水しか作れない無能と追放された少年は、砂漠の国で開拓はじめました

水空 葵

文字の大きさ
8 / 25

8. 砂漠の国一番の町

しおりを挟む
 翌朝。重たい瞼を持ち上げた僕は、背中が妙に温かいことに気付いた。
 少し前に出てから後ろを見ると、小さく寝息を立てているソフィアの姿が目に入る。

 どうやら僕は抱き枕代わりになっていたらしい。
 気持ちよさそうに寝ているところを起こすのは悪い気がするから、ゆっくりと荷台から這い出る。

 それから朝食の準備を始めることに決めた。

 準備と言っても、パンの間に野菜と肉を挟むだけだが、崩れないように挟み込むのは中々手間がかかる。
 そうしていると、馬車の荷台の方から物音が聞こえて来た。

「あれ……レインは……?」

「おはよう、ソフィア。先に準備してるよ」

「ありがとう……」

 短い言葉を交わしている間にサンドイッチが出来たから、昨日のうちに洗っておいた食器の上に並べていく。
 そうして昨晩と同じように話をしながら食べ終わると、僕たちは御者台に乗り込んだ。

「王都にはどれくらいで着くのか分かる?」

「今日中に着くと思うわ」

「分かった」

 馬車を引いているラクダは今日も力強い足音を立てながら進んでいく。
 しかし、太陽が高く上がると問題が起きてしまった。

「風が強くなってきたから、一旦止まるわ」

「分かった」

 まだ大丈夫だが、これ以上酷くなると砂嵐で目を開けられなくなるだろう。
 ラクダは大丈夫らしいけど、僕達人間の目はそんなに丈夫じゃない。

「砂だけなら、こんな風に水を平らにすると目を守れるけど、他にも理由があるの?」

「水魔法は形を維持するのにも魔力を使うと聞いたことがあるのだけど、一日中そうしていても大丈夫なのかしら?」

「形をとどめるだけなら大した魔力は使わないから、問題無いよ」

 僕の水魔法は、水を生み出す時に一番魔力を消費する。
 それ以外……例えば水を動かすだけなら、自然に回復する魔力量よりも少ない消費で済むから、集中力が続く限りは使い続けることが出来る。

 他の人がどれくらい魔力を使うのか分からないけど、これを出来ていても元居たパーティーでは無能扱いだったから、そういう事なのだろう。
 決して自慢できるような力ではないのは確かだ。

「それならお願いしても良いかしら? 御者台を囲ってくれると嬉しいわ」

「分かった。こんな感じで良いかな?」

 水を窓ガラスのように形を変えて、御者台に砂が入り込まないように動かす。
 すると砂はもちろんのこと、風も防げるようになったから、目が乾くことも無くなった。

 水魔法の覆いに付いてしまう砂も、水を薄く動かせば取り除けるから快適に出来る。
 ガラスと違ってラクダを操るための縄をすり抜けさせているから、馬車の動きにも問題は無さそうだ。

「こんな使い方も出来るのね……!
 本当にすごいわ!」

「役に立てて良かったよ」

 楽しめるような景色ではないけど、こうしていれば周りの様子も見えるから、魔物が出てきても問題無いだろう。

 もっとも、砂漠で見かけるのは野生のラクダだけだ。
 魔物は食べつくされているのか、気配すらしていない。

 お陰で順調に進むことが出来て、昼食と数度の休憩を経て、王都という場所が見えてきた。

「あれが王都よ」

「建物は砂と同じ色なんだね」

「砂を固めて作っているから、同じ色になってしまうの」

 影のお陰で建物だと分かるが街並みは、近付くにつれて存在感を増している。
 今も砂嵐は続いているからか、人影は見えないが、建物の数を見ればそこそこに栄えていることが分かる。

 そして、僕達乗っている馬車の真下、地面の下の方から大量の水の気配を感じる。
 オアシスは、この地下水脈が溢れて出来ていると分かった。

「オアシス、思っていたよりも大きいんだね。驚いたよ」

「ええ。あのオアシスにはいつも助けられているわ」

 これだけの水があれば、水田を作っても余裕がるように思える。
 地下水は帝国の方向に流れているようだから、汲み上げすぎても枯れることも無いだろう。

「これだけ近いと便利不便は無さそうだね。
 農業をするとなると足りないかもしれないけど」

「それだけじゃないわ。
 水を撒いても、砂のせいですぐに消えてしまうの」

 そんな会話をしている間に、平らに整地されている場所が目に入る。
 まるで畑のように区画分けもされているから、ここを活用すれば手間を減らせるかもしれない。

「畑を作る時は、この辺りの土地を使っても良いのかな?」

「ええ。でも、この辺りはすごく水はけが良いから、農業には向かないと思うわ」

「そのままだと無理だと思う。
 でも、ソフィアの魔法で砂を石に帰られたら、水を貯められると思うんだ」

「これだけ広いと大変そうね……」

「そうだね。
でも、僕も出来るだけ広い範囲を覆えるように頑張るよ」

 そんな話をしている間に馬車は町の中心に差し掛かったようで、この辺りで一番高さのある建物の前に止まった。
 ここがソフィアが暮らしている家のようだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...