勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第2章 ベアトリス女王国防衛編

2.防衛準備と町の様子

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謁見の間でのひと悶着後、俺は街に来ていた。

「と、ゆうわけで、レッツ・ショッピングだぜ!」

「いやいや、そんな楽しそうな物じゃないからね?」

俺の発言に、鈴が溜め息混じりに、呆れながら言う。
その理由わと言うと、現在街は、絶賛防衛準備中である。

「く、工藤様、本当に、街を守って頂けるのですよね!?」

その、熱にやられてか、一緒に着いてきていた、エレナ姫が不安気に聞く。

「平気だよ!エレナちゃん、明くんは、元から、街を守るつもりだったから!」

「え?しかし、先ほどは…」

「あれは、全部パフォーマンスだ」

「パフォーマンス?」

そう、実は、謁見の間での事は、全て演出だ、女王も、恐らく解っていながら、乗ってくれていたと思う。現に、最後に脅迫した時、涼しげに笑顔を見せられた。

「元々宰相は、横領や、自分の言う事を聞かない兵士を、脅迫したりしていたらしいからな、この際に俺を出汁にして、この国の膿を出そうとしたのだろう、だから敢えて俺が追求するのを待ってたんだ」

「ほへぇ、そうだったんだ~」

「では、工藤様のは……」

「あれは、ただ単に、魔王の相手をしている最中に、後ろから刺されたら、面倒だから、釘を差して置きたかっただけだな、女王も意図を察してくれたらしいので、これで安心して、前に集中できるな」

「な、なるほど、では、何故私は、連れてこられたのでしょうか?」

そう、エレナ姫は、何かあった時には、王族の一人という事で、処断される役割として、着いていくように、女王に言われている。要するに人質だな、が、正直その役目に意味はない、強いて役目を言うなら……

「只の案内役だな?」

「あ、案内役…わ、私は、王族としての責務を全うしようと思い、身を削る様な思いで来たのに……案内役……」

何か、一人で、ぶつぶつ言い始めたエレナ姫は放っておき、本来の目的を話す。

「差し当たり、必要なのは、防具と、回復薬かな?」

「うん、そうだね、明の場合、攻撃は、聖剣や魔剣があるとして、防具は着けてないからね」

司の言う通り、今まで、防具は着けていない、当たった所でどうとゆう事はないが、念のため、防具はあった方がいいだろう、カッコいいしな。

「後、回復薬か……あんたに必要なの?」

鈴の鋭い指摘が来るが、実は回復薬は必要なのだ。

「いいか、鈴?回復薬は必要なんだ、例えば、鈴が傷ついて倒れたとする、この時、魔剣を出していて、回復の力を持つ聖剣が出せずに、手遅れになったら大変だろ?」

「あ、そっか、聖剣と魔剣は両方出せないんだっけ?」

何度か、試したが、聖剣と魔剣は両方出すことはできない、ナビさんに確認したが、力が打ち消し合い……と良く解らない答えが出てきたので、覚えてない。

「まぁ、何にしても、不足の事態に備えて準備をするに越したことはない」

「そうだね、僕達も、武器や防具の準備をしよう」

「という訳で、そろそろ行くぞ、エレナ姫」

「あ、ハイ!待って下さい、置いて行かないで~」

姫の扱いが雑である。


カラン、カラン

扉を開けると、そんな音が聞こえる、なかを見ると、如何にも鍛冶師といった、筋肉質なおっさんがこちらをジロリと見てくる。

「おぉ、これは、姫様では御座いませんか」

「こんにちは、ゴードンさん」

この店は、王族御用達の様で、エレナ姫に案内されてきた。腕がかなりいいらしく、
騎士団でも重宝してるとの事だ。

「今日は、どういったご用で?」

「こちらの方々の、防具を見せてもらいたく」

「おぉ、勇者様ですな?さぁ、こちらにどうぞ」

勇者様という言葉に、エレナ姫がビクリと反応し、恐る恐るこちらを見てくる。

「別に、そこまで過敏に反応しなくとも、大丈夫だぞ?」

「し、失礼しました……」

反応しすぎたのが恥ずかしいのか、少し顔が赤らんでいる。

「ところで、あの人はドワーフか?」

「いえ、普通の人族ですが?ドワーフ族はもっと背が低いですね」

「そうか」

一瞬鍛冶師のおっさんがドワーフかと、期待したのだが、違うらしい。残念だ。

「おい!そこの坊主も、こっちに来い!」

呼ばれるまま、防具選びをする。なるべく動きやすい革の胸当てや、グローブを選び、着けてみる。

「違和感はそれ程ではないが、やはり動き難さはあるな、防具要らなくない?」

「ダメです!万が一があったらどうするんですか!?」

「そうだぞ、坊主、防具てのはお前さんの代わりに、傷ついてくれるもんだ、蔑ろにしちゃいけねぇぞ」

恐らく、防具が無くても、早々傷つかないが、黙って置こう。

「分かった、ならこれを貰おうか」

「おう、大切に使えよ?」

「ところで、おっさん、街の様子はどうなんだ?」

「おっさんって……まぁいいか、見れば解ると思うが、何処もかしこもぴりぴりしてるよ、発表じゃあ魔王が攻めてきてるって言ってたからな」

「あぁ、そうだな、街から出ていくのは?」

「俺みてぇに、この街育ちの奴はなかなか出ていかないもんさ、だが、行商なんかは直ぐに出ていっちまったよ、薄情なもんだよな」

「仕方ないさ、生きていての物種だからな」

「そうですね、出来れば皆様にも、街を出て、安全な所に避難してもらいたいのですが……」

「かっかっか、そいつは、無理な話さな、姫様!俺は死ぬんだったら、この街で死にたいからな!それに、坊主がこの街を守ってくれるんだろ?」

「なんだ、おっさん俺の事知ってたのか?」

「あたりめぇだ、発表にはお前さんの事も、あったからな」

「なのに、俺の事を勇者と呼んだ訳か?
嫌味か?」

「いいや、お前さんこそ、本物の勇者だと、思っただけだよ」

そう言っておっさんは、カウンターに額をつける位まで頭を下げた。

「どうか、俺たちの故郷を救ってくれ」

「ふん、そんな事されずとも、元からそのつもりだ」

そう言いながら、手をひらひらと振りながら、店を後にする。


外に出ると、やはり街は慌ただしく、行き交う人が多く見られる。

「さて、次は回復薬などの、薬類か」

「それでしたら、王宮内である程度、確保しているので、お渡しすることができます」

「なら、この後は、自由行動にするか?」

「自由行動?お城に帰るんじゃないの?」

「あぁ、少し街の様子を直に見ておいた方がいいだろうからな」

「うーん分かった!じゃあ澪、エレナちゃん一緒に行こ?」

「え?私もですか?」

鈴に誘いに困惑する、エレナ姫。

「エレナ姫、あんたも、自分の目で、見といた方がいいと思う、自分の守るべき物を、自分のするべき事を」

「……わかりました、鈴さん、澪さん、よろしくお願いします」

「じゃあ、俺達も、三人で回るか」

「いや、悪いが司と敦は、二人で回ってくれ」

「いいけど、明はどうするんだい?」

「ちょっと、行かなきゃならない所があるんだ」

「ま、まさか、魔王ですか?」

「いやいや、まだそこまで、行かないな、でも、緊急ではあるな」

「分かったよ、僕と敦は二人で回るよ」

「あぁ、じゃあ解散!」

「うん、明も気をつけて」

司達に、見送られ、走り出そうとして、思い出した事があり止まる。

「おっと、そうだ、忘れてた」

「どうかしたのか、明」

「何か、旨そうなものあったら買っといて!」

親指を立てながら言い、直ぐに走り出す。
司達の呆れ顔は、見なくてもわかる。

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