勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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4章ルクレア法国侵入編

8.法国内探索

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女王との会談から翌日、俺達は馬車でルクレア法国に向かっていた。

「で、何でまたエレナ姫が居るんだ?」

「今回はルクレア法国なので、同行を許して頂きたいです……」

「ちっ」

「えぇ!?何故そんなに不機嫌なんですか!?」

「しおらしくなって、気持ちの悪い」

「ひどいですっ!」

「まぁまぁ、許して上げなよエレナちゃんは心配なんだよルクレア法国の王女様の事が」

「あぁ、カトリア王女だったな?」

「ハイ、前は手紙のやり取りがあったんですが今は音沙汰がなく……」

「ルクレア法国ってどんな所なんだ?」

「ルクレア法国は、カトリアの姉クリスティア様が法王を勤めています」

「また、女王か」

「ダイア様が皇帝になられましたから、全ての国が女王国になりましたね」

「ふむ、皇帝の座から降ろすか?」

「止めてあげて下さい」

「で、他にルクレア法国って?」

「えっと、強力な結界に護られており、神聖な魔力で満ちた街になっています」

「ほう、結界ってどんなもの何だ?」

「聖女とも呼ばれているクリスティア様が、宝玉に魔力を注いでできるもので、魔を祓う力があります」

法王に聖女って、異名が仰々しい物ばかりだな。

〈ここで、ご報告があります〉

……このタイミングでのナビさんの報告、嫌な予感しかしない。

〈現在、ルクレア法国の結界は消失しています〉

ほらな、結界が消失って何があった?

〈経緯は不明ですが、何者かが結界の制御に使われていた、宝玉を破壊もしくは持ち去ったものと思われます〉

ふむ、宝玉ってどんなもの?

〈純度の高い魔宝石を特殊な方法で加工した物です〉

魔宝石?はて、前にも何処かで同じような事があったような?

〈ガレオン帝国の帝都にある、生活水供給用噴水の魔宝石です〉

あ~そんなのもあったな。

〈おそらく魔王達は純度の高い魔宝石を集めています〉

何のために?

〈不明です〉

ふむ、現地人にも聞いてみるか。

エレナ姫達に魔宝石について聞いてみる。

「魔宝石ですか?」

「あぁ、主に何に使う?」

「そうですね、生活の水や灯りが主で、後は都市の結界や魔物避けでしょうか」

「ルクレア法国の結界にも、使われているそうだな?」

「ハイ、よくご存じですね……」

「それが魔王に奪われたらしい」

「一大事じゃないですか!?」

「前から思ってたけど、何であんたは知ってるの?」

「秘密だ」

「もしそれが本当なら今、法国には結界がなくなっているって事だよね?」

「ハイ、急ぎましょう!」

「よし、クロエスピード上げろ!」

「明様の御心のままに!」

「ちょっ、待っ」

クロエが馬車の速度を上げる、比例して揺れも大きくなった。


「うげぇ~」

「女子の出す声じゃないな」

暫く進み野営するため停まると、馬車に酔った鈴が転げ落ちながら呻いていた。

「大丈夫か鈴?ほら水、ゆっくり飲むんだ」

「うん、ありがとう敦」

敦と鈴がいい感じになった。

「熱いな」

「え?少し肌寒いくらいだよ?」

「あ、明!」

「いや、何でもないよ~」

許せ敦、いい雰囲気になると壊したくなるんだ。

「この分なら明日には法国に着きそうだな?」

「ハイ、急いだかいがありました」

「あぁ、尊い犠牲のお陰だ」

「その犠牲って誰の事よ?」

「さて、明日も早いし寝るか」

「おい!」

鈴が何か言っていたが無視してテントに入る。


翌日、朝食を手早く済ませ直ぐに移動を開始する。


馬車を走らせて二日目の昼、ルクレア法国との国境に着く、元々法国はそこまで大きくなく明日には法国の首都に着くだろう。

「私は国境の警備長に話を聞いてきます」

こうゆう時にエレナ姫が居ると便利だな。

暫くするとエレナ姫が帰って来るがその表情は暗い、何かあったな。

「エレナ姫何かあったか?」

「はい、日野様はここを通っていないと……」

「どうゆう事だ?日野は確かにルクレア法国に入ったはずだが?」

「他に法国に行く道があるとかは?」

「いえ、ここ以外人が通れる道はありません」

「人がね……」

「どうかしましたか?」

「人以外が通れる道はあるんだよな?」

「明ねぇ、日野が空飛んだとでも言うの?」

「……いえ、一つ方法があります」

「え?」

「そっか、幻想の森だね?」

「はい、あそこを通れば国境は通らない」

「で、でも幻想の森は人が入ったら迷って出られなくなるって聞いたよ?」

澪の言う通り、幻想の森は人が歩ける場所ではない、そう"人"がである。

「手引きをしたのは、十中八九魔王だ」

「え!?魔王?」

「あぁ、おそらく魔王の中に幻想の森を通る術を持つ者が居るのだろう、それに亡命先は魔王が支配していると思われる法国だ」

「日野君が何のために連れていかれたかはともかく、急いだ方がいいのは事実だね?」

「司の言う通りだ、急ごう」

「既に通過の許可はとってあります」

馬車に乗り込みルクレア法国の首都を目指す。


国境から馬車を走らせて一日何事もなく法国の首都に着く。

「着いたな」

「はい、街の中は至って普通ですね」

「ひょっとして街の人達は結界がなくなった事を知らないのかな?」

「とにかく入ってみるか、クロエ!」

「はい、明様」

クロエが街の門に向け馬車を動かす。

「そこの馬車、停まれ!」

門に近づいたところで、警備に停められる。

「ベアトリス方面から行商に来ました」

「ふむ、中を確認させていただいても?」

「はい、どうぞ」

「では、失礼して……おっと、こっちは従業員用か、ずいぶん人数が多いな」

「多種多様な物を取り扱っていますので必然的に従業員の数も増えてしまうのです」

「そうか、商品は後ろだな?」

「はい、そちらにも警備のため従業員が乗っています、何かあればそちらにお申し付け下さい」

兵士が後ろのメイド馬車に近づく。

馬車には食べ物や雑貨、酒類が積まれている。

「む、これはなんだ?人形か?」

「はい、これは幸運のお守りです、これを持っていれば魔を打ち払い、幸せになれるでしょう!」

見ることはできないがものすごく熱く語る声が聞こえる、人形なんてあったか?

〈メイド達が道中作っていた布教用のマスターの人形です〉

ん?ごめん、ナビさん聞こえなかった。

〈いえ、マスターは知らなくてもよいことです〉

ん~ナビさんってたまに聞こえない時があるんだよな、何でだろう、まぁいいか。

「よ、よし、怪しいものはないな進んでいいぞ」

熱弁するメイドにドン引きしつつ、兵士が許可を出す。

「いや、怪しかったよね、特に人形」

「多分まだ結界が無くなった事に気付いてないから警戒が薄いんだと思う」

「知らないって幸せだな」

町に入り宿屋で部屋を確保し、これからについて話し合う。

「で、この後どうすんの?」

「明様、我々は露店商として商売をしてきます、一応そうゆう名目で入っていますから」

「わかった、カモフラージュはクロエ達に任せる」

「私達はとりあえず大聖堂を目指しましょう」

「大聖堂?」

「はい、ベアトリスで言うお城ですね」

「大丈夫なのかエレナ姫、そこは敵の本拠地になってるかも知れないんだぞ?」

「もう迷っている暇はありません、カティが危険なら一刻も早く助けてあげたいんです」

「よーし、なら皆で大聖堂に突撃………」

鈴が叫ぶ途中で止まる、なんだ?何かがおかしい。

「どうしたの鈴、お腹すいた?」

澪が心配して声をかけるが返事をしない、やがて顔を上げた鈴の目はいつもの鈴ではなかった。

「澪、離れろ!」

俺の声を聞いた澪が飛び退く。

「お前は誰だ!」

「ふふふ、つれないですね会うのは二度目だと言うのに」

なるほど予想はついた、理由はわからんが鈴は人質に取られたようだ。

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