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獣王国へ
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さて、会議が始まる訳だが、その前にテオドール国王から自己紹介の提案が出た。
「これから手を取り合うのだ、タクト殿にそれぞれの国の代表について知ってもらった方が良いであろう」
「手を取り合うかは別として紹介は賛成だ、俺はレバイア帝国国王、グラン・レバイアだ」
「仕方ないのです、わたしは獣王国ガルメティアの女王テトラです、正式名は人間には言い煩いらしいのでテトラでいいですよ」
「わたしはぁ、海洋国の女王、ウェテイアでぇございますぅ、お見知りおきおぉ」
「ふん、異世界人に名乗るようななはない」
ここでも妖精国は問題があった、いい加減メロウ辺りが我慢の限界のようなので、こちらから聞こう。
「何故、異世界人を?」
「ふん、知れたことを、貴様もどうせ前の勇者と同じであろう?」
「同じとは?」
嫌な予感がしつつ聞き返す。
「貴方もエルフを手込めにする気でしょう!」
あいつ本当にろくなことしてないな。手込め、つまり襲ったんだな。
「………同郷の者が失礼な事をしたのは分かりました、しかし、異世界人が全て同じとは思わないで頂きたい」
「ふん、どうだか?」
話が進まないので放置して、テオドール国王に進めるよう促す。
「ゴホン、では改めて会議を始めさせてもらう、まず現在の状態だが……」
国王が話したのは、魔王から宣戦布告が届いた事、既に魔王軍は上陸の準備を始めていること。
「こっちでも確認している、加えるなら偵察に出した飛竜が一騎落とされた」
「飛竜が?」
「ああ、うちは飛竜を使った竜騎士が主力でな、その騎士が一人殺られたのさ」
ふむ、どうやら本格的に戦争まっしぐららしい。
「それでぇ、これからどうしますかぁ?」
「うむ、迎撃とは言うものの我々は死線帯には上がれない、せいぜい上陸の可能性の有る所に部隊の配置くらいか」
「後はぁ海上に巡視船を配置しましょうかぁ」
「上空からも監視が必要だろう、それは帝国が担うぜ」
次々と案が出され決まっていくのだが。
「それで、勇者様は何をするのですか?」
またしても妖精国の女王が突っ掛かって来た。
「何とは?」
「貴方は今回の件についてどう思うか、お聞かせ願えますか?」
挑発するような妖精国女王に溜め息を吐きつつ、答える。
「はぁ、まぁ、何ですかね」
「はっきりしませんわね?言いたいことが有るならどうぞ?」
うーん、これ言うと絶対場が乱れるんだが………まぁいいか。
「じゃあはっきり言いますね?今回のことって本当に魔王からなんですかね?」
「ッ!!」
ほーら変な空気になった。
「おい、そりゃあどういう事だ?」
「記録に残されている魔王と、最近の魔王の行動が合わないんです」
「合わない?」
会議に参加するに辺り、事前に残っているだけの魔王の記録を見せてもらって気づいた、最近の違和感の答え。
「記録に残されている魔王は、一人で死線帯に居る魔族を統一、魔族の国"魔王国"を作ったやり手とあります」
「そうですねぇ」
「そんな魔王が最近では、明らかな采配ミスをしています」
「采配ミス?それはどういう事だ?」
「はい、まず最初はベイルンでのミエム、彼女は魔物を操る事はできますが直接戦闘力はありません」
「それがなにか?」
「街を襲うのにそんな人を行かせますか?ミエムは魔物を使っての撹乱陽動、奇襲に適した能力のはず、侵略や占領、統一を成した魔王がそんな配置をするとは思えない」
「ふむ、確かに」
「次にダナンですが、盗賊として騒ぎを起こしていました、これは一種の陽動に当たります、目立つので一見適任に見えますが、パワータイプのダナンをここに置くのもどうかと思います、俺ならミエムの魔獣に馬車を襲わせますね」
捕縛されても魔物なら喋れないしな。
「続いて、ヒウンなんですが、彼女は不幸体質というかドジなんで、薬品を渡したりするような仕事には向きません、現に尽く失敗していますし」
多分一番薬品持たせちゃいけない人じゃないかな?
「最後にハウザンですが、彼の能力は早く動く事ではなく、気付かれない影の薄さです、潜入ならまだしも馬車の襲撃には向かない、ヒウンと同じように失敗していますしね」
「しかし、それはあくまで貴方が出会った事だけでは?」
「いえ、他にもギルドに多数報告されています、ですよねギルド長?」
「はっ!多くの場所で魔王軍らしき姿を目撃したと報告が来ています!しかし、被害は無いのがほとんどで……」
「言わずもがな失敗しているのでしょう」
やり手の魔王がこうまで立て続けに失敗するとは思えない、その結果出た答えが。
「現在魔王軍を指揮しているのは魔王では無いのかも知れません」
「魔王ではない?では誰が?」
「そこまでは分かりません、ですがこのまま戦争を始めても良いものか、検討するべきでは?」
正直戦争をする必要は無いのでは無いかと思っている、まぁ、直接魔王と話して見ないと解らないけどな。
「ふふ、あはは、何を言い出すかと思えば戦争をしたくないですって!?どんだ勇者が居ましたわ!」
「確かに戦争はしたくありませんが、戦争をする意味が無いと言っているんです、皆さんは戦争したいんですか?」
「当然です!魔族は滅ぼすべきでしょう!?」
真っ直ぐ妖精女王に目を向ける。
「何故?」
「な、何故って、魔族は悪だからです!」
「悪?何を持ってして悪と言いきるのですか?」
「………彼らは我々を傷つけます!それは悪でしょう!」
「では、妖精族の中には他者を傷つける者は居ないと?」
「そ、それは………」
「例えば、人族の中に盗賊が居ます、彼らは他者を傷つけます。人族全てが悪だと?」
「………」
押し黙る妖精女王。
「魔族が全て悪と誰が決めたのですか?」
「………話になりませんね、失礼します!」
そのまま妖精女王は帰ってしまった。
「私も失礼します、今はまだ貴方の話に賛同できないので」
「俺も一度帰るかなぁ」
「ではぁわたしもぉ」
結局全員帰ってしまった、会議はご破算、これは国王に怒られるのではと思ったが。
「なんたる無礼な!特に妖精国めぇ!」
あ、そっちに怒るのね?そう言えばこの国は全面的に支援するって言ってたっけ?
「しかし、本当の所どうするんだ?」
ベイカーさんが真剣な面持ちで訪ねてくる。
「どうって?できるなら魔族と和平に持ち込みたい所ですね」
「和平だって?する意味有るのか?」
ふむ、意味とな。
「有りますよ?というかギルドが一番恩恵受けてるじゃないですか」
「ギルドが?」
ギルドにはたまにレア素材が持ち込まれている。
「死線帯の魔物の素材はさぞかし高値が着くんでしょうね?」
「当然だ、死線帯の魔物はどれも強力、防具になれば冒険者の命を守り、薬になれば多くの命を救う」
「そんな死線帯の素材が、定期的にギルドに持ち込まれているのは?」
「もちろん知っている」
頷いて、ハッとなるベイカーさん。
「可笑しいですよね?人が入れない死線帯の素材が何で持ち込めるんですか?」
「た、確かに………」
「恐らく魔族か、それに協力している者が居るんでしょう」
協力している者と聞いて慌てて立ち上がるベイカーさん。
「直ぐに調べ」
「あー、その必要は無いと思いますよ」
「な、何故だ?街に魔族が居るんだぞ?」
「彼らは友好的だからです、少なくとも素材を売って魔族側に利益が有るとは思えません」
こっちの金なんて死線帯で使えるとは思えないし。恐らく素材を売ったのは市場調査かな?もしくは貿易調査。
「良いですか?死線帯の素材は先ほどベイカーさんが言ったように、多くの命を救う事もできる、それが確実に定期的に手に入るのは?」
「………願ってもない事だ」
「加えて我々が戦争して得るものは?金?いや、彼らの通貨なんて持っても仕方ない、じゃあ領土?住めないのに必要ですか?」
「なるほど得るものがありませんな」
これまで聞いていた国王が話し始める。
「これでは戦争に勝っても意味がありませんな、死線帯に行けない以上魔族の駆逐などできませんしな」
駆逐って恐いこと考えるな。
「よし、改めて我がエシリア王国は勇者タクト殿を支援するぞ!」
国王は高らかに宣言する。
「とはいえ、他の四か国の協力が必要なのも事実な訳ですが」
「では、どうする?」
「うーん、とりあえず直接説得が一番かなぁ、一人ずつ話せば分かって貰えるかもしれないし」
少なくとも妖精国以外は手応え有りかな。
「という訳で明日には出発します、先伸ばしにして要らんちゃちゃ入れられたくないですから」
「分かりました、必要なの事があれば遠慮せず言ってください、何でも協力します」
こうして会議は終わった。結果としては何も得られなかったが。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ギルドに戻り会議の結果を留守番していたメグミさん達に話す。
「はぁ、そんな話をしたの………」
「ひっひっひ、成る程ねそりゃ和平もありだろうよ」
「そうですね、そして魔王を従えたタクト様がいずれ世界の支配者に!」
支配者には成らないよ?レイツさんは何を言っているの?うちの従者が本気にするから辞めてね?
「まぁ、そう言う訳なんで、明日にはまず獣王国に行ってみます」
「なぜ獣王国から?」
「獣王国の女王が去り際に"まだ貴方の"って言ってたので、一番話ができそうだったので」
「ふむ、成る程ねぇ、しかし移動方法はどうするんだい?獣王国にしろ他の国にしろ、とてもじゃないが馬車で移動はできないよ」
そうか移動手段は考えていなかった。
「うーん、国王に頼んで転移門を使わせてもらうか?」
「それは無理じゃないかしら、転移門は相手側の門も開いて貰わないと行けないから」
なるほどどちらも開いてないと通行はできないか。
「うーん………」
悩んでいるとクロノが。
「お任せくださいタクト様、明日までに移動手段をご用意します」
と言って来た、ありがたい、ありがたいのだが何故か嫌な予感がする。
「ク、クロノ?大丈夫か?」
「はい、ご安心を少々メロウと二人でお時間頂ければ、明日の朝にはご用意致します」
あー、メロウと二人でという時点で嫌な予感が当たった、絶対ユニコーンの時と同じだ。飛竜便を見た時興味深そうにしていたからな。しかし………。
「背に腹はかえられないか、分かった許可しよう」
「ありがとうございます、では早速」
そう言ってメロウとクロノは出ていった。
「タ、タクトくん?大丈夫なの?あれ本当に大丈夫なの?」
ユニコーンの一件を知っているクレアさんが、心配そうに何度も出口を見る。
「ダイジョウブデスヨ」
「今の言い方大丈夫じゃないよね!?」
「はっはっは」
その場を笑ってごまかし今日は解散した。帰り際メグミさん達にも大丈夫なのか聞かれたが笑ってごまかした。
明くる日の朝、宿にはメロウとクロノは帰ってきており、朝食を食べていると。
「タクト!タクトは居るか!?」
ベイカーさんが慌てて宿に入って来た。やはり何かあったな?昨日事前に泊まっている宿を教えておいて良かった。
「ここでーす」
「タ、タクト、街の外にジェノサイドドラゴンが!」
ジェノサイド?何その物騒な名前。首を傾げながらクロノを見ると。
「はい、我らが用意したものです」
正直に言ったので仕方なく見に行くことに。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
宿を出て街の外に行くとそこには人だかりと、巨大なドラゴンが居た、前に捕まえたドラゴンも大きかったが、それの数倍は有るように感じる。実際横に並ぶのを見ると子供と大人だ。
「こりゃまた凄いもん連れてきたね」
マガリさんがドラゴンを見上げながら言う。
「このジェノサイドドラゴン?ってどんなのですか?」
「ドラゴンが進化したモノでね、ドラゴンでも驚異だが、ジェノサイドに成るとそれこそ五か国で協力して討伐に当たるくらいさね」
魔王と同じくらいってこと?勇者が討伐するべき物じゃないか?
「まぁ、めったにお目にかかれない珍しいモノだね、それがこんな所に居るからみんな大騒ぎだよ」
「ええ、すいませんうちの従者が。で、クロノこれは?」
「はっ、移動によいかと思い捕まえてきました、メロウが魔法で従えているので安全です」
「ああ、道理でゴンドラを背負っているわけだ」
ジェノサイドドラゴンの背には、観覧車のゴンドラ見たいな物が付けられている。
「あれ揺れないか?」
「ジェノサイドドラゴンには重力操作の能力があります、加えてメロウの魔法で風圧などは無効にしますので大丈夫かと」
重力操作で固定して風圧は消すと、なら揺れないかな?嫌でも羽動かしたら振動は来るんじゃない?まぁ、乗って見れば分かるか。
「はぁ、じゃあ行くか、余りここに置いて置くと騒ぎが大きくなるしな」
『はい!』
とりあえずベイカーさんに国王への報告を頼み。俺達は獣王国へ向かう。ケモミミケモミミ。
「これから手を取り合うのだ、タクト殿にそれぞれの国の代表について知ってもらった方が良いであろう」
「手を取り合うかは別として紹介は賛成だ、俺はレバイア帝国国王、グラン・レバイアだ」
「仕方ないのです、わたしは獣王国ガルメティアの女王テトラです、正式名は人間には言い煩いらしいのでテトラでいいですよ」
「わたしはぁ、海洋国の女王、ウェテイアでぇございますぅ、お見知りおきおぉ」
「ふん、異世界人に名乗るようななはない」
ここでも妖精国は問題があった、いい加減メロウ辺りが我慢の限界のようなので、こちらから聞こう。
「何故、異世界人を?」
「ふん、知れたことを、貴様もどうせ前の勇者と同じであろう?」
「同じとは?」
嫌な予感がしつつ聞き返す。
「貴方もエルフを手込めにする気でしょう!」
あいつ本当にろくなことしてないな。手込め、つまり襲ったんだな。
「………同郷の者が失礼な事をしたのは分かりました、しかし、異世界人が全て同じとは思わないで頂きたい」
「ふん、どうだか?」
話が進まないので放置して、テオドール国王に進めるよう促す。
「ゴホン、では改めて会議を始めさせてもらう、まず現在の状態だが……」
国王が話したのは、魔王から宣戦布告が届いた事、既に魔王軍は上陸の準備を始めていること。
「こっちでも確認している、加えるなら偵察に出した飛竜が一騎落とされた」
「飛竜が?」
「ああ、うちは飛竜を使った竜騎士が主力でな、その騎士が一人殺られたのさ」
ふむ、どうやら本格的に戦争まっしぐららしい。
「それでぇ、これからどうしますかぁ?」
「うむ、迎撃とは言うものの我々は死線帯には上がれない、せいぜい上陸の可能性の有る所に部隊の配置くらいか」
「後はぁ海上に巡視船を配置しましょうかぁ」
「上空からも監視が必要だろう、それは帝国が担うぜ」
次々と案が出され決まっていくのだが。
「それで、勇者様は何をするのですか?」
またしても妖精国の女王が突っ掛かって来た。
「何とは?」
「貴方は今回の件についてどう思うか、お聞かせ願えますか?」
挑発するような妖精国女王に溜め息を吐きつつ、答える。
「はぁ、まぁ、何ですかね」
「はっきりしませんわね?言いたいことが有るならどうぞ?」
うーん、これ言うと絶対場が乱れるんだが………まぁいいか。
「じゃあはっきり言いますね?今回のことって本当に魔王からなんですかね?」
「ッ!!」
ほーら変な空気になった。
「おい、そりゃあどういう事だ?」
「記録に残されている魔王と、最近の魔王の行動が合わないんです」
「合わない?」
会議に参加するに辺り、事前に残っているだけの魔王の記録を見せてもらって気づいた、最近の違和感の答え。
「記録に残されている魔王は、一人で死線帯に居る魔族を統一、魔族の国"魔王国"を作ったやり手とあります」
「そうですねぇ」
「そんな魔王が最近では、明らかな采配ミスをしています」
「采配ミス?それはどういう事だ?」
「はい、まず最初はベイルンでのミエム、彼女は魔物を操る事はできますが直接戦闘力はありません」
「それがなにか?」
「街を襲うのにそんな人を行かせますか?ミエムは魔物を使っての撹乱陽動、奇襲に適した能力のはず、侵略や占領、統一を成した魔王がそんな配置をするとは思えない」
「ふむ、確かに」
「次にダナンですが、盗賊として騒ぎを起こしていました、これは一種の陽動に当たります、目立つので一見適任に見えますが、パワータイプのダナンをここに置くのもどうかと思います、俺ならミエムの魔獣に馬車を襲わせますね」
捕縛されても魔物なら喋れないしな。
「続いて、ヒウンなんですが、彼女は不幸体質というかドジなんで、薬品を渡したりするような仕事には向きません、現に尽く失敗していますし」
多分一番薬品持たせちゃいけない人じゃないかな?
「最後にハウザンですが、彼の能力は早く動く事ではなく、気付かれない影の薄さです、潜入ならまだしも馬車の襲撃には向かない、ヒウンと同じように失敗していますしね」
「しかし、それはあくまで貴方が出会った事だけでは?」
「いえ、他にもギルドに多数報告されています、ですよねギルド長?」
「はっ!多くの場所で魔王軍らしき姿を目撃したと報告が来ています!しかし、被害は無いのがほとんどで……」
「言わずもがな失敗しているのでしょう」
やり手の魔王がこうまで立て続けに失敗するとは思えない、その結果出た答えが。
「現在魔王軍を指揮しているのは魔王では無いのかも知れません」
「魔王ではない?では誰が?」
「そこまでは分かりません、ですがこのまま戦争を始めても良いものか、検討するべきでは?」
正直戦争をする必要は無いのでは無いかと思っている、まぁ、直接魔王と話して見ないと解らないけどな。
「ふふ、あはは、何を言い出すかと思えば戦争をしたくないですって!?どんだ勇者が居ましたわ!」
「確かに戦争はしたくありませんが、戦争をする意味が無いと言っているんです、皆さんは戦争したいんですか?」
「当然です!魔族は滅ぼすべきでしょう!?」
真っ直ぐ妖精女王に目を向ける。
「何故?」
「な、何故って、魔族は悪だからです!」
「悪?何を持ってして悪と言いきるのですか?」
「………彼らは我々を傷つけます!それは悪でしょう!」
「では、妖精族の中には他者を傷つける者は居ないと?」
「そ、それは………」
「例えば、人族の中に盗賊が居ます、彼らは他者を傷つけます。人族全てが悪だと?」
「………」
押し黙る妖精女王。
「魔族が全て悪と誰が決めたのですか?」
「………話になりませんね、失礼します!」
そのまま妖精女王は帰ってしまった。
「私も失礼します、今はまだ貴方の話に賛同できないので」
「俺も一度帰るかなぁ」
「ではぁわたしもぉ」
結局全員帰ってしまった、会議はご破算、これは国王に怒られるのではと思ったが。
「なんたる無礼な!特に妖精国めぇ!」
あ、そっちに怒るのね?そう言えばこの国は全面的に支援するって言ってたっけ?
「しかし、本当の所どうするんだ?」
ベイカーさんが真剣な面持ちで訪ねてくる。
「どうって?できるなら魔族と和平に持ち込みたい所ですね」
「和平だって?する意味有るのか?」
ふむ、意味とな。
「有りますよ?というかギルドが一番恩恵受けてるじゃないですか」
「ギルドが?」
ギルドにはたまにレア素材が持ち込まれている。
「死線帯の魔物の素材はさぞかし高値が着くんでしょうね?」
「当然だ、死線帯の魔物はどれも強力、防具になれば冒険者の命を守り、薬になれば多くの命を救う」
「そんな死線帯の素材が、定期的にギルドに持ち込まれているのは?」
「もちろん知っている」
頷いて、ハッとなるベイカーさん。
「可笑しいですよね?人が入れない死線帯の素材が何で持ち込めるんですか?」
「た、確かに………」
「恐らく魔族か、それに協力している者が居るんでしょう」
協力している者と聞いて慌てて立ち上がるベイカーさん。
「直ぐに調べ」
「あー、その必要は無いと思いますよ」
「な、何故だ?街に魔族が居るんだぞ?」
「彼らは友好的だからです、少なくとも素材を売って魔族側に利益が有るとは思えません」
こっちの金なんて死線帯で使えるとは思えないし。恐らく素材を売ったのは市場調査かな?もしくは貿易調査。
「良いですか?死線帯の素材は先ほどベイカーさんが言ったように、多くの命を救う事もできる、それが確実に定期的に手に入るのは?」
「………願ってもない事だ」
「加えて我々が戦争して得るものは?金?いや、彼らの通貨なんて持っても仕方ない、じゃあ領土?住めないのに必要ですか?」
「なるほど得るものがありませんな」
これまで聞いていた国王が話し始める。
「これでは戦争に勝っても意味がありませんな、死線帯に行けない以上魔族の駆逐などできませんしな」
駆逐って恐いこと考えるな。
「よし、改めて我がエシリア王国は勇者タクト殿を支援するぞ!」
国王は高らかに宣言する。
「とはいえ、他の四か国の協力が必要なのも事実な訳ですが」
「では、どうする?」
「うーん、とりあえず直接説得が一番かなぁ、一人ずつ話せば分かって貰えるかもしれないし」
少なくとも妖精国以外は手応え有りかな。
「という訳で明日には出発します、先伸ばしにして要らんちゃちゃ入れられたくないですから」
「分かりました、必要なの事があれば遠慮せず言ってください、何でも協力します」
こうして会議は終わった。結果としては何も得られなかったが。
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ギルドに戻り会議の結果を留守番していたメグミさん達に話す。
「はぁ、そんな話をしたの………」
「ひっひっひ、成る程ねそりゃ和平もありだろうよ」
「そうですね、そして魔王を従えたタクト様がいずれ世界の支配者に!」
支配者には成らないよ?レイツさんは何を言っているの?うちの従者が本気にするから辞めてね?
「まぁ、そう言う訳なんで、明日にはまず獣王国に行ってみます」
「なぜ獣王国から?」
「獣王国の女王が去り際に"まだ貴方の"って言ってたので、一番話ができそうだったので」
「ふむ、成る程ねぇ、しかし移動方法はどうするんだい?獣王国にしろ他の国にしろ、とてもじゃないが馬車で移動はできないよ」
そうか移動手段は考えていなかった。
「うーん、国王に頼んで転移門を使わせてもらうか?」
「それは無理じゃないかしら、転移門は相手側の門も開いて貰わないと行けないから」
なるほどどちらも開いてないと通行はできないか。
「うーん………」
悩んでいるとクロノが。
「お任せくださいタクト様、明日までに移動手段をご用意します」
と言って来た、ありがたい、ありがたいのだが何故か嫌な予感がする。
「ク、クロノ?大丈夫か?」
「はい、ご安心を少々メロウと二人でお時間頂ければ、明日の朝にはご用意致します」
あー、メロウと二人でという時点で嫌な予感が当たった、絶対ユニコーンの時と同じだ。飛竜便を見た時興味深そうにしていたからな。しかし………。
「背に腹はかえられないか、分かった許可しよう」
「ありがとうございます、では早速」
そう言ってメロウとクロノは出ていった。
「タ、タクトくん?大丈夫なの?あれ本当に大丈夫なの?」
ユニコーンの一件を知っているクレアさんが、心配そうに何度も出口を見る。
「ダイジョウブデスヨ」
「今の言い方大丈夫じゃないよね!?」
「はっはっは」
その場を笑ってごまかし今日は解散した。帰り際メグミさん達にも大丈夫なのか聞かれたが笑ってごまかした。
明くる日の朝、宿にはメロウとクロノは帰ってきており、朝食を食べていると。
「タクト!タクトは居るか!?」
ベイカーさんが慌てて宿に入って来た。やはり何かあったな?昨日事前に泊まっている宿を教えておいて良かった。
「ここでーす」
「タ、タクト、街の外にジェノサイドドラゴンが!」
ジェノサイド?何その物騒な名前。首を傾げながらクロノを見ると。
「はい、我らが用意したものです」
正直に言ったので仕方なく見に行くことに。
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宿を出て街の外に行くとそこには人だかりと、巨大なドラゴンが居た、前に捕まえたドラゴンも大きかったが、それの数倍は有るように感じる。実際横に並ぶのを見ると子供と大人だ。
「こりゃまた凄いもん連れてきたね」
マガリさんがドラゴンを見上げながら言う。
「このジェノサイドドラゴン?ってどんなのですか?」
「ドラゴンが進化したモノでね、ドラゴンでも驚異だが、ジェノサイドに成るとそれこそ五か国で協力して討伐に当たるくらいさね」
魔王と同じくらいってこと?勇者が討伐するべき物じゃないか?
「まぁ、めったにお目にかかれない珍しいモノだね、それがこんな所に居るからみんな大騒ぎだよ」
「ええ、すいませんうちの従者が。で、クロノこれは?」
「はっ、移動によいかと思い捕まえてきました、メロウが魔法で従えているので安全です」
「ああ、道理でゴンドラを背負っているわけだ」
ジェノサイドドラゴンの背には、観覧車のゴンドラ見たいな物が付けられている。
「あれ揺れないか?」
「ジェノサイドドラゴンには重力操作の能力があります、加えてメロウの魔法で風圧などは無効にしますので大丈夫かと」
重力操作で固定して風圧は消すと、なら揺れないかな?嫌でも羽動かしたら振動は来るんじゃない?まぁ、乗って見れば分かるか。
「はぁ、じゃあ行くか、余りここに置いて置くと騒ぎが大きくなるしな」
『はい!』
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貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
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