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第1章 ベアトリス王国編
7.聖剣の力
しおりを挟む日野達が魔物と接触して直ぐ、俺はアリシアの用意してくれた馬車で街を出る。
「お姫様まで、着いてくることなかったんじゃない?」
「いいえ、工藤様にお願いしたのは、私です、最後まで見届ける義務があります」
義務ね…随分真面目なことで、これなら討伐が終わった後の約束についても大丈夫そうだな。
しばらく馬車を進めると、魔物の波が見えてきた。
「そんな……あんなに魔物が……」
「かなりまずい状況みたいだな」
魔物の波が今にも決壊しそうになっている、その中に澪や鈴、敦の姿も確認できる。
「僕が魔法で、穴を開ける、その隙に明は澪達のところへ!」
「判った、頼んだぞ司!」
「今度こそ、任せてよ!」
俺と司は、ハイタッチをして、お互いの成功を約束する。パァンと心地いい音を聞いた後、俺は魔物と勇者の間に走り出す。
ナビさんもサポートよろしく。
〈お任せ下さい、マイ・マスター〉
その後、直ぐに司から光魔法が放たれる、光は一筋のレーザーの如く、魔物を焼き払っていく。
「何あれ、カッコいい~今度教えて貰おう!」
場違いな感想を抱きつつ、魔法が収まりつつあるのを確認し、俺は脚に力を込め一気に加速する。
跳躍し、降り立ったのは、勇者と魔物の間にできた空白地帯。澪達の無事を横目で確認し、静かに右手を掲げる。
「来い!聖剣・エクスカリバー!!」
ナビさんのサポートの下、聖剣を召喚する。出てきたのは、光輝く金色の刀身を持つ剣、エクスカリバー。
「切り裂け、エクスカリバー!!」
エクスカリバーを両手で持ち振り抜く、振り抜いた刀身から光が放たれる。
その光は、先ほどの司の魔法よりも、遥かに大きく、眩く、輝き、正しく絶望の闇を切り裂く希望の光であった。
エクスカリバーを横に振るい刀身に残った光を払う、光が収まると、魔物の大群は全て跡形もなく消え去っていた。
「ふぅ……ぶっつけ本番だったけど、何とかなったな」
「明~!」
澪が抱き付いてくるのを、反射的に避ける。
「……何で、避けるの?」
「いや、つい、条件反射で」
また澪の目がどろどろとしたものになり、両腕を大きく広げて迫って来るのを、後退りして距離をとる。
澪の後ろから鈴達が、苦笑いしながら来る。
いつも通りのやり取りをしてる中、日野が割り込んでくる。
「貴様、何だ、それは?」
「何って、聖剣だけど?」
「お前が、聖剣だと?ふざけるな、この無能が!」
「なら、俺に鑑定を掛けてみろよ」
現在俺は隠匿を使用していない、これで現実が解るだろう。
「そんな…嘘だ、ありえない…ありえない!!」
日野が叫びながら、剣を振りかぶり迫って来る、とっさに聖剣を構えて応戦しようとした所で、それは水の壁によって阻まれる。
今いるこの中で、水の魔法が使えるのは澪だけだ、澪の方を見るが、首をフルフルと振っている。じゃあ、いったい誰が?
「そこまでにしていただきます、勇者様方」
大きくはないが、よく通る声が聞こえる。
そちらを見ると、一人の女性が立っていた、後ろにエレナ姫が控えているのを見ると、この国の女王だろうか?
「今は、皆様お疲れでしょう、お話は城に帰ってからでどうでしょうか?」
「俺は、それで構わないぞ」
「ふん……」
日野が忌々しげに、睨みながら馬車に歩いていく。
俺も澪達と別の馬車に行こうとした時、エレナ姫に止められる。
「皆様はこちらにどうぞ」
そう言って、案内されたのは、あからさまに豪華な、王族専用の馬車である。
澪達を見ると、本当にこれに乗るの?という顔をしている。
「さぁ、どうぞ乗ってください?」
断れる筈もなく、仕方なく乗る、馬車に揺られ王城に戻る。
王城に着くと、直ぐに謁見の間に案内される、そこには、既に玉座にふんぞり返る国王の姿があった。
「よくぞ帰って来た、我らが勇者よ!
しかし、勇者以外が居るな、その者をここから摘まみ出せ!」
「そんな事は、私が許しませんよ!」
国王が、俺を摘まみ出せと声を上げるも、女王にその声を封じられ、魔法で作った水をぶっかけられる。
「な、何をする、我が愛しの妻ミレナよ!」
「あなたこそ、何を考えているのですか?この街を、いいえ、この国を救った英雄に対して」
「この街を救ったのは勇者ではないのか!?」
「ええ、勇者ではありません、それと、そこから退きなさい」
驚きの事実を伝えられ、信じられない様子の国王、そして国王を玉座から退かせる
女王。
そろそろこの国の本当の名前と支配者を告げておこう。
この国の名前は、ベアトリス女王国、勿論支配者は、ミレナ・リイ・ベアトリス女王である。
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