俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指

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第4章

知らない人に付いて行ってはいけない

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「貴公がシラズ・トータか!?
随分と探したぞ!!」

俺は、ギルドにやってきた金髪でズタボロの金色の鎧を着ている青年に声をかけたのだが、声をかけたのを後悔するほどデカイ声での返答があった。

見た目は、俺と大差ない背丈なのだがやたらと尊大である。
多分、年齢も俺と大差ない。

「あのー。
俺に何か用ですか?」

「無論だ!!
用がなければ、わざわざこんなところにまで来るはずが無かろう!!!!」

なるほど。
俺は、この時点でこの男に敬語とか必要ないと確信した。

「で、なに?」

「僕と一緒に、ハミの街まで同行してもらいたい!!!」

「……ハミの街?
なにそれ。」

聞いたことも見たこともない街の名前だった。
というか、俺はこのボロの街以外の街に行ったことすらないわけで。

「ハミの街を知らないのか!!?
なんという浅薄!!!
よし、わかった!!!!
説明しよう!!!!!!!」

「え?」

「ハミの街とは、このカナン大陸の物流を担っている巨大な街である!!!
偉大なる領主マーニ卿が管理しているその街は、大都市マッチェムとの連携地点としても重宝されており、数々の商人や冒険者が訪れている!!!!!
ゆえに、そこに点在しているギルド《エクリプス》の支部も極めて重要であり────!!!!!!!!」

いきなり、とんでもない音量で講釈を垂れ流し始めた。

「うるせぇええええええええ!!!!
でっけぇ声を出すんじゃねぇえええええ!!!!!!!!」

「いきなり怒鳴るんじゃないわよ!!!!!!!
ゆっくりご飯も食べられないでしょーが!!!!!!!!!!!」

また冒険者からの怒号が飛び交い、危うく胸倉を掴みそうになっていた。
というか、もう全く関係のない冒険者同士でケンカしそうになっていた。

「ちょちょ……!!!!
みんな落ち着けって!!!!!!!!」

「落ち着いていられるかぁあああ!!!!!!!
だいたい、忘却!!!!!!
コイツはお前に用があるんだろうが!!!!!!!
お前がさっさと何とかしろ!!!!!!!!!!!」

…と、言われましても。
俺が呼んだわけでもないし、頼んだわけでもないわけで。

なんで、いつもいつも俺に押し付けてくるんだよ。

「あのさ、えーと…。
もう少しさ、小さい声で話せない?」

「何故だ!!!?
人様の家に言ってゴニョゴニョと小さい声では、何を言っているかわからないしコチラの意図が伝わらないだろう!!!!!
言いたいことを伝えないと、誤解を生むではないか!!!!
そう習った!!!!!!!!」

誰にだよ。
教えたやつ出て来いよ。

「いやほら。ここギルドだけど食堂でもあるし。
キミもさ、ご飯を食べている最中に頭の上でゴチャゴチャ言われたら不快じゃないか?
ツバ飛んだりするかもしれないだろ?
周り見てみなよ。みんな食事してるだろ?」

「…む。
確かに、それは一理あるな。
これは失礼した。」

わけのわからん奴である。
ちゃんと言うこと聞くのかよ。

これを機に、俺達はテーブルの一角で腰をかけた。

「それで、そのハミの街?とやらがあるのはわかったけど、なんで俺がそこに行かなきゃなんないの?」

「事情は僕にもわからん。
連れて来いと言われただけだからな。
なので、付いてきてほしい。」

イヤに決まっているだろう。
事情も知らないって、どんな伝令係だ?
せっかく、カターユの館から帰ってきてゆっくりしていたのに。

「さすがに、事情も分からんのに行くことはできないよ。
悪いけど、こう見えて俺も忙しいんだ。」

「いや、それは困る。
なんとかしてくれ。」

「なんとかと言われても…。
そもそも、行きたくないもん俺。」

「行きたくない?行きたくないとはなんだ?
病気か?やんごとなき事情でもあるのか?」

しつけぇ…。
察しが悪すぎる。

なんとなく、この男が嫌われている理由がわかってきた。

「いや、単純に動きたくないんだよ。
寒いじゃん。」

「なんだそれは!?僕だって寒いんだぞ!
だけど、みんな歯を食いしばって頑張っているんだ!!!」

「寒いんなら、帰ってゆっくり休みなよ。
俺、何言われても動く気ないから。」

「な…なんて我儘な男なんだ……!!
キミが来てくれないと、僕が怒られるんだぞ!!」

知らねーよ。
だからなんだよ。

「ていうか、俺まだキミの名前すら聞いてないんだけど。」

「……!!
こ、これは失礼した!!!!
僕はルクス・マ……。
いや、ルクスだ。ただの。
ルクスと呼んでくれ。」

「俺は知ってると思うけど、シラズ・トータ。
よし、これで俺は満足した。
それじゃ。」

「いやいやいや!!!
待ちたまえ!!!!!!!!」

「なんだよ?
もう話も終わったじゃん。」

本当に、俺から話すことはもう何もない。
できれば、二度と関わりあいたくもない。

「だから、僕は君を連れて行かないとダメなんだよ!!!!
キミが『うん』と言うまで、僕は諦めないぞ!!!!!!」

…何が目的なんだよ。
激しくメンドクセェ…。

……仕方ない。
この手は使いたくは無かったのだが…。

「…はぁ。わかったよ。本当のことを言う。
正直、あんまり人には言いたくないことなんだけど。
聞いてくれるか?
リスク。」

「ルクスだ。」

俺は、頭の中で状況を整理し、言うべきことを言うために息を整えた。
そして、彼に話をし始める。

「…俺さ、実は病気を患ったおばあちゃんと一緒に住んでるんだよ。
今年で50歳になる。」

「え……!?
そ、そうなのか?」

「うん。ちょっと記憶力が乏しくなっててな…。
でさ、そのおばあちゃんが癇癪持ちでもあるんだよ。
俺が側にいないと、すぐに暴れるんだ。
暴れだすと止まらない…皆を傷つけるような行動をとることもある。
時々、俺を殴ったりすることもあるかな。」

「大変だな…それは。」

「でも、寂しがりでもあるから放っておけないんだよ。
そんな中で最近になって、ようやく2人で一緒に暮らせるようになったんだ。
俺達の事情を知った優しい人から、一緒に生活できる家を貰ってね。
だから、おばあちゃんにはしばらく穏やかな時を過ごしてもらいたい思ってる。」

「良いことじゃないか。」

「だろ?
しかし、俺がいまこの街から離れたらどうなると思う?
おばあちゃんが1人になってしまう。」

「…そ、それは……。」

「だから、本当に申し訳ないんだが。
俺はハミの街とやらには行けないんだ。
いや、行きたくてもいけない…と言った方が正しいかな。
許してほしい、クリス。」

「ルクスだ。」

などと、口からスラスラと言葉が出てしまった…。
一度口に出すと、流水のように止めどなく言葉が出てきた。

仕方がない。
だって、本当に行きたくないんだもの。

「……そうか。
君も、本当に大変な日常を送っているのだな。
僕は、君を大きく誤解していたようだ。」

……信じてくれたようである。
マジかよ。

「仕方ないよ。
俺、ランキング50020位だし。
ウンコ以下だし…。」

「そ、そんなことはないぞ!!
おばあさんのために頑張っているのだろう?
素晴らしいことじゃないか!!!」

「そうかな?」

「そうさ!
…よし、わかった!!
今回の一件は、僕の方で依頼主に取り繕っておこう。
迷惑をかけてすまなかったな。」

「わかってくれて、ありがとう。
じゃあ、俺はもう行くよ。
またどこかで会えたらいいな、ラスク。」

「ルクスだ。」

そうして、俺はそのまま何事もない顔でギルドを出た。
これで、面倒な展開とはオサラバである。
もう二度と会うこともないだろう。

俺は、1人で寒々とした街路を歩いていた。

それにしても、本当に何だったのだろう。
結局、彼が何をしに来たのかもわからなかった。

依頼人に…とか言っていたから、アイツ本人ではなく誰かからのクエストで俺達のところに来たということだ。
ますます、面倒である。

どうせ、逆恨みか何かに決まっている。

「……家に帰って、俺も家具の手入れを手伝おうかな。」

思ったよりも早く帰れそうなので、ユキノやアニムス達とも合流できるかもしれない。
というか、よくよく考えてみればエレナに全ての配置を任せると、俺の部屋が奴の隣になってしまうことに気づいた。

それだけは、阻止せねばなるまい。

「にしても、寒いなぁ…本当にテント生活から抜け出せて良かっ───。」

俺が、独り言を言っている時であった。
街路の路地裏方面から、なんだか呻き声のようなものが聞こえた。

「……?
なんだ?」

雪が積もる、真冬の路地裏。
時間はまだまだお昼…そして平日。

まともな誰かが何かをやっている…なんてことはないだろう。

行く必要はなかったのかもしれないが、好奇心が勝ってしまった。
俺は、ついつい路地裏方面に歩き出し、薄暗い建物の間の中をスリ抜けて行った。

本当に、こうした軽率な行動はとるべきではないと俺は後から思うのだが、まさしく後悔しても遅いのである。

到着したそこには────。

ボッコボコに殴られたであろう誰ともわからない連中と、それをやったであろうユキノとアニムスが、悪魔のような笑顔で立ち尽くしていた。
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