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chapter.1 [静寂と騒音]
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しおりを挟むぐうぐうと寝ていると布団を引き剥されて冷たい床の上へと転がされる。
なんでも魔物が隣の町を襲ったらしい。群れを成した知性低き魔物の仕業の可能性もあるがこの半年間、魔王軍による襲撃が絶え間なく続いている。
この事態を解決する為には魔界に赴いて直接問題の種を叩き潰さなくていけない、それがこの旅路の目的であり、バン・クランジェーの目的でもあった。
(正直、どうでもいいんだがなぁ……そんな事)
頭をわしゃわしゃと掻き乱してはぁ、と大きなため息を一つ。
茶色の木板で埋め尽くされた天井を眺めながらガルビスは面倒くさそうに考えていれば視界の外でわいわいと話し声が聞こえてくる。
程なくして声は止み、その代わりバタバタと準備する二人の足音と姿がちらちらと入ってくる。
それに気付けば「いよっと」と掛け声を口にして重たい腰を持ち上げ、立ち上がると二人を見つめた。
「なんだ…行くのか?」
気怠い声でそう問いかけると、鼻息を荒げて今か今かと楽しみにしているかの少年、バン・クランジェーは興奮気味に答えた。
「もちろん!魔界に行けるかもしれないんだよ?!ガルビスも一緒に行くんだよ!」
「はぁ?お前達だけで好きに行けばいいだろ。俺には関係ない」
「なんでぇ!?」
「第一、俺が行ったところでなんの利もない。だからこそ行く理由なんかないだ────」
残念がるクランジェーを前にしながらもつらつらと自分勝手な事を述べていたガルビス。
しかし、そんな彼にちょいちょいと背中をつついたスタンは手の内にある分厚い布でくるまれた禍々しい闇色の結晶を見せてはクランジェーに代わって魔界の良さを語る。
「この魔結晶は魔界でしか入手できないものです」
「それがどうした」
「これをひと舐めしてください」
「…どれ……、ッ!なんだこれは……口の中に広がる甘さ…まるで角砂糖のように甘く、多幸感が広がってくる…!」
「これをすりつぶし、薬と合わせれば何かできないでしょうか…?」
魔結晶と呼ばれる結晶を舐めて驚きを隠せないガルビスは何度も唸る。
魔界でそれが拾えるならば…と何やら熟考しているようでしばし腰に手を当てて考えあぐねていたがようやく顔を上げて二人を見つめる。
「……今回だけだからな」
嫌々といった露骨な態度を示せばそそくさと身支度を始めたガルビス。
そんな彼を見てやったー!と喜ぶクランジェーを連れてスタンは家を出る。
特段急ぐわけでもなく、のんびりと出てきたガルビスと共に魔物が襲撃したという隣の町へ。
噂に聞く魔物はいったいどんなものなのか。誰が率いているのか。誰に命じられて襲撃しているのか。
魔界へと至る道を模索すべく、足は西へ西へと進んでいく。
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