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44. きっと気のせいです
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むせた後も、同じくらいのペースでパフェを楽しんだ私は、席を立って馬車へと向かっている。
でも、ここに来る時と少し違うことが起きている。
アドルフ様に腰の辺りを抱かれる形……王国で普通とされるエスコートをされる形で移動しているのよね。
エスコートが出来る証明って、こういうことだったのね。
胸の高鳴りが気になってしまうから、他のことを考えて気を紛らわす私。
「顔が赤いな。熱でもあるのか?
いや、癒しの力があるからそれは無いか……。何が原因だ……?」
「大丈夫ですわ。お茶が少し熱めだったので、火照っただけです」
「火傷はしていないか?」
「ええ」
こんなお話をしている間もアドルフ様は平然としている。
人の心配よりも自分の心配をしておくべきだったわ。
馬車に乗ったら少しは距離を取れるはずだから、きっと大丈夫よね……。
「先に乗るかい?」
「ありがとうございます」
アドルフ様の手を借りながら馬車に乗る私。
続けて彼も乗って、そのまま私の隣に座ってきた。
「馬車の中までエスコートして頂かなくても大丈夫ですわ」
「嫌だったか?」
「嫌ではありませんわ。ただ、アドルフ様が無理をされていないか心配になってしまって」
「俺は大丈夫だ。サーシャさえ良ければ、ずっとこうしていたい」
嬉しい申し出なのだけど、熱が収まらなくなってしまうわ。
こういう時、どうすればいいのかしら……?
前回の人生でも殿方に密着される機会はあったけれど、こんな風にならなかったのよね……。
もしかして、本当に熱を出してしまっているの……?
「私はどんな風にされても大丈夫ですわ」
「そうか。なら、このままで居させてもらう」
言葉を交わしながら癒しの力を使ってみたけれど、熱は全く引いてくれない。
「サーシャ、熱でもあるのか?」
「きっと気のせいですわ」
「そうか。それなら、サーシャの体温は少し高めなのかもしれないな。
……いや、絶対に違うだろ。もしかして、緊張しているのか?」
「緊張なんてしていませんわ。密着しているから、暑いと錯覚しているのかもしれませんね」
そんなことをお話している間に、馬車が動き出す。
移動中は色々なことをお話して気を紛らわそうとしてみたのだけど、無理だった。
時間が経つにつれて慣れてきたから、次に馬車が止まるときには熱も収まっていたけれど。
これが本当に好きになっている感覚なのかしら……?
恋は病だなんて言うけれど、本当だったのね。
「よし、着いたみたいだ」
「ここは……?」
「王都を見下ろせる丘の上だよ」
窓の外を見てみると、大きな王城が小さく見えていた。
馬車から降りると、目の前に小さくて可愛らしいお花が広がっているのが目に入る。
夕日で茜色に染まっていて、温かい雰囲気に包まれている。
「こんなに綺麗な場所がありましたのね」
「ああ。今のところ俺しか知らないはずだ」
「そんな大切な場所、私が知っても大丈夫なのですか?」
「ああ。いつか大切な人に教えようと思っていたから、大丈夫だ」
そんなことを話している間に、夕日が王城の屋根に被って、私達の足元まで影を落とすようになっていた。
まるで王城が輝いているように見える。
「幻想的ですわね……」
「ああ。この景色を見せたかったんだ」
眩しいけれど、陽が王城の後ろに隠れると眩しさも感じなくなった。
でも、王城から漏れる光はそのままで、すごくきれいに見える。
「……サーシャ?」
「すみません、つい景色に夢中になってしまいましたわ。
連れて来て下さってありがとうございます」
「気に入ってもらえて良かったよ。来週は反対側に行こう」
「楽しみにしていますね」
陽の光が遮られたからかしら?
少し風が冷たくなってきた。
「少し冷えてきたな。これ、羽織るか?」
「ありがとうございます。アドルフ様は寒くないのですか?」
「大丈夫だ」
お礼を言って、上着を借りる私。
それから陽が完全に沈むまで、私達は手を繋いだまま景色を眺めていた。
でも、ここに来る時と少し違うことが起きている。
アドルフ様に腰の辺りを抱かれる形……王国で普通とされるエスコートをされる形で移動しているのよね。
エスコートが出来る証明って、こういうことだったのね。
胸の高鳴りが気になってしまうから、他のことを考えて気を紛らわす私。
「顔が赤いな。熱でもあるのか?
いや、癒しの力があるからそれは無いか……。何が原因だ……?」
「大丈夫ですわ。お茶が少し熱めだったので、火照っただけです」
「火傷はしていないか?」
「ええ」
こんなお話をしている間もアドルフ様は平然としている。
人の心配よりも自分の心配をしておくべきだったわ。
馬車に乗ったら少しは距離を取れるはずだから、きっと大丈夫よね……。
「先に乗るかい?」
「ありがとうございます」
アドルフ様の手を借りながら馬車に乗る私。
続けて彼も乗って、そのまま私の隣に座ってきた。
「馬車の中までエスコートして頂かなくても大丈夫ですわ」
「嫌だったか?」
「嫌ではありませんわ。ただ、アドルフ様が無理をされていないか心配になってしまって」
「俺は大丈夫だ。サーシャさえ良ければ、ずっとこうしていたい」
嬉しい申し出なのだけど、熱が収まらなくなってしまうわ。
こういう時、どうすればいいのかしら……?
前回の人生でも殿方に密着される機会はあったけれど、こんな風にならなかったのよね……。
もしかして、本当に熱を出してしまっているの……?
「私はどんな風にされても大丈夫ですわ」
「そうか。なら、このままで居させてもらう」
言葉を交わしながら癒しの力を使ってみたけれど、熱は全く引いてくれない。
「サーシャ、熱でもあるのか?」
「きっと気のせいですわ」
「そうか。それなら、サーシャの体温は少し高めなのかもしれないな。
……いや、絶対に違うだろ。もしかして、緊張しているのか?」
「緊張なんてしていませんわ。密着しているから、暑いと錯覚しているのかもしれませんね」
そんなことをお話している間に、馬車が動き出す。
移動中は色々なことをお話して気を紛らわそうとしてみたのだけど、無理だった。
時間が経つにつれて慣れてきたから、次に馬車が止まるときには熱も収まっていたけれど。
これが本当に好きになっている感覚なのかしら……?
恋は病だなんて言うけれど、本当だったのね。
「よし、着いたみたいだ」
「ここは……?」
「王都を見下ろせる丘の上だよ」
窓の外を見てみると、大きな王城が小さく見えていた。
馬車から降りると、目の前に小さくて可愛らしいお花が広がっているのが目に入る。
夕日で茜色に染まっていて、温かい雰囲気に包まれている。
「こんなに綺麗な場所がありましたのね」
「ああ。今のところ俺しか知らないはずだ」
「そんな大切な場所、私が知っても大丈夫なのですか?」
「ああ。いつか大切な人に教えようと思っていたから、大丈夫だ」
そんなことを話している間に、夕日が王城の屋根に被って、私達の足元まで影を落とすようになっていた。
まるで王城が輝いているように見える。
「幻想的ですわね……」
「ああ。この景色を見せたかったんだ」
眩しいけれど、陽が王城の後ろに隠れると眩しさも感じなくなった。
でも、王城から漏れる光はそのままで、すごくきれいに見える。
「……サーシャ?」
「すみません、つい景色に夢中になってしまいましたわ。
連れて来て下さってありがとうございます」
「気に入ってもらえて良かったよ。来週は反対側に行こう」
「楽しみにしていますね」
陽の光が遮られたからかしら?
少し風が冷たくなってきた。
「少し冷えてきたな。これ、羽織るか?」
「ありがとうございます。アドルフ様は寒くないのですか?」
「大丈夫だ」
お礼を言って、上着を借りる私。
それから陽が完全に沈むまで、私達は手を繋いだまま景色を眺めていた。
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