」
「そんな事言って、ずいぶんと大事そうにしているって話だよ?」
「すっごいラブラブで、旦那が傷付いたら烈火の如く怒るのでしょう?」
「誰がそんな話を?」
魔女たちの視線は輪から離れたところで佇む一人の魔女、紫煙の魔女へと向けられる。
「オラコラ!」
「ええ? でも本当の事じゃない。ねえ、ハルアキくん」
そこでウインクされてもな。いや、睨まないでくださいバヨネッタさん。なんだか俺も巻き込まれてタジタジだ。
「皆様、時間です」
そこへオルさんが和気あいあいとした時間の終了を告げる。すると魔女たちは一転して真剣な顔付きに変わった。オンオフの切り替えがはっきりしている人たちだな。俺も見習って気持ちを切り替えよう。
「オルさん、俺は何をすれば良いのですか?」
「ハルアキくんはこの魔法円の中心に立ってくれるかい」
言われるままに、パラボラアンテナ近くの魔法陣の中央に描かれた円の中に立つ。周囲を見渡すと、俺が立つ魔法円の周りには十個の魔法円があり、それぞれに魔女が一人ずつ立ち、その腕に何やらリストバンド型の装置を装着していく。リストバンドはコードで発電機のような機械に繋がっていて、その発電機からパラボラアンテナにこれまた太いコードが延びていた。
「ハルアキくんも」
そう言ってオルさんが俺にリストバンドを装着していく。結構ずしりと重かった。
「人工衛星、正常に展開しました。システムいつでも起動出来ます」
研究員の言葉にオルさんが頷き返す。
「では皆様、準備はよろしいでしょうか?」
オルさんの言葉に魔女たちが頷き、次いで俺が頷く。それを確認したオルさんが口を開く。
「魔法スキル遠隔照射システムを起動してください」
「魔法スキル遠隔照射システム起動します」
研究員がパソコンのエンターキーを押すと、発電機のような機械が動き始めた。
「では魔女の皆様、魔力を注いでください」
オルさんの言葉に首肯する魔女たち。そしてそれに呼応するように、増田宇宙通信所に張り巡らされた魔法陣が光り始める。
「魔力、正常にアンテナから衛星へと照射されています」
どうやらシステムは正常に起動しているようだ。
「人工坩堝の稼働を確認しました。GPS衛星にも順調に魔力供給が行われています。スキル発動の条件整いました」
「ハルアキくん!」
「分かりました! 『聖結界』、展開します!」
言って俺は夕闇に染まる天に向かって両手を伸ばす。すると俺の魔力は腕のリストバンドからどんどんと抜けていく。あ、これ別に上に両手を伸ばす必要なかったなあ。なんて思いながら、でも今更下ろす事も出来ないので、そのまま『聖結界』を展開させ続ける。
「スキル『聖結界』、衛星に到達。このままGPS衛星を経由して、地球全域へと展開していきます」
俺が空を見上げると、上空では薄っすらと虹色をしたものがどんどんと広がっていくのが見えた。凄いなあれが地球を覆う『聖結界』か。そして十分しないうちに、夜空は薄い虹色のベールに包まれたのだ。
「『聖結界』、地球全土を覆ったのを確認しました。成功です!」
パソコンとにらめっこしていた研究員の言葉に、他の研究員たちも歓声を上げる。が、
「まだよ!」
そう発したのはバヨネッタさんだ。全員の視線がバヨネッタさんに集中した。
「この魔法、このままだと二日しか保たないのよね?」
バヨネッタさんがオルさんに尋ねる。それに首肯するオルさん。
「でもそれじゃあ、約十日程効力が続くだろう『狂乱』のスキル付与薬の力を、完全に封殺するには至らないわ」
それは確かにそうかも知れないが、それはどうしようもないのでは? そう思う俺たちを、バヨネッタさんは鼻で笑った。
「ふふ。分かっていないわね。何で私が魔女を十人も集めたと思っているの?」
十人の魔女。魔女じゃなきゃいけない理由があったって事か? と俺は思考を巡らせ、そして一つの答えに行き着く。
「『限界突破』!」
魔女が持つ固有スキル。周囲の事象を限界以上に強化出来るあれか!
「気付いたわね!」
俺がそう口にした次の瞬間、地上の魔法陣が更に強く輝き始めた。魔女たちが『限界突破』を使用したのだ。そうやって強く輝く魔法陣から、更なる魔力が人工衛星へと流れ込み、『聖結界』を強化していく。上空の虹色のベールが、更に色濃く揺らめき始めた。
「これで『聖結界』の持続時間も長くなったでしょう」
息を吐いてバヨネッタさんは額の汗を拭う。
「全く、こっちは魔力がすっからかんよ」
ジンジン婆様や他の魔女たちも、しゃがんだり地面に手をついたりと、へとへとになっていた。
「ご苦労さまです。こっちも魔力がすっからかんです」
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