異世界行ったら従者が最強すぎて無双できない。

カザミドリ

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Sランク

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 ドラゴンを王都に持って行くと、たちまち大騒ぎになった。

「ほ、本物のドラゴンだ!」

「しかも生きているぞ!」

「あの子供はなんだ!?」

 あ、最後のはフェンについてだ、まぁ、ドラゴンを持ち上げているから、当然か?

「お前達!よくやってくれた!快挙だ!」

 王都ギルドマスターのベイカーが興奮ぎみに出てきた。

「ベイカーさん、我々は何もしていません、全てタクトくん達の功績です」

「おぉ、そうか、これで晴れてSランクの仲間入りだな!」

「Sランク?」

 仲間入りって何の事?

「そう言えばまだ話してなかったか、今回の依頼の完遂でお前達は、Sランクに昇格になる手筈になっているんだ」

「それは嬉しいですけど、何故そんな話に?」

「君達の持って来た手紙に推薦状が入っていてな、他のギルドマスターと話し合いの結果だ」

 なるほど、メグミさんが気を効かせたのかな?エニの件があるし……。

「ん?じゃあ、クロノは知っていて、ドラゴンを捕まえる事を?」

「はい、小耳に挟んでいましたので」

「ほう……」

 感心するな俺の隣ではケインさんが苦笑いしていた。

(いったいどうやって小耳に挟むんだよ、あの場には俺達しか居なかったはずだが……)

「さぁ、ギルドに戻って昇格の手続きだ!」

 ベイカーさんに連れられギルドに向かう、途中多くの冒険者から称賛の声が送られた。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 タクト達を称える声の中、不満と嫉妬の目を向ける者が居た。

「まさか、本当に解決するとは……」

 東のギルドマスターレイツ、彼は面白くなさげにタクト達を見つめる。

「……しかし、ふふふ、彼の従者はどれも美しい、まさに僕に相応しい下僕だ」

 レイツが怪しくほくそ笑む。

「……おい」

「ハッ!」

 レイツが影に声を掛けるといつの間にか、一人側に膝間付いていた。

「彼らを僕の別荘に招待しろ、もちろん、丁重にな?」

「……畏まりました」

 影は音もなく消える。

「ふふふ、実に楽しみだ……」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 タクト達がギルドに着くと、多くの冒険者に囲まれた。

「お前らすげぇじゃねぇか!」

「さすが、朱の鳥が見込んだだけはあるぜ!」

 タクトが困惑する中、クロノ達は不快そうに警戒感を強める。

「ま、まぁまぁまぁ、その辺にして、彼らの昇格をお願いします、ベイカーさん!」

「う、うむ、そうだな!」

 ベイカーさんが慌てた様子で受け付けに向かう。

「タクト、こっちへ」

「は、はい!」

 ベイカーさんに呼ばれカウンターまで進む。

「おめでとう!晴れて君達はSランクと認定された、今後も人々のため力を貸してほしい!」

「が、がんばります」

 と、言ってもこれまでもそんなに、依頼受けて無いんだけど……。

「おめでとうございます、タクト様」

「あ、ああ、うん、ありがとう」

 クロノが称賛し、メロウ達も拍手をするが、ほとんど君達の手柄だよね?

「あの、ベイカーさん本当にいいんですか?」

「当たり前だ!いったい誰が文句を言うものか!」

「そ、そうですか」

 まぁ、貰える物は貰っとこう。

「タクトくん、この後は……」

「失礼する!」

 ケインさんが今後について話をしようとしたタイミングで、甲冑を着た兵士がギルドに駆け込んできた。

「王宮からの伝令である!冒険者タクトとその一行は、明日城で開かれる王妃様と王女様の快気祝いに主席去れたし!これは王命である!」

 お城からの呼び出し、悪い事ではないと思うが……。

「ケインさん、従うべきですか?」

「ああ、王命だからな、断れば反逆罪になるぞ」

 パーティーを断ったら反逆罪って、大袈裟だな。

「仕方ない、参加するか……」

「ははは、いい経験になるからいいんじゃないか?」

 その後はケインさん達に、パーティーでのマナーを聞いて解散になった。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 翌朝、宿にベイカーさんが来た。

「迎えに来たぞ!」

「あれ?ベイカーさんも呼ばれたんですか?」

「ああ、ギルド長だからな、それなりに地位が有るんだよ」

 ベイカーさんはピシッとしたタキシードの首元を、窮屈そうに引っ張りながら答えた。

「服はいつもので大丈夫って聞いたんですけど……」

「ああ、冒険者はな、ギルド長になるとさすがにな」

 なるほど、冒険者にそこまでは求めていないと。

「外に馬車を待たせてる、準備がいいなら乗ってくれ」

「はい」

 馬車に行くと御者はケインさんだった。

「ベイカーさんに言われてな……」

「お疲れ様です」

 馬車に乗り城へ向かう。

「さて、基本的に社交場では冒険者は軽視される事が多い」

 馬車の中でベイカーさんに、今日のパーティーでの注意を改めて聞く。
 
「自分から話し掛けるのはしない方がいい、恐らく話し掛けられる事もないと思うが、話し掛けられたら礼儀正しく答えれば基本問題ない、どうしてもって時は俺が手助けしよう」

「はい、お願いします!」

「まぁ、話し掛けられてもギルドの関係者くらいだろう、王族に話し掛けられるなんて、俺でも無いからな」

 ……何だろう、フラグに聞こえるのは気のせいだろうか?

 一抹の不安を胸に馬車はお城へ到着した。

「冒険者の方々ですね?こちらで武器をお預かりします」

 入り口で武器を取り上げられる、警備のためだろうが、俺達の場合あまり関係ないんだよなぁ、基本武器必要なの俺だけだから。

 念のため持って来ていた剣を預け中に入ると、よくお伽噺で見る舞踏会が広がっていた。

「タクト様!あれ、美味しそうですよ!」

 フェンが立食形式の料理を見て、喜んでいると。

「あらあら、これだから平民は」

「ふふふ、お遊戯会と間違えてないかしら?」

 ひそひそと、だがこちらに聞こえるように話す貴族らしい格好のおばさん達、事前に聞いていたからかそこまで憤りは感じず、無視をする方向に決めた時、優雅に声を掛けてくる人がいた。

「タクトさん!よくぞいらっしゃいました!」

 声を掛けてきたのは、アルメル王女様だった。

「あ、はい、招待が来ましたので……」

「はい!お忙しいとは思ったのですが、どうしてもちゃんとお礼がしたく、使いを出させて頂きました」

「そうだったんですね、驚きました……」

「待っていて下さいませ、今、お父様とお母様を連れて参ります」

 そう言って、一度会場の奥、王族が座る一段高い所に歩いていくアルメル王女様。

「……王族に話し掛けられるなんて、無いんじゃなかったのか?」

 ぼやきながらベイカーさんを見るが、我関せずと明後日の方を見ていた、何かあれば助けてくれるんじゃなかったのか?

「お待たせしました」

 ベイカーさんを睨んでいるうちに、アルメル王女が王様と王妃様を連れて戻ってきた。

「おぉ、タクト殿、来ていただけましたか!この度は本当にありがとう」

「貴方がタクト様ですか、夫と娘から聞きました、命を救って頂きありがとうございます」

 矢継ぎ早に王族からお礼を言われ、周りの視線が刺さる。

「い、いえ、依頼をこなしただけですので………」

「おぉ、なんと謙虚な、家族の命のみならず国まで救って頂いたと言うのに!」

 いや、それこそ何もしていません。

「本来であれば、爵位や領地を報酬に……」

「いえ!本当にギルドから報酬は貰ってますので!」

 貴族の仲間入りなんて、ごめん被る、ましてや領地を経営なんて絶対やりたくない………いや、待てよ?ひょっとしたらクロノやメロウなら上手くやるんじゃないか?いや、やっぱり止めよう。

「左様ですか?では、せめて今日は楽しんで下さい、皆様の為に最高級の料理をご用意しております」

 そう言い残し、王様達は他の貴族に挨拶に行った。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 王様達が立ち去るとベイカーさんが寄ってきた。

「まさか、王族が総出でわざわざ来るとはなぁ」

「何感慨に浸ってるんですか?助けてくれるんじゃ無かったんですか?」

「いやぁ、さすがの俺でも王族の話に割って入るわけにはいかないからな」

 肩をすくめるベイカーさん、そこにまた声を掛けられた。

「これはこれは、タクト様ではありませんか」

 聞きなれない声に振り替えると、知らない男が居た、パッと見は優男、豪華な装飾品や服を着ている、貴族かな?

「ああ、失礼、私としたことが名乗りもせず、私はレイツ、王都より東イリマの街でギルドマスターをしています、どうぞお見知りおきください」

 ギルドマスター?じゃあ、ベイカーさんと同じか、気を使って話しかけてくれたのかな?でもなんで様づけ?

「レイツ?いや、しかし……」

 ベイカーさんはレイツさんを見て何か驚いている。

「ふふふ、本日は挨拶に伺っただけです、今度は是非イリマの街にお越しください」

「はい、機会があったら」

「ええ、では失礼します」

 そう言ってお辞儀をして立ち去るレイツさん。

「ずいぶん礼儀正しい人なんですね?」

「え?あ、ああ、そうだな」

 どうにも歯切れの悪いベイカーさん。

「ふぅ、まぁいい、この後は好きに楽しめ」

「え?でも、貴族の人達が……」

「王が楽しんで欲しいと言ったんだ、それを邪魔する貴族なんて居ないさ」

 なるほど、不敬になるのか。

「分かりました、じゃあ料理でも食べてきます」

 みんなで料理を食べに豪華なテーブルへ移動する、さすが王の威光来たときはクスクス笑っていた貴族が道を開けてくれる。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 タクト達が料理に舌鼓を打っている頃、ベイカーはギルド関係の挨拶回りをしていた。

「おや?ベイカーじゃないか」

「マガリ婆さんか」

 ベイカーに話し掛けたのは西のギルドマスターマガリだった。

「あんたも挨拶回りかい?」

「ああ、今回の件で色々説明をな」

 ベイカーの視線の先にはタクト達が映っていた。

「そうさね、まさか、本当に解決しちまうとは思いもしなかったよ、そう言えば、レイツには会ったかい?」

 レイツと聞いてベイカーの顔色は変わった。

「その様子だと会ったね?」

「………様子がおかしかったな、何があったんだ?」

「どうやら、件の従者に手を出したらしくてね、正確には分からないが、何かしらの精神支配をされたらしい」

 マガリが溜め息混じりに言う。

「なら、タクトくんに言って解いてもらえば……」

「辞めときな、あたしでも解けない精神支配だよ?下手を打てばどうなるか解ったもんじゃない」

 マガリは世界一の魔法使いと言っても過言じゃない、そんなマガリでも解けない精神支配と聞いてベイカーは青ざめる。

「あたしはあの子達とは友好的に付き合うよ、あんたも悪い事は言わないからそうしな」

 そう忠告を残しマガリは立ち去る。

「仕方ない、レイツには可哀想だが自業自得か……」

 これ以上ギルドの評価を落とす事がない事に安堵する自分に嫌気を指しながら、パーティーに戻るベイカーだった。

 こうして、様々な所に波紋を残しつつ、パーティーは終わった。
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