勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第3章ガレオン帝国奪還編

2.国境沿い

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夕食後、それぞれテントで休む事に、俺、司、敦の三人と鈴、澪の二人に分かれる。エレナ姫達は別のテントがあるらしい。

クロエも鈴達と同じテントを使えば?と聞いたが、馬車の番があるのでと言っていた、そこで、気になり夜中に隠密を使い覗いてみる事に、今回は隠密に加え、結界術で匂い何かも遮断する。

そこで見たものに俺は後悔する、馬車の中では、産まれたままの姿で、一心不乱に何かに祈りを捧げるクロエの姿が……

何に祈りを捧げているのかと思えば、前に俺が着ていた、奴隷服のようなボロ布だった、てっきりとっくの昔に捨てられたと思っていたが……

「あぁ、明様、なぜ貴方はそんなに美しいのでしょう、何故貴方はそんなにも輝いて見えるのでしょう、なぜ貴方はそんなに力強く逞しいのでしょう、あぁ、明様、明様、明様、明様………」

まさか、覗きをして背徳感より恐怖感が強くなるとは、思わなかった……

翌朝、朝食を食べている際、クロエが話し掛けてくる。

「ダークエルフという種族は、あまり寝ないでも大丈夫なのです」

き、気付かれてた!?

〈ハイ、昨夜、クロエはマスターの隠密を看破していました、本人は寝ない自分を心配してくれたのだと勘違いしています〉

ナビさん、もっと早く教えてよ!

〈あの場で教えて、声を出さない自信がおありですか?〉

うん、無理!絶対叫んでたね!

「慈悲深い明様のお心遣い、恐悦至極でございます」

あの所業に恐怖を感じていたとは、知らないクロエが惚けた顔で言って来る、悪い子じゃないんだけどな……

その後、馬車の旅は何事もなく、国境沿いに到着した。

警備をしていた、兵士に救援に来たことを告げ、直ぐに、部隊を率いる者に会う。

国境沿いの砦の中、案内された一室には、一人の女性?が居た、筋肉質の肉体、腹筋は割れていて、格好は一見盗賊のお頭か?と思うような物、後ろには、血で染められたような赤い鎧がある。

「久しぶりだな、エレナ嬢ちゃん?」

「はい、と言っても、一ヶ月ほど前にお会いしたばかりですが」

「ハッハッハ!そうだったな!」

「あの時は、このような事になるなど、思いもしませんでした……」

「何辛気臭い顔してんだ、アタシ達はまだ負けた訳じゃない、故郷を取り戻すんだ!そのための、援軍だろう?」

「そうでした、ご紹介が遅れました、こちらが……」

「聖剣使いだろ?こっちにも、情報は届いていたから、知ってるよ」

「……」

「ずいぶん、無口なやつだね?」

「あ、いえ、これは、その、」

「もう喋っていいのか?」

そう入る前に、エレナ姫に喋らないように言われていたのだ余計なことを言って、相手を怒らせたら不味いからと、人をなんだと思っているのやら。

「工藤 明だ、よろしく」

「アタシは、ダイア・ガレオンだ、ダイアでいい、よろしく」

「なら俺は明でいい、ところで、ガレオンって事は、あんたが皇帝か?」

「いや、アタシじゃないんだ、前皇帝の父上が、先の侵略でなくなって、実質即位したのは、兄上なんだが……」

歯切れの悪い、ダイアの話を聞いている途中、テントに大男が入って来た。

「ダイア!勝手に何をしているんだ!」

「兄上、客人の前です、お控えください!」

「黙れ、俺に歯向かうのか?」

兄上って事は、こいつが皇帝か?ダイアと違い横暴で、いかにも俺様主義っぽいな。
周りの兵士も露骨に、無理矢理従っているみたいだし。

「だいたい、俺はベアトリスみたいな、女の尻に敷かれているような、国の力を借りるなんてごめんだ!まぁ、股を開くなら別だがな」

国際問題にならないのかね?まぁ、そうなる前に、俺が消すけどな、こいつ今、澪や鈴に気持ちの悪い目を向けた、ここまで遠慮がないなら、こちらも遠慮はしないでいいよな?

スッと前に出て、バカ皇帝に提案する、こいつはもう、名前すら覚える気はない。

「俺たちの力が信じられないなら、試してみてくれないか?ただの模擬戦だと、本来の力が、見えないかもしれないから、何か賭けると面白いかもな?」

「賭けか、いいだろう、俺が勝ったらお前ら全員、俺の奴隷だ!」

「な、兄上、何を……」

「いいだろう」

「明、お前まで……」

「ただし、俺が勝ったら、皇帝の座を頂くがいいか?」

「何ぃ?」

「そうだな、それじゃあ、賭け金が吊り合わないな、なら、俺達五人に加え、エレナ姫とアリシア、それにクロエも足そう」

「ふん、いいだろう、その勝負受けてやる」

「エレナ嬢ちゃん、いいのか?」

「ハイ、大丈夫です」

「嬢ちゃん……待ってくれ兄上!私も、賭け金に追加する!」

「ダイアが?ガっハッハ、こいつはいい、お前をいつも、屈服させたいと思っていたんだ!いいだろう、では闘技場で待っているぞ!」

「いいのか?」

「ああ、君たちだけに危険は背負わせない……」

危険ね……

「これは、大丈夫そうですね」

「お、エレナちゃん分かってきたね?明、本気であのおっさん、潰す気だよ」

「ハイ、あの目をしているときはとんでもない事をする時だと、分かるようになってきました」

「そ、そうなのか?本当に大丈夫なのか?エレナ嬢ちゃん」

「ハイ、大丈夫ですよ、あの目をしている時は」

「そういうものか?」

「ハイ、いずれ、ダイア様も馴れます、私のように」

「なんか、目が死んでないか?」

エレナ姫の心労はさておき、潰すのは確定なので、さっさと闘技場に移動する。
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