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砂漠コース(前編)
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スターティンググリッド、レース開始前の各車のポジションは、俺がポールポジションで、その右後ろにダイザーロくん、そこからデムレイさん、ミカリー卿、カヌス、リットーさん、バヨネッタさんと左右交互に続き、最後尾に武田さんだ。
茫漠な砂漠の中に、ロングストレートのコースが地平線へと消えてゆく。マップを見ればその先に左への直角カーブがあるのが分かる。この直線コースはオフロードとしては走り易く硬い岩で出来ているが、コースを一歩でも外れれば、タイヤが埋もれるような柔らかな砂地になっている。そんな中、スタートラインの少し先にスタートシグナルがぽつんと立っているのも、どこか侘しさとともに、このコースが荒涼として一筋縄ではいかず、選手たちの前に立ちはだかっているのを感じさせた。
「ふう」
一息吐くと、精神を集中させる。三つ横並びのスタートシグナルが、一つ一つ赤く点灯していく中、『六識接続』で全員の意識を共有し、皆の見ているスマホの画面に脳内から目を向ける。
全員から緊張が伝わるのを感じながら、スタートシグナルは三つ全てが赤から緑に変わり、全車一斉に走り出した。
ギャギャギャッッ!!
緊張の中、ダイザーロくんがちゃんとスタートダッシュを決めたのを、『六識接続』で確認しながら、カヌスの前を陣取る俺とデムレイさんで、カヌスのスタートダッシュを阻止する為に、初手でドリフトをかまして、車体を横にして急停車。カヌスの右前にはミカリー卿のマシンがある為、カヌスは左に大きく回り込んで、コースから外れていきなり砂地を走らざるを得ない状況に追い込んだ。良し! 初手は上手くハマった!
しかしカヌスもこうなる事は読んでいたのだろう。カヌスのマシンの馬力は凄まじく、砂地など関係ないかのように左へ急旋回して、俺たちの横を通り越していくのだった。これに内心で嫌な顔をしながら、俺たちはカヌスの後を追い掛ける。
「その馬力、そっちもモーター二台積みか」
「ああ。そちらの二台もそのようだな」
一台の大型のモーターでマシンを動かすのではなく、それより小さな二台のモーターを、前輪と後輪に噛ませて馬力を出すのは、オフロードでは良く見掛ける戦法だ。こちらもダイザーロくんとリットーさんのマシンは、このモーター二台戦法を使用して、砂地に負けない馬力を出す方向にチューニングしてある。
レースが始まった時点で、ダイザーロくんが一人飛び出し、その後にリットーさんが続き、それをカヌスが追い掛ける展開。それに対して残りの五人は、カヌスを追い掛けてはいるが、マシンの性能差で追い付く事は無理だと悟っているので、二周目以降でのカヌスの邪魔になる障害物造りがメインだ。
スマホのマップには各車の位置情報がリアルタイムで映し出されており、先行するダイザーロくん、リットーさんに、カヌスがどんどん迫っているのを表示していた。
闘技場の舞台上空に映し出される巨大ビジョンでは、メインで映されているのはこのゲームのホストであるカヌス視点で、カヌスのマシンがリットーさんに迫っていく勇姿に、闘技場は沸き立っていた。そしてその様子は、ゲームに参加していないカッテナさんの目を通して、俺に共有される。
ロングストレートが終わり、左への直角カーブの時点でカヌスのマシンはリットーさんのマシンに肉薄し、その後に続くS字カーブの連続を、そのドライビングテクニックでコーナーギリギリをついていくカヌスが、連続S字カーブを抜けたところでリットーさんを追い抜き、その後に控える左へのヘアピンカーブで見事なドリフトをかまして、後続となったリットーさんを突き放した。
ヘアピンカーブの後に続くのは幅の狭いショートストレートで、その両側は岩棚となっており、コースを外れて追い抜く事が出来ない仕様だ。しかも先へ行く程路面は砂地へと変わり、選手の行く手を阻む。カヌス視点から見ると、そのショートストレートの先を、ダイザーロくんが走っていた。
ダイザーロくんはピクトレーサーと相性が良い。いや、良くなった。と言った方が正しいか。元々『電気』と言うスキルを持っていたダイザーロくんは、そもそもコンピュータゲームと相性が良かったが、レベル五十を超えて超越者となった事で、『超伝導』と言うギフトと、『操熱』と言うスキルを手にし、まるでマクスウェルの悪魔のような事が可能になった。
マクスウェルの悪魔は、熱や仕事量、情報の交換を得意とする物理学上の仮想悪魔で、この悪魔を上手く手懐ければ、一ビットからコンピュータを操作する事も可能となる。なのでダイザーロくんも、その能力を最大限に活かせれば、カヌスと同じくTASを出す事も可能なのだが、
「ああっ!」
ショートストレートからの右カーブで、減速に失敗したダイザーロくんのマシンが、大きく外側へ流れてしまい、左の岩棚に乗り上げながら、大回りでカーブを曲がる横で、それを嘲笑うかのように、カヌスが見事なドリフトで、カーブに失敗したダイザーロくんを追い抜いていく。しかも正規コースではなく、右岩棚最後にぽっかり空いた短いトンネルを、縫うようにショートカットしてだ。やはりあのショートカットは見逃さないか。
ダイザーロくんも、この六日間で短時間でストレートなら最速を出す事は出来るようになったが、最速を出せるようになったがばかりに、減速してコーナーをつくのが難しくなってしまったな。それでも他の面々より速いけど。
さて、残る俺たちは二周目にトップでやって来るカヌスを妨害する為に、罠を仕掛けていきますか。
茫漠な砂漠の中に、ロングストレートのコースが地平線へと消えてゆく。マップを見ればその先に左への直角カーブがあるのが分かる。この直線コースはオフロードとしては走り易く硬い岩で出来ているが、コースを一歩でも外れれば、タイヤが埋もれるような柔らかな砂地になっている。そんな中、スタートラインの少し先にスタートシグナルがぽつんと立っているのも、どこか侘しさとともに、このコースが荒涼として一筋縄ではいかず、選手たちの前に立ちはだかっているのを感じさせた。
「ふう」
一息吐くと、精神を集中させる。三つ横並びのスタートシグナルが、一つ一つ赤く点灯していく中、『六識接続』で全員の意識を共有し、皆の見ているスマホの画面に脳内から目を向ける。
全員から緊張が伝わるのを感じながら、スタートシグナルは三つ全てが赤から緑に変わり、全車一斉に走り出した。
ギャギャギャッッ!!
緊張の中、ダイザーロくんがちゃんとスタートダッシュを決めたのを、『六識接続』で確認しながら、カヌスの前を陣取る俺とデムレイさんで、カヌスのスタートダッシュを阻止する為に、初手でドリフトをかまして、車体を横にして急停車。カヌスの右前にはミカリー卿のマシンがある為、カヌスは左に大きく回り込んで、コースから外れていきなり砂地を走らざるを得ない状況に追い込んだ。良し! 初手は上手くハマった!
しかしカヌスもこうなる事は読んでいたのだろう。カヌスのマシンの馬力は凄まじく、砂地など関係ないかのように左へ急旋回して、俺たちの横を通り越していくのだった。これに内心で嫌な顔をしながら、俺たちはカヌスの後を追い掛ける。
「その馬力、そっちもモーター二台積みか」
「ああ。そちらの二台もそのようだな」
一台の大型のモーターでマシンを動かすのではなく、それより小さな二台のモーターを、前輪と後輪に噛ませて馬力を出すのは、オフロードでは良く見掛ける戦法だ。こちらもダイザーロくんとリットーさんのマシンは、このモーター二台戦法を使用して、砂地に負けない馬力を出す方向にチューニングしてある。
レースが始まった時点で、ダイザーロくんが一人飛び出し、その後にリットーさんが続き、それをカヌスが追い掛ける展開。それに対して残りの五人は、カヌスを追い掛けてはいるが、マシンの性能差で追い付く事は無理だと悟っているので、二周目以降でのカヌスの邪魔になる障害物造りがメインだ。
スマホのマップには各車の位置情報がリアルタイムで映し出されており、先行するダイザーロくん、リットーさんに、カヌスがどんどん迫っているのを表示していた。
闘技場の舞台上空に映し出される巨大ビジョンでは、メインで映されているのはこのゲームのホストであるカヌス視点で、カヌスのマシンがリットーさんに迫っていく勇姿に、闘技場は沸き立っていた。そしてその様子は、ゲームに参加していないカッテナさんの目を通して、俺に共有される。
ロングストレートが終わり、左への直角カーブの時点でカヌスのマシンはリットーさんのマシンに肉薄し、その後に続くS字カーブの連続を、そのドライビングテクニックでコーナーギリギリをついていくカヌスが、連続S字カーブを抜けたところでリットーさんを追い抜き、その後に控える左へのヘアピンカーブで見事なドリフトをかまして、後続となったリットーさんを突き放した。
ヘアピンカーブの後に続くのは幅の狭いショートストレートで、その両側は岩棚となっており、コースを外れて追い抜く事が出来ない仕様だ。しかも先へ行く程路面は砂地へと変わり、選手の行く手を阻む。カヌス視点から見ると、そのショートストレートの先を、ダイザーロくんが走っていた。
ダイザーロくんはピクトレーサーと相性が良い。いや、良くなった。と言った方が正しいか。元々『電気』と言うスキルを持っていたダイザーロくんは、そもそもコンピュータゲームと相性が良かったが、レベル五十を超えて超越者となった事で、『超伝導』と言うギフトと、『操熱』と言うスキルを手にし、まるでマクスウェルの悪魔のような事が可能になった。
マクスウェルの悪魔は、熱や仕事量、情報の交換を得意とする物理学上の仮想悪魔で、この悪魔を上手く手懐ければ、一ビットからコンピュータを操作する事も可能となる。なのでダイザーロくんも、その能力を最大限に活かせれば、カヌスと同じくTASを出す事も可能なのだが、
「ああっ!」
ショートストレートからの右カーブで、減速に失敗したダイザーロくんのマシンが、大きく外側へ流れてしまい、左の岩棚に乗り上げながら、大回りでカーブを曲がる横で、それを嘲笑うかのように、カヌスが見事なドリフトで、カーブに失敗したダイザーロくんを追い抜いていく。しかも正規コースではなく、右岩棚最後にぽっかり空いた短いトンネルを、縫うようにショートカットしてだ。やはりあのショートカットは見逃さないか。
ダイザーロくんも、この六日間で短時間でストレートなら最速を出す事は出来るようになったが、最速を出せるようになったがばかりに、減速してコーナーをつくのが難しくなってしまったな。それでも他の面々より速いけど。
さて、残る俺たちは二周目にトップでやって来るカヌスを妨害する為に、罠を仕掛けていきますか。
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