俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指

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第4章

人気者はツライ

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同日。

結局、あの後の俺達はエレナを除いて眠ることができず、そのまま起きて家の中を整理していた。
謎の男ことルクスからおばあちゃん認定をされたエレナは、完全に二度寝という名の不貞寝を決め込んでいたのだが、その間にユキノやアニムスに手伝ってもらい、先延ばしにしていた館の中の付帯設備を綺麗に整えていったという流れ。

まぁ、先日は1人でエレナが頑張っていたのでそのことを考慮しても、今日は存分に休んでもらっても構わないと思った次第である。

というか、おばあちゃん認定をされたのもほぼ俺のせいなわけで。
バレたら何をされるかわからない。
寝てすべてを都合よく、忘れてもらうことにした。

そんなわけで、ユキノとアニムスの協力をもとに家の中を充実させていった所存である。

「だいぶ作業も終わりましたねー。」

「だな。2人ともありがとう。
マジで助かったよ。」

専門知識が豊富なユキノと、それを実践的な技術に繋げられるアニムスのコンビは、正直魔法や魔道具周りに関してほぼ無敵で隙が無かった。
特に、ユキノは知識があっても技術が、アニムスの方は技術はあっても現代的な部分に関して知識はまだまだ乏しいので、そこをお互いが上手く補完してあげる形で理想的に見えた。

初めからこうやって仲良くできていたら、俺もあんなに苦労することはなかっただろうに。
まぁ、ああいうことがあっての今なのかもしれないが。

「お役に立てたのなら幸いです、マスター。」

「エレナと2人で生活をしていた時は、トラブルはマジで全部パワーで解決だったからなぁ…。
こんなに綺麗に物事を解決できると感動するよ、ほんと。」

実際に、あれだけ暗かった家の中には綺麗にランプが灯っている。
魔道具が魅力的なのは、魔力の供給さえ定期的に行えば現代的な光熱費が発生しないという点である。
動力が存在しない分、電気代などの現実的なコスト面の圧迫がないのだ。
これは、キッチン周りのコンロやお風呂周り等々にもいえる。

正直、個人的にはこれが一番うれしい。
これだけバカでかい家だと、光熱費だけでも跳ね上がりそうだったからな。

俺達は、一仕事を終えて一服をするためにリビングにやってきて、そこでお茶を飲んでいた。

「それにしても、私達ってそんなにも魅力的なのですかね?
最近、誰かから注目されているとか、因縁を付けられているとか、呼び出しを食らっているとか、そんなのばっかりじゃないですか?」

「まぁ、変な意味で悪目立ちしちゃっているのは事実だろうな。
でも俺、そこらへんもずっと言ってただろ?
そういう目立ち方は、今後の俺達の活動に支障をきたすから絶対に良くないって。
エレナにも、マジでずっと言ってたんだがなぁ…。」

「確かに…。でもまさか、こんな短期間でここまでとはって感じじゃないですか?
正直、想像していたより遥かに面倒ですねぇ…。」

「この街のギルドや冒険者が小規模で、それがゆえにお前らみたいな稀有な才能が立て続けに出ちゃったっていうのも、注目される理由なんだろうな。
才能がある人間はやっぱり注目されて、周りから圧迫されるから。
そこらへんは、ユキノが一番わかっているんじゃないか?」

いつかの時のように、またユキノがキレ散らかす未来があるかもしれない。
まるで追い詰められたティラノサウルスのように、周囲を威嚇した挙句に全てを蹂躙していたあの時のように…。

そうなると、今の俺ではどうすることもできない。
またエレナ達と一緒に、お尻を真っ黒に燃やされるかもしれない。

「ですねぇ…考えただけでもムカムカしてきました。
何が腹立つって、やっぱりああいう連中って本人は隠れて下っ端に何かをさせるところなのですよね。
自分で向かってくる度胸も根性もないくせに、なんでそんなくだらないことをするのか。
今はトータ達も一緒にいるから、皆に危害が及ぶかもしれないのが余計にぶっ殺したくなりますよ。
…あぁヤバイ。本当に腹立ってきた。」

「頼むから、深呼吸してゆっくり紅茶でも飲んでくれ。」

俺からすると、常に着火しやすい導火線が見えているのに、わざわざそこに火を付けようとしてくるドアホの気が知れない。

いったい、誰がその火を消すと思っているのか。

「アニムスは、この街のギルドやら事情やらもよくわからないのでさっぱりであります。
そもそも、ギルドが何なのかも最近になってわかってきたところなのです。」

「そういや、アニムスの時代にギルドは無かったんだよな。」

「はい。
生きるのに必死で、仕事を斡旋する暇があったらソイツをぶっ殺して金銭を奪い取ったほうが手っ取り早いとか、そういう考えが主流の時代であります。」

「いやいやいや…サラッととんでもないことを言うなお前…。
世紀末かよ。」

「早朝にやってきたあのしょーもない小童も、外の街からやってきたギルドの冒険者なのでありますよね?」

「そうだよー。
アニムスが来る前から、エレナやユキノは色々と有名だったからな。
特に冒険者内で。
それで、色々な支部から目の敵にされてんだよ。
まぁいわゆる、嫉妬心ってやつだな。
っつっても、外の支部連中からも注目されてるって話は、俺も最近になって聞いたんだが。」

まぁ実際に、こんな短期間で破竹の勢いで駆け上がっていくと、周りからすると黙っていられないこともあるのだろう。
エレナのランキングが出た当初ですら、目の敵にされたのだから。

比較的穏やかな方だったボロの街の中ですらそうだったのだから、規模の大きな外の連中ならいわずもがな…である。

「はぁ…エレナもユキノもヤンチャが過ぎるのであります。
もう少し、謙虚でお淑やかに生活をしなさい。
マスターにあまり迷惑をかけないように。」

「お・ま・え……!!
に、だけは言われたくないです……!!!」

そう言って、ユキノがアニムスの頬を思いっきり両手で引っ張っていた。
まぁ少なくとも、こうやって仲間内で軽口が叩けるようになったのは良いことなのだろう。
少しは、ストレス解消にもなるはずだ。

そのまま、頬から両手を離したユキノはアニムスを抱きしめて言葉を続けた。

「でも、これからこういうのが続く事を考えると早めに対処した方が良いのも事実ですよ。
ハッキリ言って、冒険者が他の街に赴くことは普通のことですし、検問時点で敵意がないことを示せば、今回みたいにアッサリと街に入ることもできると思います。」

「それなんだよなぁ…。
カターユさん達も言っていたけど、外からやって来た人達を逐一選別するってかなり無理筋だし。
一見してまともそうだったら、特に問題なく俺達の元に辿り着けちゃうんだろうな。
かといって、俺達から出向くとアイツらみたいな構ってちゃんが余計に調子に乗りそうだし……。
うーん……どうするべきか。」

「やっぱり、個人的には私達に関わるとどうなるのかを見せつけるのが一番だと思います。
考えてみれば、今まではボロの街内だけでそういう評判だっただけで、外で同じようなことしたことは無かったですし。
手始めに、ハミの街でしたっけ?
そこでやりましょうか。」

「…お前は、これ以上の悪評をさらに広めるつもりか。」

そんなことをして、本当に誰とも俺達に絡んでくれなくなったらどうするのか。

俺達…というか、俺の最終目標はこの異世界の救出であり、そのためには情報収集が不可欠なのだ。
そのためには、ある程度のヒトとの接触は必ず絶対に不可欠である。
悪評だけが広がると、そんなことすらできなくなってしまう。

実際に、現状みたいなことになると情報が偏りまくって、今回みたいにハッキリと関わりたくないことばかりが増えてしまうのが事実…。
そして、その問題解決のために時間を追われて本来の目的を見失ってしまう。

それだけは御免だ。本当にムダな時間になってしまう。

かといって、コチラが無視しても向こうはちょっかいを出してくる。
そこらへんのバランスが、激しく難しいのだ。
アチラを立てればコチラが立たず…本当にどうしよう。

「まぁ、なんにせよ。
特に、お前らは才能の塊みたいなもんだから、外で歩くときは本当に気を付けろよ。
ボロの街の中は比較的安全だけど、それ以外はどんな妨害があるかわからんからな。」

「大丈夫であります。
やられたらやり返すだけなのです。」

「同感ですね。
二度と逆らえないようにしてやりますよ。」

物騒な宣言をする二人を見て、考えてみれば一番危ういのは一番弱い俺なのではないか?と気づいた。
果たして、俺はこんな状況で生き残れるのだろうか…。
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