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瓢箪から駒
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「カヌスですって!?」
皆を代表するようにバヨネッタさんが聞いてきた。
「あくまでアニンの話ですけど、相手は古代語で自分がカヌスだと名乗ったそうです」
「それは……」
と何事かバヨネッタさんが口を開きかけた時だ。下から部屋全体を覆うように光の面が迫り上がってきて、俺たちの身体を通過し、天井へと消えていった。何をされたのか? と疑問を口にするより先に、
「これで会話が成立するかな?」
と言うカヌスを名乗る男の言葉が、その衝撃を上書きした。
「……何をしたのか、教えて貰えるかしら?」
強気なバヨネッタさんに、カヌスは嘆息しながら首を振る。
「対等な会話を望むなら、まず互いにあいさつを交わす事から始めるべきだと、親御さんから習わなかったのかな?」
「いきなりこちらへ何事かを仕掛けてきた相手の言う言葉じゃないわね」
そして互いに不敵な笑みで見詰め合うバヨネッタさんとカヌス。はあ、これじゃあ話が先に進まないな。
「申し遅れました。カヌスさん? でよろしいのでしたか? 私、最近になって近所(地上)に引っ越してきました、ハルアキと申します。こちらの女性は我が主であらせれるバヨネッタ様です」
俺はカヌスに対して恭しく頭を下げてあいさつをした。
「そう言えば、エルデタータと戦った時にそんな事を言っていたね。確か地上の国が代わったとか」
あの戦いを見ていたのか。
「はい。今はバヨネッタ天魔国と名乗らせて頂いております」
「ふ~ん」
カヌスを名乗る男は、顎に手を当てたまま笑顔を絶やさず、こちらを見定めるように順々に俺たちに視線を向けていく。
「それで? 彼一人に名乗らせて、他は名乗らない訳か」
ふう。ここで戦闘とか避けたいんだけど。攻撃が通るかも怪しいし、今後のアルティニン廟攻略にも関わってきそうだし。と俺が視線で皆にあいさつするように促せば、
「ミカリーと申します。隣国で神に使える職に就いております」
「デムレイだ。遺跡やダンジョンの探索を生業としている」
「武田傑。しがないジャーナリストだよ」
「バヨネッタ様に仕えているカッテナです」
「俺はハルアキ様に仕えているダイザーロです」
「…………」
バヨネッタさ~ん。俺が両手を合わせて懇願すれば、溜息を漏らしてバヨネッタさんが口を開く。
「バヨネッタよ。仲良くしましょう? ご近所さん」
うん、笑顔だけど目が笑ってないなあ。そんなピリピリした雰囲気を察したのかしてないのか、カヌスはとても自然体で俺たちのあいさつを受け止め、そして椅子から立ち上がると、こちらヘ一礼した。
「ご丁寧なあいさつ痛み入る。僕の名はカヌス。このアルティニン廟の制作者であり、初代魔王だ」
……………………は? え? 今なんて言った?
「初代魔王?」
ダイザーロくんの口から、全員の疑問がこぼれ落ちる。それに対して、頭を上げたカヌスは、にこりと笑顔を返すのだった。
「嘘でしょ?」
横に並ぶ異世界組(武田さん含む)も、信じられないものを見る目で、カヌスから目を離せなくなっていた。
「初代魔王がカヌスだなんて、初めて聞いたんですけど?」
「私も初めて聞いたわ。私やオル、デムレイたちが遡れたのはフンババまでで、どうやらそれ以前にも魔王は存在していたと言う事までよ」
成程。
「カヌス様……とお呼びしても?」
「良いよ、ハルアキくん」
あいさつを終えて椅子に座り直したカヌスが、こちらへ顔を向ける。
「無礼ながら質問をする許可を頂けますでしょうか?」
「ふふ。何でも聞いてくれ給え。ああ、立ち話もあれだろう。椅子を用意しよう」
「ああ、でしたらお茶と茶菓子はこちらがご用意しましょうか?」
「それは嬉しいね。物を口にするなんて、何千年ぶりかな。毒入りでも構わないよ? 僕は毒耐性あるから」
ははは、笑えない。椅子が床から浮き上がってきたところで、俺はカッテナさんに目配せするが、物凄く目が泳いでいるな。これは俺がお茶を用意した方が良さそうだ。皆が恐る恐る椅子に座る中、俺は遅れて床から現れたテーブルの上に、『空間庫』から人数分のクッキーを置いていき、紅茶を淹れて、配っていく。
「ふむ。完全発酵茶か。珍しいね。この茶葉、東大陸のものかな?」
「茶も茶菓子も異世界のものになります」
「異世界の? ああ、もうしかしてハルアキくんは、アリクサンダルと同郷なのかい?」
「ええ。世界は同じですが、私の生まれは東の果ての島国でして、大王とはまるで接点はありませんが」
言いながら俺も席に座る。そして紅茶を飲んでとにかく気分を落ち着ける。ふう。紅茶の香りと一服したと言う行為で、少し気分が落ち着いた。
「ええ、カヌス様、改めて質問をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
紅茶を一口飲み終わり、クッキーを口に含んだカヌスに、俺は今一度尋ねる。
「いいよ。僕も会話をしない為にこの場所に君たちを招いたりしないよ」
「そうですか。ええ……」
何から聞こう? 魔王って本当? そもそも初代って? いや、そもそも本物のカヌスなのか? 幽霊? 亡霊? 肉体があるように見えるけど? いきなり会話が可能になったけど、あれはいったい?
「本物のカヌスなのよね?」
俺が迷っている間にバヨネッタさんが切り込んだ。
「君たちが指すカヌスが何者なのかは知らないけれど、僕の名前はカヌスだよ」
確かに、世界で過去未来に渡って、カヌスを名乗れるのが一人だけって事はないよな。
「ダンジョンメーカーであるカヌスかって話だ。この世界にはあんたが造ったと言われるダンジョンがいくつもあるからな」
とデムレイさんが疑わしげにカヌスを睨む。
「成程。それなら、まあ、僕で間違いないだろうね。ダンジョンを造るのは僕の趣味で生き甲斐だから」
生きているんだ。魔王だから? いや、魔王なら勇者に倒されて……、そこで俺の視線はカヌスの後ろのコンソールに目が行った。
「あれ、勇者を倒して手に入れたコンソールですか?」
「そうだよ。あれで世界中にダンジョンを造っているんだ」
成程。世界を改変出来る勇者コンソールがあるなら、長生きも、趣味のダンジョン造りも成立させられるか。しかしそれは、初代勇者が魔王に敗北したと言う事実でもある。
「本当に、あなたが初代魔王なの?」
「僕を魔王としてこの世界に生み落とした天使、ネネエルの言葉を信じるなら、そうなるね」
ネネエルか。確か魔王軍六魔将の一人で、魔王を召喚する事が出来るんだったっけ。
「じゃあ、あなた以前にも魔王がいた可能性はあるのね?」
「僕は歴史に疎いし、興味もないから、何とも言えないな」
バヨネッタさんの質問に、イエスともノーとも取れる返答をするカヌス。
「では私からもう一つ」
「何かな? ハルアキくん」
「私たちをここへ招いてくださった理由をお聞きしても?」
俺の質問に、カヌスは笑顔を解いて真顔になった。
皆を代表するようにバヨネッタさんが聞いてきた。
「あくまでアニンの話ですけど、相手は古代語で自分がカヌスだと名乗ったそうです」
「それは……」
と何事かバヨネッタさんが口を開きかけた時だ。下から部屋全体を覆うように光の面が迫り上がってきて、俺たちの身体を通過し、天井へと消えていった。何をされたのか? と疑問を口にするより先に、
「これで会話が成立するかな?」
と言うカヌスを名乗る男の言葉が、その衝撃を上書きした。
「……何をしたのか、教えて貰えるかしら?」
強気なバヨネッタさんに、カヌスは嘆息しながら首を振る。
「対等な会話を望むなら、まず互いにあいさつを交わす事から始めるべきだと、親御さんから習わなかったのかな?」
「いきなりこちらへ何事かを仕掛けてきた相手の言う言葉じゃないわね」
そして互いに不敵な笑みで見詰め合うバヨネッタさんとカヌス。はあ、これじゃあ話が先に進まないな。
「申し遅れました。カヌスさん? でよろしいのでしたか? 私、最近になって近所(地上)に引っ越してきました、ハルアキと申します。こちらの女性は我が主であらせれるバヨネッタ様です」
俺はカヌスに対して恭しく頭を下げてあいさつをした。
「そう言えば、エルデタータと戦った時にそんな事を言っていたね。確か地上の国が代わったとか」
あの戦いを見ていたのか。
「はい。今はバヨネッタ天魔国と名乗らせて頂いております」
「ふ~ん」
カヌスを名乗る男は、顎に手を当てたまま笑顔を絶やさず、こちらを見定めるように順々に俺たちに視線を向けていく。
「それで? 彼一人に名乗らせて、他は名乗らない訳か」
ふう。ここで戦闘とか避けたいんだけど。攻撃が通るかも怪しいし、今後のアルティニン廟攻略にも関わってきそうだし。と俺が視線で皆にあいさつするように促せば、
「ミカリーと申します。隣国で神に使える職に就いております」
「デムレイだ。遺跡やダンジョンの探索を生業としている」
「武田傑。しがないジャーナリストだよ」
「バヨネッタ様に仕えているカッテナです」
「俺はハルアキ様に仕えているダイザーロです」
「…………」
バヨネッタさ~ん。俺が両手を合わせて懇願すれば、溜息を漏らしてバヨネッタさんが口を開く。
「バヨネッタよ。仲良くしましょう? ご近所さん」
うん、笑顔だけど目が笑ってないなあ。そんなピリピリした雰囲気を察したのかしてないのか、カヌスはとても自然体で俺たちのあいさつを受け止め、そして椅子から立ち上がると、こちらヘ一礼した。
「ご丁寧なあいさつ痛み入る。僕の名はカヌス。このアルティニン廟の制作者であり、初代魔王だ」
……………………は? え? 今なんて言った?
「初代魔王?」
ダイザーロくんの口から、全員の疑問がこぼれ落ちる。それに対して、頭を上げたカヌスは、にこりと笑顔を返すのだった。
「嘘でしょ?」
横に並ぶ異世界組(武田さん含む)も、信じられないものを見る目で、カヌスから目を離せなくなっていた。
「初代魔王がカヌスだなんて、初めて聞いたんですけど?」
「私も初めて聞いたわ。私やオル、デムレイたちが遡れたのはフンババまでで、どうやらそれ以前にも魔王は存在していたと言う事までよ」
成程。
「カヌス様……とお呼びしても?」
「良いよ、ハルアキくん」
あいさつを終えて椅子に座り直したカヌスが、こちらへ顔を向ける。
「無礼ながら質問をする許可を頂けますでしょうか?」
「ふふ。何でも聞いてくれ給え。ああ、立ち話もあれだろう。椅子を用意しよう」
「ああ、でしたらお茶と茶菓子はこちらがご用意しましょうか?」
「それは嬉しいね。物を口にするなんて、何千年ぶりかな。毒入りでも構わないよ? 僕は毒耐性あるから」
ははは、笑えない。椅子が床から浮き上がってきたところで、俺はカッテナさんに目配せするが、物凄く目が泳いでいるな。これは俺がお茶を用意した方が良さそうだ。皆が恐る恐る椅子に座る中、俺は遅れて床から現れたテーブルの上に、『空間庫』から人数分のクッキーを置いていき、紅茶を淹れて、配っていく。
「ふむ。完全発酵茶か。珍しいね。この茶葉、東大陸のものかな?」
「茶も茶菓子も異世界のものになります」
「異世界の? ああ、もうしかしてハルアキくんは、アリクサンダルと同郷なのかい?」
「ええ。世界は同じですが、私の生まれは東の果ての島国でして、大王とはまるで接点はありませんが」
言いながら俺も席に座る。そして紅茶を飲んでとにかく気分を落ち着ける。ふう。紅茶の香りと一服したと言う行為で、少し気分が落ち着いた。
「ええ、カヌス様、改めて質問をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
紅茶を一口飲み終わり、クッキーを口に含んだカヌスに、俺は今一度尋ねる。
「いいよ。僕も会話をしない為にこの場所に君たちを招いたりしないよ」
「そうですか。ええ……」
何から聞こう? 魔王って本当? そもそも初代って? いや、そもそも本物のカヌスなのか? 幽霊? 亡霊? 肉体があるように見えるけど? いきなり会話が可能になったけど、あれはいったい?
「本物のカヌスなのよね?」
俺が迷っている間にバヨネッタさんが切り込んだ。
「君たちが指すカヌスが何者なのかは知らないけれど、僕の名前はカヌスだよ」
確かに、世界で過去未来に渡って、カヌスを名乗れるのが一人だけって事はないよな。
「ダンジョンメーカーであるカヌスかって話だ。この世界にはあんたが造ったと言われるダンジョンがいくつもあるからな」
とデムレイさんが疑わしげにカヌスを睨む。
「成程。それなら、まあ、僕で間違いないだろうね。ダンジョンを造るのは僕の趣味で生き甲斐だから」
生きているんだ。魔王だから? いや、魔王なら勇者に倒されて……、そこで俺の視線はカヌスの後ろのコンソールに目が行った。
「あれ、勇者を倒して手に入れたコンソールですか?」
「そうだよ。あれで世界中にダンジョンを造っているんだ」
成程。世界を改変出来る勇者コンソールがあるなら、長生きも、趣味のダンジョン造りも成立させられるか。しかしそれは、初代勇者が魔王に敗北したと言う事実でもある。
「本当に、あなたが初代魔王なの?」
「僕を魔王としてこの世界に生み落とした天使、ネネエルの言葉を信じるなら、そうなるね」
ネネエルか。確か魔王軍六魔将の一人で、魔王を召喚する事が出来るんだったっけ。
「じゃあ、あなた以前にも魔王がいた可能性はあるのね?」
「僕は歴史に疎いし、興味もないから、何とも言えないな」
バヨネッタさんの質問に、イエスともノーとも取れる返答をするカヌス。
「では私からもう一つ」
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俺の質問に、カヌスは笑顔を解いて真顔になった。
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