カレカノごっこ。

咲倉なこ

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嫉妬。

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授業中も、なんか上の空で。

いつの間にか委員会も終わっていた。

そういえば渉が一緒に帰ろうって言ってたな。

筆記用具を持って、教室にカバンを取りに行く。

教室のすぐ近くまで来ると、教室の中から話し声が聞こえてきた。

聞き覚えのある声だった。


「でさー、昨日友達と買い物行ったんだけど」

「うん」

「蓮が彼女と歩いてて!」

「蓮に会ったの?」

「そうなの!蓮、彼女の自慢めちゃくちゃしてくるじゃん」

「そうだね」

「だからどんな彼女かなって見てみたら、普通に可愛くて」

「可愛かったんだ」


仲が良さそうな話声。

女の子はテンションが高くて、男の子は、女の子の話をうんうんと聞いている。


伊吹くんが女の子と2人きりで話してる。

それだけで、血の気が引いていく思いだった。


私の代わり、もう見つけたの?


デートをやめようって言ったのは私。

だからこんなショックを受けてるなんておかしい。

確かに伊吹くんは、自分に関心のない女の子だったら誰でもいい感じだった。

次に相手を見つけてデートしても、全然おかしくない。


だから私がこんなこと思うのは間違ってる。

私は自分のほっぺたを両手でパチンと叩いた。


今、入っていくの正直気まずい。

けど話はすぐに終わりそうにない。

部外者の私が、ずっとここで話を聞くのも申し訳ない。

だから、意を決して教室に入っていった。


「あ、井上さんだ」


私の存在なんて無視してくれていいのに…。

伊吹くんの声で、女の子は振り向いた。

綺麗なロングヘアが似合う、美人な女の子だった。


「…あ、邪魔してごめんねー、続けて続けて」


2人の会話の邪魔はしたくない。

伊吹くんの隣の席にあるカバンを取って、すぐにその場を離れる。


教室から出ると、今まで無意識で止めていた息を思いっきり吸い込んだ。

なんでこんなに意識しちゃってるの…!

もう伊吹くんとはなんの関係もないんだから。

これからは普通のクラスメートに戻るんだから。

こんなことで動揺してたらいつまで経っても身が持たない。


そう分かってるのに…。


「”井上さん”か…」


知ってる。

伊吹くんは誰かが近くにいる時は、私を苗字で呼ぶこと。

2人きりの時しか名前で呼ばない。

分かってる。

でも今、伊吹くんに”井上さん”って呼ばれることが、ひどく悲しかった。


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