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哲学者ぶる(後編)
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トモノリと浅野、リョウちゃんの三人は、この村とこの女の子が終生幸せに暮らす未来を構築する事を、このゲームでの自分たちの目的に据えた。そしてそれは中学生だった三人には長く長く続く苦難の日々だったそうだ。
とりあえず女の子は飢えてすぐ死ぬので、まず村の生産力を上げねばならない。だがいきなりその村だけ生産力を上げるのは、周辺から怪しまれるので、まずは国の生産力を上げなければならない。
女の子は病気ですぐ死ぬので、村の医療レベルを上げねばならないが、いきなりその村だけ医療レベルを上げれば怪しまれるので、まずは国の医療レベルを上げねばならない。
女の子は魔物や盗賊の襲来ですぐ死ぬので、村の防衛力を上げねばならないが、だがいきなり村の防衛力だけを上げれば、そこが重要地点であると周りから思われて、逆に襲撃に遭うので、まずは全国の魔物や盗賊の討伐をやっていかなければならない。
このように、女の子一人が明るい未来を手に入れる為には、国全体を良くしていかなければならないのだ。外国との戦争から国を守り、国内の利権を切り崩し、村と言う国の端っこで生きている人々が幸せに生きていけるように、国を良くしていかなければならないのだ。
それでも天災を防ぐのは難しいそうだ。日照り対策にダムを造り、洪水対策に堤防を造り、地震に強い家を造っても、それを超える天災が起きて全てを薙ぎ払っていくのだそうだ。
それが何十回目、何百回目の挑戦だったのか、誰も覚えていない。村は滅びる事もなく、その女の子は好きな男と結婚し、子を授かり、孫を授かり、天寿を全うしようと言う時、その国の何代目かの為政者から、国内を見て回りたいとの話が上がった。トモノリは、これくらい良いだろう。とその村を周遊地の一つに潜り込ませ、為政者について行った。
女の子は既に老女となっていたが、トモノリが好きになった頃の面影を持ち、トモノリたちに茶席を設けてくれた。それがトモノリのゲームエンドだった。
巧妙に出生が隠されていたが、女の子はもう一人の助言者、NPC助言者の系譜に連なる者だったのだ。その為、最後の茶席で毒茶を回避しても、周囲を取り囲んだ暗殺者に殺されるし、女の子を途中でこちら側に引き込めば、女の子が百パーセント向こうの暗殺者に殺されるのだ。ならばNPC助言者を殺せばどうなるかと言えば、国中で相手側の協力者が蜂起して、その中に女の子も含まれている為、死ぬか良くて一生牢獄の中なのだ。
その後何百回やっても、世界を滅ぼしてこの村だけを残しても、最後はトモノリが死ぬか、この女の子が死ぬかの二択となる。
トモノリは絶対変えられない運命に打ちひしがれ、このゲームを数え切れない程やった事で、政争を知り、戦争を知り、地学、物理学、医学、農学、気象学、世界の仕組みに精通し、神の如き頭脳を持つリョウちゃんと浅野が側にいた事で、世界の裏側にまで、天使たちの元にまでたどり着いてしまったのだ。
「つまり、浅野とリョウちゃんのせいって事?」
俺の言葉にトモノリは首を横に振るう。
「私だってこんな結果が待っているなんて知らなかったわよ。出来得る限りの事を試した結果が、こうなったの」
まあ、天使から説明を受けたとして、魔王になる事を選んだのはトモノリだからな。現に浅野は魔王になっていないし。リョウちゃんはどこにいるか分からないから何とも言えないな。
「それってやっぱり、その女の子を現実世界で復活させたいって事か?」
タカシがトモノリに尋ねる。が、トモノリはこれにも首を横に振るった。
「俺はさ、可能性の狭い世界に、もう嫌気が差しちまったんだよ」
「そんな理由が、地球を滅ぼす理由になると思っているのか?」
俺の言葉に、薄い笑みで答えるトモノリ。
「そうだな。でもさあ、ハルアキだって、タカシだって、シンヤだって、今の自分に、今の世界に嫌気が差したから、そうやって違う自分になったんじゃないのか?」
そう言われれば……そうかも知れないが。
「だが少なくても、俺たちは世界を滅ぼそうとは思っていないぞ?」
「俺だってそうさ」
??? トモノリの言葉に、俺は頭の上に『?』を浮かべずにはいられなかった。
「魔王が勇者を殺す事で手に入れられるコンソールは、別に世界を滅ぼすスイッチじゃないぞ?」
「それは知っている。だがこの世界を自由にすれば、その影響で俺たちの地球が滅びるって事は分かっているんだよな?」
「このまま、ならな」
このままならな? そんなの…………っ!!
「まさか! トモノリ! 地球の勇者をもう見付けているのか!?」
俺の問いにトモノリの口角が上がる。くっ、それならトモノリが言いたい事も分かる。勇者が、コンソールがこの世界と地球で二つあるなら、地球を滅ぼさずにこの世界と地球を同時に変化させる事も可能だろうからだ。
「さあ、この情報、どう扱う?」
俺は歯ぎしりしていた。浅野をここにゲスト出演させた件で、ガーシャンの電波塔を使ってしまった。これを通してこの情報はこの世界にも地球にも知れ渡るだろう。この情報、地球にとっても異世界にとっても扱い難いのは事実だ。トモノリが今後創ろうと言う世界次第では、地球と異世界による連合軍に加入する国は半減、それどころか連合軍自体が作られなくなる可能性もある。
「私、通信切ろうか?」
恐らく同じ事を考えついただろう浅野が提案してきた。
「いや、ここで下手に通信を切るのも悪手だろう。ちゃんとトモノリがどんな世界を創ろうとしているのか全文伝わった方が、混乱は少ないと思う」
「…………そうね」
さて、トモノリの思惑はどこにあるやら。
とりあえず女の子は飢えてすぐ死ぬので、まず村の生産力を上げねばならない。だがいきなりその村だけ生産力を上げるのは、周辺から怪しまれるので、まずは国の生産力を上げなければならない。
女の子は病気ですぐ死ぬので、村の医療レベルを上げねばならないが、いきなりその村だけ医療レベルを上げれば怪しまれるので、まずは国の医療レベルを上げねばならない。
女の子は魔物や盗賊の襲来ですぐ死ぬので、村の防衛力を上げねばならないが、だがいきなり村の防衛力だけを上げれば、そこが重要地点であると周りから思われて、逆に襲撃に遭うので、まずは全国の魔物や盗賊の討伐をやっていかなければならない。
このように、女の子一人が明るい未来を手に入れる為には、国全体を良くしていかなければならないのだ。外国との戦争から国を守り、国内の利権を切り崩し、村と言う国の端っこで生きている人々が幸せに生きていけるように、国を良くしていかなければならないのだ。
それでも天災を防ぐのは難しいそうだ。日照り対策にダムを造り、洪水対策に堤防を造り、地震に強い家を造っても、それを超える天災が起きて全てを薙ぎ払っていくのだそうだ。
それが何十回目、何百回目の挑戦だったのか、誰も覚えていない。村は滅びる事もなく、その女の子は好きな男と結婚し、子を授かり、孫を授かり、天寿を全うしようと言う時、その国の何代目かの為政者から、国内を見て回りたいとの話が上がった。トモノリは、これくらい良いだろう。とその村を周遊地の一つに潜り込ませ、為政者について行った。
女の子は既に老女となっていたが、トモノリが好きになった頃の面影を持ち、トモノリたちに茶席を設けてくれた。それがトモノリのゲームエンドだった。
巧妙に出生が隠されていたが、女の子はもう一人の助言者、NPC助言者の系譜に連なる者だったのだ。その為、最後の茶席で毒茶を回避しても、周囲を取り囲んだ暗殺者に殺されるし、女の子を途中でこちら側に引き込めば、女の子が百パーセント向こうの暗殺者に殺されるのだ。ならばNPC助言者を殺せばどうなるかと言えば、国中で相手側の協力者が蜂起して、その中に女の子も含まれている為、死ぬか良くて一生牢獄の中なのだ。
その後何百回やっても、世界を滅ぼしてこの村だけを残しても、最後はトモノリが死ぬか、この女の子が死ぬかの二択となる。
トモノリは絶対変えられない運命に打ちひしがれ、このゲームを数え切れない程やった事で、政争を知り、戦争を知り、地学、物理学、医学、農学、気象学、世界の仕組みに精通し、神の如き頭脳を持つリョウちゃんと浅野が側にいた事で、世界の裏側にまで、天使たちの元にまでたどり着いてしまったのだ。
「つまり、浅野とリョウちゃんのせいって事?」
俺の言葉にトモノリは首を横に振るう。
「私だってこんな結果が待っているなんて知らなかったわよ。出来得る限りの事を試した結果が、こうなったの」
まあ、天使から説明を受けたとして、魔王になる事を選んだのはトモノリだからな。現に浅野は魔王になっていないし。リョウちゃんはどこにいるか分からないから何とも言えないな。
「それってやっぱり、その女の子を現実世界で復活させたいって事か?」
タカシがトモノリに尋ねる。が、トモノリはこれにも首を横に振るった。
「俺はさ、可能性の狭い世界に、もう嫌気が差しちまったんだよ」
「そんな理由が、地球を滅ぼす理由になると思っているのか?」
俺の言葉に、薄い笑みで答えるトモノリ。
「そうだな。でもさあ、ハルアキだって、タカシだって、シンヤだって、今の自分に、今の世界に嫌気が差したから、そうやって違う自分になったんじゃないのか?」
そう言われれば……そうかも知れないが。
「だが少なくても、俺たちは世界を滅ぼそうとは思っていないぞ?」
「俺だってそうさ」
??? トモノリの言葉に、俺は頭の上に『?』を浮かべずにはいられなかった。
「魔王が勇者を殺す事で手に入れられるコンソールは、別に世界を滅ぼすスイッチじゃないぞ?」
「それは知っている。だがこの世界を自由にすれば、その影響で俺たちの地球が滅びるって事は分かっているんだよな?」
「このまま、ならな」
このままならな? そんなの…………っ!!
「まさか! トモノリ! 地球の勇者をもう見付けているのか!?」
俺の問いにトモノリの口角が上がる。くっ、それならトモノリが言いたい事も分かる。勇者が、コンソールがこの世界と地球で二つあるなら、地球を滅ぼさずにこの世界と地球を同時に変化させる事も可能だろうからだ。
「さあ、この情報、どう扱う?」
俺は歯ぎしりしていた。浅野をここにゲスト出演させた件で、ガーシャンの電波塔を使ってしまった。これを通してこの情報はこの世界にも地球にも知れ渡るだろう。この情報、地球にとっても異世界にとっても扱い難いのは事実だ。トモノリが今後創ろうと言う世界次第では、地球と異世界による連合軍に加入する国は半減、それどころか連合軍自体が作られなくなる可能性もある。
「私、通信切ろうか?」
恐らく同じ事を考えついただろう浅野が提案してきた。
「いや、ここで下手に通信を切るのも悪手だろう。ちゃんとトモノリがどんな世界を創ろうとしているのか全文伝わった方が、混乱は少ないと思う」
「…………そうね」
さて、トモノリの思惑はどこにあるやら。
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