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いい香りするね。

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「なるほど、こうですか?」

「そうそう、分かってきたじゃん」

「えへへ」


先輩に褒められると、なんかすごく嬉しい。


「じゃあ、ここはこうですか?」


次の問題を解いて先輩に見てもらうために顔を上げると、先輩と目が合う。


───ドキッ。


「え、先輩…?」


解いた問題を見てもらいたいのに…。

先輩は私と目線を絡ませたまま、微動だにしない。


「ど、どうかしましたか?」


先輩にそんなに見られると恥ずかしい。

思わず目をそらしそうになった時、先輩は口を開いた。


「ななちゃんっていい香りするね」

「えっと…」


なに、なに?なに!?

え、どーいう意味?!

プチパニック状態に陥りながらも、できる限り平常心を装う。


「あ、ありがとうございます」


先輩の方が、もっといい香りがしますけどね。

なんて、口が滑っても言えないけど。


「シャンプー、何使ってるの?」


そう言って今度は私の髪の毛を触ってくる由城先輩。


ひえー!


触られた瞬間、背筋がピーンと伸びる。

誰か、た・す・け・て…!


「それより問題をですね…」


ドキドキしすぎて心臓がパンクしそう。

先輩はそんな私を知ってか知らずか、私の髪の毛を触りながら呟く。


「勉強もうよくない?」


あ───。


そっか。

もう結構時間たったし、先輩も早く帰りたいよね。

甘えすぎちゃった。

なんか私一人でドキドキしちゃって恥ずかしい。


「すいません!もう一人でできますので、先輩は帰って下さい」

「は?」

「え?」


違うんですか?

早く帰りたいって意味じゃないんですか?


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