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第3章
別れの日
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某日。
カターユの館で諸々の話の決着がついた俺達は、ひとまずボロの街にようやく帰ることになった。
結局、報酬はギルドを通して俺達に渡す…という形を取るようだ。
冒険者である俺達を半ば強制的にギルドから連れ出した事に対する、謝罪と体裁の意味を込めたのだろう。
そういえば、この館にいる期間が長すぎて、俺達はそもそもギルドから直通でここまで来たのだと言うことをスッカリ忘れていた。
あの後、ギルドではどういう対応をしていたのだろう。
ケインやエイベル、テロッサなどみんな元気だろうか。
外に出ると、あの時味わった寒さよりもさらに寒く、本格的に冬の到来を告げる季節になったのだと感じる。
果たして、報酬が手渡される幾ばくかの期間、俺達は生きていけるのだろうか。
────それはそうと、先日。
俺は、アニムスからわけのわからん相談をされた。
内容を簡単に要約すると…
「自分をこんな目に合わせた連中に、復讐がしたいのであります。」
ということらしい。
どこかで聞いたようなことがあるその内容に、俺が聞く耳を持つはずもなく、何を言われても耳を塞いで実質的なアニムスからのその脅迫を全て無視した次第だ。
やるのなら、勝手にやれよ、ホトドギス…という話でね。
幸運なのは、その復讐対象にどうやら俺達のような人類は入っていない…ということである。
そこらへんを聞いても、どうせ今までと同じように具体的なことなんて何もわからないだろうし、曖昧にするだろうからやっぱりスルーで正解だと俺は思う。
少なくとも、ヒトに対して敵愾心を持っていない時点で、これからもカターユ達とは仲良く生活をしていけるはずだ。
俺は、適当にメチャクチャな理由を付けて、ムリヤリにカターユ達にしばらくこの子の面倒を見てもらうように話を付けた。
カターユ達はかなり困った表情をしていたが、まぁ大丈夫だろう。
そもそも、復讐がしたい…とはいっても、彼女の復讐対象は既にこの世に存在しないはずである。
だって、500年前のことだし。
だいたい、クリーンアップして記憶を失っているはずなのに、復讐云々を言ってくる時点で、あのロボっ子は絶対に俺達にウソをついているのだ。
そんな昔のことを、覚えているはずがないのだから。
そんなんで、俺が騙されるわけがないだろうに。
実際に、結局はこの子が俺をマスターと呼ぶ理由も全くわからないままだ。
そんなヤバイ存在を、俺が側に置くわけがないのだ。
ここらへんは、全会一致でエレナやユキノも賛成してくれた。
アニムスが、付いていきたいと言っている旨の話題を振ったら…
「絶対にイヤ!!!!!」
「絶対にイヤです!!!」
ということだったので、仕方がない。
やっぱり、仲間の意見は大切だから。
俺のせいではない、決して。
そういうことなので、カターユ達や使用人さん達、そしてアニムスが見送りに来てくれた中で、俺達は籠の中に乗り込もうとしている最中である。
護衛は、行きと同じでルディアとガイオ達が担当してくれることになった。
そして、その最中で俺は何故かアニムスに後ろから力強く抱きしめられていた。
何度か触れられたり、腕を組まれたりしてわかっていたが、ハッキリ言って彼女の皮膚感というか温もりは、人間のそれと全く変わらない。
この子を作った奴は、色々な意味で変態だと思う。
それもあって、これ以上の長居をすると絶対に彼女にヒトとしての感情移入をしてしまう自信があった。
到底、人形やキカイのようには思えない。
だから、早々に帰りたいわけだ。
本来なら、抱きしめて名残惜しんでくれるかわいい少女に対してうれしい気持ちや邪な気持ちも生まれるのだろう。
しかし、俺は現状そんな気持ちは一切湧かない。
素の握力がゴリラ並に存在する彼女にそれをやられても、命の危機しか感じないのだ。
案の定、身体中がきしむ音を立て、泡を吹きながら白目になって痙攣している俺を見て、ユキノが声を荒げて俺とアニムスを引き離そうとしていた。
「お前!!
いい加減にトータから離れろ!!!
トータも何を喜んで昇天しているのですか!?
あなた、本当にかわいい女の子なら誰でも良いのですね!!!」
これが喜んでいるように見えるのか?
死んじゃう…。
「アニムスは、未来永劫マスターと一緒にいるのです。
邪魔するな小便臭いガキが。
これから、希望に満ちた復讐の旅が始まる。
…と、アニムスが言っています。」
「お前の方が邪魔なんだよ腐れメスガキが!!!!!!
トータは、私のお兄ちゃんだぞ!!復讐も私の方が先だ!!パクるな!!!
そしてその後はエレナと3人で幸せな家庭を築くんだ!!!
フザけるな!!!!!!」
お前がフザけるな。
俺がいつどこでそんな約束をしたというのか。
こいつらの未来設計は、一体全体どうなってどこまで進んでやがる。
ちなみに、こんな状況でもきちんと《ゼロ》を勝手に使っているアニムスに、俺やユキノはもちろん、周りの憲兵さん達も成す術がなかった。
おかげで、エレナは借りパクしてきたパジャマで髪の毛を隠して、目を瞑る羽目になっている。
あと、カターユや憲兵さん達はアニムス周りのことで、実は色々と誤解をしている節がある。
しかし、俺はそれをあえて黙っていることにした。
これは、俺なりの自己防衛である。
まずカターユ達は、彼女を守っていた障壁を解いたのはエレナだと勘違いをしている点だ。
これは、俺の立場やギルド内ランキングを考えても当然の帰結である。
そもそも、俺が障壁を解いてしまったところを目撃したのはエレナとユキノだけであり、その事情を知っているのも直接的に《ゼロ》を食らった当事者のアニムスだけだ。
エレナも、さすがに今回の事件は疑問に思うところが多かったのか、天界やチートスキル周りに関わりそうなことは上手く話を誤魔化してくれていた。
そして、その肝心の《ゼロ》のことである。
このスキルも、500年以上も前に存在していたアニムスの、現代とは変わった超強力なスキルであるとカターユ達は考えているようだった。
俺がなぜそんなことを言えるのかというと、それは俺がカターユと執事のダニエル氏の話を何度かコッソリ盗み聞きしていたからである。
断片的であったが、聞こえてきたその内容でほぼ間違いないといえる。
カターユ達の誤算は、俺達を侮っていたことだ。
エレナはスキル系なら何でもできるし、ユキノは魔法系のプロフェッショナルである。
そういうことで、エレナからは『忍者御用達』らしい超高度な潜伏スキルを使ってもらい、ユキノからは『暗殺御用達』らしい視力と聴覚を大幅に向上できる補助魔法を使ってもらった。
そのおかげで、俺は彼らがなんだか怪しい密談をしているところを何度も目撃したわけである。
まぁ、内容に関しては何を言っているのかほぼわからないことだらけだったが。
そして、その後にアニムスにも話を合わせてもらえるように協力を要請した。
何を聞かれても"それはアニムスの力だよー"と、無表情かつどこかのギャルみたいな口調で言っていたので、その点は彼女にも感謝をしたい。
もちろん、こんな行動をとったのにも理由がある。
この点に関しても、エレナやユキノには既に許可をとっている。
つまり、カターユやアニムスを俺は心の底から信用しているわけではないからである。
自己防衛として、こちらとしてもきちんと武器になる情報や盾が欲しかったのだ。
ただ、その時の約束でアニムスに『気が向いたら家に連れていく』という約束をしていたので、その約束を裏切られたと思って内心では激ギレしているのかもしれない。
気が向いたらって言ったのだが、そんなことは彼女には関係ないのだろう。
というか、協力させるだけ協力させておいて、俺達はコソドロのように帰宅するわけだから、彼女からしたらとんでもない裏切りである。
しかし、アニムスに対する罪悪感はない。
なぜなら、ウソや裏切りはアニムスも同じだからである。
このロボっ子、絶対にウソついてるからね。
ようは、お互い様なのだ。
そして残念なことに、俺もそろそろ意識が遠くなってきた。
「アニムス、そろそろトータ君を解放してやってくれないか?」
そう言ったのは、この館の領主であるカターユだった。
遅いよ…なんで今まで黙ってみてたの?
俺を殺す気か。
「大丈夫だよ。
離れるのは、ほんの一瞬だけだ。私が保証する。
すぐに、また彼らに会えるよ。」
とてつもなく、不気味なことをいう領主様。
エレナもユキノもアニムスも、そしてこの領主カターユも、なぜ他人の意見というか俺の意見を一切聞かずに話を進めていくのだろうか。
上に立つもの、能力のあるものは周りの意見を聞いて汲み取っていくことも大切だろうに。
いつもいつも、何故か俺はその輪の中に最初から入っていない状態である。
「その約束は、本当でありますか?」
「本当だ。
ウソを付いたら、キミが私を処分してくれて構わないよ。」
カターユは、笑顔で応えた。
俺は、ボロの街に帰ったら本格的に別の街に移住することを考えていた。
というか、最初からそうすれば良かったのかもしれない。
それなら、俺が知らないところで勝手に話が進もうと関係ないはずである。
「…了解しました。」
力を抜いて解放してくれたアニムスは、何だか悲しそうに見えた。
リルもそうだが、キカイというのは表情に出さないだけで感情が汲み取りやすいというか。
会話は通じないが、意思疎通はできる動物のようである。
俺は、前世で飼っていた柴犬の十兵衛のことを思い出していた。
まぁ、人間的な意思がある時点で動物やペットと同列視するのは極めて失礼な気もするが。
「げほっ!げほっ!
はぁ…助かった。
ありがとうございます、カターユさん。」
「お礼を言うのはコチラだよ。
君の…いや君達のおかげで私としては非常に多くの収穫があった。
リルのことを含めてね。
いくらお礼を言っても、足りないくらいだ。」
肝心のスパイには逃げられたというのに、悠長な人である。
この人は、あの女キカイに殺されかけたという自覚がないのだろうか。
「少しでも助けになれたのなら、何よりです。
本当に長い間、お世話になりました皆さん。
アニムスも、約束は忘れてないからさ。
そのうち、遊びに来いよ。」
「…マスター、アニムスは毎日マスターのことを考えています。
裏切ったら後で酷いのであります。
首輪と縄でくくり付けて、二度とアニムスの目から離れないようにします。
…と、アニムスが言っています。」
なんでこの子は、こんなにも俺に執着するの…?
出会ったばっかりなのに、恐怖でしかない。
この子に何もしてないじゃん、俺。
「ま、まぁ約束だからな。
そのうちな。」
「そのうちなんて、ないですよ。
さっさとくたばれメスガキ。」
と、綺麗な中指を立てて挑発をするユキノであった。
前世の海外のマフィア以外で、初めてそんなことを堂々とするやつをみた。
それを見たアニムスは、ユキノの顔に無表情で思いっきりツバを吐いていた。
どれだけお互い嫌いなんだよ。
また一触即発という名のビックバンが起こりそうだったので、俺達はすぐに二人を引き離した。
そうしてお別れを告げた俺達は、早々に籠に乗り込み、領主の館を後にしたのだった。
本当に、長かった…。
なんか、1年くらいあそこで色々とあったような気にすらなってくる。
それにしても、色々とあり過ぎて正直、これからのことや集まった情報を整理しないと話が進まないと感じる。
道中、エレナやユキノの意見も聞くことにしよう。
カターユの館で諸々の話の決着がついた俺達は、ひとまずボロの街にようやく帰ることになった。
結局、報酬はギルドを通して俺達に渡す…という形を取るようだ。
冒険者である俺達を半ば強制的にギルドから連れ出した事に対する、謝罪と体裁の意味を込めたのだろう。
そういえば、この館にいる期間が長すぎて、俺達はそもそもギルドから直通でここまで来たのだと言うことをスッカリ忘れていた。
あの後、ギルドではどういう対応をしていたのだろう。
ケインやエイベル、テロッサなどみんな元気だろうか。
外に出ると、あの時味わった寒さよりもさらに寒く、本格的に冬の到来を告げる季節になったのだと感じる。
果たして、報酬が手渡される幾ばくかの期間、俺達は生きていけるのだろうか。
────それはそうと、先日。
俺は、アニムスからわけのわからん相談をされた。
内容を簡単に要約すると…
「自分をこんな目に合わせた連中に、復讐がしたいのであります。」
ということらしい。
どこかで聞いたようなことがあるその内容に、俺が聞く耳を持つはずもなく、何を言われても耳を塞いで実質的なアニムスからのその脅迫を全て無視した次第だ。
やるのなら、勝手にやれよ、ホトドギス…という話でね。
幸運なのは、その復讐対象にどうやら俺達のような人類は入っていない…ということである。
そこらへんを聞いても、どうせ今までと同じように具体的なことなんて何もわからないだろうし、曖昧にするだろうからやっぱりスルーで正解だと俺は思う。
少なくとも、ヒトに対して敵愾心を持っていない時点で、これからもカターユ達とは仲良く生活をしていけるはずだ。
俺は、適当にメチャクチャな理由を付けて、ムリヤリにカターユ達にしばらくこの子の面倒を見てもらうように話を付けた。
カターユ達はかなり困った表情をしていたが、まぁ大丈夫だろう。
そもそも、復讐がしたい…とはいっても、彼女の復讐対象は既にこの世に存在しないはずである。
だって、500年前のことだし。
だいたい、クリーンアップして記憶を失っているはずなのに、復讐云々を言ってくる時点で、あのロボっ子は絶対に俺達にウソをついているのだ。
そんな昔のことを、覚えているはずがないのだから。
そんなんで、俺が騙されるわけがないだろうに。
実際に、結局はこの子が俺をマスターと呼ぶ理由も全くわからないままだ。
そんなヤバイ存在を、俺が側に置くわけがないのだ。
ここらへんは、全会一致でエレナやユキノも賛成してくれた。
アニムスが、付いていきたいと言っている旨の話題を振ったら…
「絶対にイヤ!!!!!」
「絶対にイヤです!!!」
ということだったので、仕方がない。
やっぱり、仲間の意見は大切だから。
俺のせいではない、決して。
そういうことなので、カターユ達や使用人さん達、そしてアニムスが見送りに来てくれた中で、俺達は籠の中に乗り込もうとしている最中である。
護衛は、行きと同じでルディアとガイオ達が担当してくれることになった。
そして、その最中で俺は何故かアニムスに後ろから力強く抱きしめられていた。
何度か触れられたり、腕を組まれたりしてわかっていたが、ハッキリ言って彼女の皮膚感というか温もりは、人間のそれと全く変わらない。
この子を作った奴は、色々な意味で変態だと思う。
それもあって、これ以上の長居をすると絶対に彼女にヒトとしての感情移入をしてしまう自信があった。
到底、人形やキカイのようには思えない。
だから、早々に帰りたいわけだ。
本来なら、抱きしめて名残惜しんでくれるかわいい少女に対してうれしい気持ちや邪な気持ちも生まれるのだろう。
しかし、俺は現状そんな気持ちは一切湧かない。
素の握力がゴリラ並に存在する彼女にそれをやられても、命の危機しか感じないのだ。
案の定、身体中がきしむ音を立て、泡を吹きながら白目になって痙攣している俺を見て、ユキノが声を荒げて俺とアニムスを引き離そうとしていた。
「お前!!
いい加減にトータから離れろ!!!
トータも何を喜んで昇天しているのですか!?
あなた、本当にかわいい女の子なら誰でも良いのですね!!!」
これが喜んでいるように見えるのか?
死んじゃう…。
「アニムスは、未来永劫マスターと一緒にいるのです。
邪魔するな小便臭いガキが。
これから、希望に満ちた復讐の旅が始まる。
…と、アニムスが言っています。」
「お前の方が邪魔なんだよ腐れメスガキが!!!!!!
トータは、私のお兄ちゃんだぞ!!復讐も私の方が先だ!!パクるな!!!
そしてその後はエレナと3人で幸せな家庭を築くんだ!!!
フザけるな!!!!!!」
お前がフザけるな。
俺がいつどこでそんな約束をしたというのか。
こいつらの未来設計は、一体全体どうなってどこまで進んでやがる。
ちなみに、こんな状況でもきちんと《ゼロ》を勝手に使っているアニムスに、俺やユキノはもちろん、周りの憲兵さん達も成す術がなかった。
おかげで、エレナは借りパクしてきたパジャマで髪の毛を隠して、目を瞑る羽目になっている。
あと、カターユや憲兵さん達はアニムス周りのことで、実は色々と誤解をしている節がある。
しかし、俺はそれをあえて黙っていることにした。
これは、俺なりの自己防衛である。
まずカターユ達は、彼女を守っていた障壁を解いたのはエレナだと勘違いをしている点だ。
これは、俺の立場やギルド内ランキングを考えても当然の帰結である。
そもそも、俺が障壁を解いてしまったところを目撃したのはエレナとユキノだけであり、その事情を知っているのも直接的に《ゼロ》を食らった当事者のアニムスだけだ。
エレナも、さすがに今回の事件は疑問に思うところが多かったのか、天界やチートスキル周りに関わりそうなことは上手く話を誤魔化してくれていた。
そして、その肝心の《ゼロ》のことである。
このスキルも、500年以上も前に存在していたアニムスの、現代とは変わった超強力なスキルであるとカターユ達は考えているようだった。
俺がなぜそんなことを言えるのかというと、それは俺がカターユと執事のダニエル氏の話を何度かコッソリ盗み聞きしていたからである。
断片的であったが、聞こえてきたその内容でほぼ間違いないといえる。
カターユ達の誤算は、俺達を侮っていたことだ。
エレナはスキル系なら何でもできるし、ユキノは魔法系のプロフェッショナルである。
そういうことで、エレナからは『忍者御用達』らしい超高度な潜伏スキルを使ってもらい、ユキノからは『暗殺御用達』らしい視力と聴覚を大幅に向上できる補助魔法を使ってもらった。
そのおかげで、俺は彼らがなんだか怪しい密談をしているところを何度も目撃したわけである。
まぁ、内容に関しては何を言っているのかほぼわからないことだらけだったが。
そして、その後にアニムスにも話を合わせてもらえるように協力を要請した。
何を聞かれても"それはアニムスの力だよー"と、無表情かつどこかのギャルみたいな口調で言っていたので、その点は彼女にも感謝をしたい。
もちろん、こんな行動をとったのにも理由がある。
この点に関しても、エレナやユキノには既に許可をとっている。
つまり、カターユやアニムスを俺は心の底から信用しているわけではないからである。
自己防衛として、こちらとしてもきちんと武器になる情報や盾が欲しかったのだ。
ただ、その時の約束でアニムスに『気が向いたら家に連れていく』という約束をしていたので、その約束を裏切られたと思って内心では激ギレしているのかもしれない。
気が向いたらって言ったのだが、そんなことは彼女には関係ないのだろう。
というか、協力させるだけ協力させておいて、俺達はコソドロのように帰宅するわけだから、彼女からしたらとんでもない裏切りである。
しかし、アニムスに対する罪悪感はない。
なぜなら、ウソや裏切りはアニムスも同じだからである。
このロボっ子、絶対にウソついてるからね。
ようは、お互い様なのだ。
そして残念なことに、俺もそろそろ意識が遠くなってきた。
「アニムス、そろそろトータ君を解放してやってくれないか?」
そう言ったのは、この館の領主であるカターユだった。
遅いよ…なんで今まで黙ってみてたの?
俺を殺す気か。
「大丈夫だよ。
離れるのは、ほんの一瞬だけだ。私が保証する。
すぐに、また彼らに会えるよ。」
とてつもなく、不気味なことをいう領主様。
エレナもユキノもアニムスも、そしてこの領主カターユも、なぜ他人の意見というか俺の意見を一切聞かずに話を進めていくのだろうか。
上に立つもの、能力のあるものは周りの意見を聞いて汲み取っていくことも大切だろうに。
いつもいつも、何故か俺はその輪の中に最初から入っていない状態である。
「その約束は、本当でありますか?」
「本当だ。
ウソを付いたら、キミが私を処分してくれて構わないよ。」
カターユは、笑顔で応えた。
俺は、ボロの街に帰ったら本格的に別の街に移住することを考えていた。
というか、最初からそうすれば良かったのかもしれない。
それなら、俺が知らないところで勝手に話が進もうと関係ないはずである。
「…了解しました。」
力を抜いて解放してくれたアニムスは、何だか悲しそうに見えた。
リルもそうだが、キカイというのは表情に出さないだけで感情が汲み取りやすいというか。
会話は通じないが、意思疎通はできる動物のようである。
俺は、前世で飼っていた柴犬の十兵衛のことを思い出していた。
まぁ、人間的な意思がある時点で動物やペットと同列視するのは極めて失礼な気もするが。
「げほっ!げほっ!
はぁ…助かった。
ありがとうございます、カターユさん。」
「お礼を言うのはコチラだよ。
君の…いや君達のおかげで私としては非常に多くの収穫があった。
リルのことを含めてね。
いくらお礼を言っても、足りないくらいだ。」
肝心のスパイには逃げられたというのに、悠長な人である。
この人は、あの女キカイに殺されかけたという自覚がないのだろうか。
「少しでも助けになれたのなら、何よりです。
本当に長い間、お世話になりました皆さん。
アニムスも、約束は忘れてないからさ。
そのうち、遊びに来いよ。」
「…マスター、アニムスは毎日マスターのことを考えています。
裏切ったら後で酷いのであります。
首輪と縄でくくり付けて、二度とアニムスの目から離れないようにします。
…と、アニムスが言っています。」
なんでこの子は、こんなにも俺に執着するの…?
出会ったばっかりなのに、恐怖でしかない。
この子に何もしてないじゃん、俺。
「ま、まぁ約束だからな。
そのうちな。」
「そのうちなんて、ないですよ。
さっさとくたばれメスガキ。」
と、綺麗な中指を立てて挑発をするユキノであった。
前世の海外のマフィア以外で、初めてそんなことを堂々とするやつをみた。
それを見たアニムスは、ユキノの顔に無表情で思いっきりツバを吐いていた。
どれだけお互い嫌いなんだよ。
また一触即発という名のビックバンが起こりそうだったので、俺達はすぐに二人を引き離した。
そうしてお別れを告げた俺達は、早々に籠に乗り込み、領主の館を後にしたのだった。
本当に、長かった…。
なんか、1年くらいあそこで色々とあったような気にすらなってくる。
それにしても、色々とあり過ぎて正直、これからのことや集まった情報を整理しないと話が進まないと感じる。
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