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貯古齢糖 壬琉苦

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ACT-31

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エルフの長に連れられて、二人は里を観光することになった。


「観光か…。見知らぬ土地をゆっくり見て回るなんて、俺の今までの人生のなかじゃ、全然なかったから、ちょっと新鮮かも」

「ご主人様、エルフの里を観光できるなんて、滅多にないことなのですよ」

「そうなのか?」

「噂によると、一度訪れたら、生きては帰れないそうです」

「帰ってこれないなら、誰がその噂を広めたんだよ」

「本当ですね? 生還した人がいたんでしょうか」

「物騒な話だな」

「お二人とも、ここが大人気観光スポットです」


 長に勧められた場所は、不気味なドアが一つだけ置いてある、何とも言えないところだった。


「カラフルで変わったデザインのドアだな」

「ドアの先は、いったい、どうなっているんでしょうかね?」

「さぁな、とりあえず入ってみるか」

「はい」


 キキー…


 二人がドアを開けて入ると、真っ暗な空間が、どこまでも続いていた。


「暗くてよく見えないな…。すみません、灯りをもらえますか」

「下に降りたら、灯りがありますよ」

「下? 階段があるのかな…。シエラ、階段みたいなものがないか探そう」

「ーーーーーー!」

「シエラ…?」


 健太郎の問いかけに、シエラがいつまで経っても返事を返さない。まるで、その場から消えたかのようだ。


 ~


「何でだろう、さっき出会ったばかりの子に、自分の正体がバレるかも知れないことを言ってしまうなんて…。私も、まだまだね。次に会ったら、ちゃんと謝らないとーーーー!?」


 青髪の少女が迷宮を探索していると、頭から地面に突き刺さっている、不思議な狐の獣人の少女を発見した。


(何あれ? 何故か私の本能が、絡んだら駄目と訴えかけているわ)

「ふぐぐぐぐ…!!」

(もう、見てられない)


 青髪の少女は、その場を立ち去ろうとしたが、困っている人を見逃すことができず、ついつい助けてしまった。


「助けていただき…、ありがとうございます…」

「あなたは、さっき助けた」

「えっ、は!? 弓矢の人」


 狐の獣人の正体は、シエラだった。


「奇遇ですね、こんな場所で再会するなんて」

「そんなことより、泥を払ってあげるから、こっちに来なさい」

「ありがとうございます」

(何で、私がこんなことをしないといけないの)

「何度も迷惑をかけてしまい、申し訳ないのです」

「まぁ、気にしないでいいわよ。私もさっきは言い過ぎたし、これでおあいこよ」

「ふふ」

「……!」


 シエラが無邪気な笑顔を少女に向けると、少女はそっぽを向いた。


「それより、どうしてこんなことろへ来たの?」

「エルフの里に居たんですけど、気がついたら頭が地面に突き刺さってました」


 どうやら、健太郎といた場所から、足場が急になくなり、ここまで転落して来たそうだ。


「エルフの里!? 貴方たち、エルフの里に行ったの!」

「は、はい。先程まで、エルフの里に居ました」

「よく無事で帰って来れたわね」

「?」

「そのようすじゃ、今、エルフの里が魔王軍に占領されていることは知らなそうね」

「そんな、じゃあ私たちが会っていたエルフの方々は…」

「全て偽者よ」

「でも、どうして魔王軍が占領したことを知っているんですか」

「私は、あの里出身のエルフだからよ」


 少女は、長く綺麗な青髪を持ち、自身の長耳を見せた。


「…!?」

「私はエルフの里を取り戻すために、この迷宮に来ているの。でも、貴方がここにいるということは、奴らがこの迷宮に気づいていることになる」

「この迷宮には、いったい何が…」

「悪魔払いの鏡。どんな上級者悪魔でも、一瞬にして封印してしまう、強力な武器が隠されているの」

(なるほど、浄化系の武器なら、所有者の力量は関係ないということですか)


 シエラは強く一歩踏み込み、少女の手を握る。


「エルフの里を取り戻すお手伝いをさせて下さい!」

「…!」(本当に何なの、この子…。何で、一緒に居たら危険なだけの私のことを、真っ直ぐで純粋な眼で見れるの)


 ギュッ!


「い、一緒に悪魔払いの鏡を探しましょう」

「はい!」

(こんなのいつもの私じゃない、この子のペースにどんどん吸い込まれていく。なんて、不思議な魅力を持っているの)

「…?」


 少女は、シエラのことを拒みながらも、いつの間にか、彼女の優しさに惹かれていた。


 ~


 二人がイチャイチャしている間、健太郎はシエラのことを探していた。


(半径2Km内に、シエラの反応がない…。消えたというよりかは、消されたが正しい言い方だろう。問題は、何でシエラが消されたかだ。これを探るにはまず)


 健太郎はヘルメスの羽靴を使って、真っ暗な空間の中を、縦横無尽に飛び回る。


(いったい、何をしているんだ? まぁ、飛び回ったところで、この部屋の謎は解けまい。何せ、この部屋の構造は、魔王軍一の切れ者と呼ばれているゼロ様が作った部屋。素人に攻略される筈がない)

「なるほど、そういうカラクリか…」


 健太郎は、謎の正体を確かめるべく、高度ギリギリまで上昇した。


「魔神様、どうされたのですが!」

「まぁ、見てなって」


 そう言い残すと、健太郎は暗闇の中に姿を消した。
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