勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

文字の大きさ
80 / 84
第7章 聖・魔剣使い

6.聖魔剣の力

しおりを挟む

「ガッ!」

「グゥ……」

「ゴハッ!」

何度となく壁や床に叩き付けられる、さすがにあちこち痛みだす。

「ククク、無様だなぁ聖魔剣使い?しょせん貴様には何もできぬ、諦めよ」

「………諦める訳にはいかない、見たい明日があるんでな」

「明日だと?」

「ああ、そうさ、みんなで笑い合う明日だよ、たったそれだけのちっぽけな願いさ」

「ククク、なんと陳腐で愚かな」

「笑いたければ笑え、誰も犠牲にしないし、諦めもしない!」

「ならばその希望、砕いてやろう」

靄が蛇のように体に巻き付いてくる。

「グゥ…」

そのまま持ち上げられ投げ飛ばされる。

「明!」

「明くん!」

どうやら司達の所まで投げ飛ばされたらしい、部屋の約半分の距離飛んだと言うことか。

「その希望、夢、未来、我が壊してやろう!」

直後、禍々しいオーラが奴の腕に集まる。

「くっ……」

駄目だ、あれは受け止められない、本能が警告を鳴らすが。

「避けるわけにいくか!!」

避ければ後ろに居る司達に当たる。

打ち下ろされる剣状に変化した魔王の腕に対して、下から掬い上げるように合わせる。

「ぐぅ、あぁぁ……」

何とか頭上で耐えるが、徐々に押し込まれる、圧によって足が地面にめり込む。

「明!」

横から手が伸び聖魔剣の柄を掴んだ。

「司!?」

「君にだけ背負わせたりしない!あの日、誓ったんだ!君の隣に立つって!君の親友であり続けるって!」

聖魔剣から眩い光が溢れ、放たれる。

それは紛れもなく聖魔剣の本来の力、つばぜり合いをしていた魔王の腕を消し飛ばし、霧散させた。

「ぬぅ、ぐぅ……」

「聖魔剣が使えた?いったいどうして……」

とにかく、今がチャンスと、体制を立て直そうとすると。

キィィィン

「ぐぅあ!」

「きゃあ!」

「なに!?」

突然の大きな耳鳴りに、耳を押さえてうずくまる。

司や澪達も同じようにうずくまる中、景色は色を失ったように灰色に変わる。

「……なんだ?何が起きて?」

動いているのは、俺、司、澪、鈴、敦、そして……。

「ぬぅ、忌々しい聖魔剣の意思め……」

「ちっ、あいつも動けるのか」

どうやら魔王も動けるらしい、それより魔王の言葉が気になる、聖魔剣の意思だと?

『使い手よ』

複合音声の様な声が響く。聞き覚えがあるその声は間違いなく聖魔剣の意思だった。

「え?誰?」

「聖魔剣の意思ってやつだ、ガラドボルクの名前を聞くときに聖魔剣の中で会った」

状況を飲み込めてない鈴達に説明をしつつ、聖魔剣の意思に目を向ける。

『使い手よ、手を重ねよ』

「手を重ねる?」

『聖魔剣は一人では振るえぬ、手を重ねよ………』

キィィィン。

聖魔剣の意思の言葉が切れると、再び激しい耳鳴りに襲われ、時間が動き出す。

「手を重ねよね、なるほど、澪!司!敦!鈴!」

「うん!」

「わかった!」

「うむ!」

「え!?なに?どういうこと?」

若干一名理解できてないが全員が集まる。

「ぬぅ、させんぞ!」

怒号と同時に再度無数の魔物がわき出る。

「ちっ、まだこんなに……」

「どうする、明?」

「ここから、撃ってみる?」

「いや、できれば確実に一撃与えたい、だから、狙うは至近距離」

回数制限があるのか、それも録にわからないんだ、なら、一撃必殺に掛けるしかない。

「だが、この壁を越えるのは至難の技だぞ?」

敦が言うように、俺達の目の前には幾重もの魔物の壁が出来ていた。

「ならばその道我らが作ろう!」

声の方を見ればダイア皇帝が腕を組んで立っていた。

「ダイア皇帝生きてたのか」

「人を勝手に殺すんじゃない、人手が必要なのだろ?」

確かにここでダイア皇帝が来てくれたのは嬉しいが。

「下は大丈夫なのか?」

「ご心配なく工藤様、下に居たものは全てこちらに来ているようですから」

ダイア皇帝の後ろから、クリスティア法王とリュエさんが歩いて来た。

「と、言うことは、あれは本来、下で抑えてた奴か?」

それを、さも、助けに来たと言うように、手を貸そうというダイア皇帝。

「な、なんだその目は!言いたいことは分かる!だから、急いで上がって来たんだぞ!」

「はい、はい、どうもありがとうございますー」

「くぅ、このぉ………」

「まぁまぁ、落ち着いてくださいダイア様、それよりあれが魔王ですか……」

「あぁ、奴の近くまで行きたい、力を貸してくれ」

「畏まりました、ですが、なぜ攻めて来ないのでしょう?」

そう、今、俺達はゆっくり話をしているが、魔王も魔物も動きを止めている。

「恐らく、あれのせいだろう」

魔王の腕を指差しながら言う。

「奴の腕を消し飛ばしたんだが……どうやら聖魔剣でつけた傷は治りが遅いらしい、今のうちにもう一撃叩き込むのがいいだろう」

「……ふむ、どうやら、そこに勝機があるな」

「あぁ、勝負時だ、チャンスは一回、一撃必殺だ!」

こうして、最後の時は近づいていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...