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しおりを挟む「もう!ルカがくっつくから変な目で見られたじゃない」
広間を出て少し歩き、賑やかさが薄れた一角まで来るとユーリがルカに文句を言った。
「気にするなよ。みんな綺麗なものが好きなんだ、ユーリの天使みたいな姿に見惚れていただけだよ」
「天使?」
「それに女性は可愛いものに群がる性質があるから」
「可愛いもの、って・・・?」
「ユーリの事だよ」
「もう!」
頬を膨らませるユーリを見てルカは笑った。その時、鮮やかなドレスの令嬢達がルカの名を呼んだ。
「まぁ、ルカ様!」
「ルカ様。まだ晩餐会の最中じゃございませんの?」
「ちょうど噂してたんですのよ」
晩餐会後の舞踏会に参加する娘達がルカを取り囲んだ。
華やかな一団にユーリは少し気遅れし、こっそりと素早くその場を離れた。
一人で行こう
何度も訪れたことのある王宮だ。ユーリは少し一人で歩こうと思った。
通路の先にあった扉を押し開けると夜風が頬をなでた。
「ああ、気持ちいい・・・」
晩餐の喧騒が遠く霞む静かな中庭。
美しい石畳みを、ユーリはゆっくり密やかにあるいた。
白いガゼボの柱に絡む蔦が月光を受け淡く輝いている。
酔いの熱が頬に残るまま、無意識にガゼボへ足を向けた。
噴水の小さな水音と、夜の花の香。
月が冴え冴えと空に浮かぶ。
「はぁ、ここ・・・きれいだな・・・」
ポツリと呟いた瞬間風が吹いた。
ガゼボの奥、白い石造りの壁の上に人がいる。
「あっ・・・!」
月を背にして壁の上に膝を立てて座る
人影。ユーリはすぐに気がついた。
「イアン様!」
ユーリが駆け寄るとイアンはほとんど音もなく飛び降りた。
まるで月の精が降り立つかのように。
「イアン様、ここにいらしたんですか!?」
会えた喜びにユーリの声が裏返った。
イアンはクスクス笑いながらユーリの頬にかかった髪を優しくすいた。
「やぁ、迷子の月の子。ここで会うのは運命かな?」
冗談めかした言葉にユーリは笑ってしまった。でも月の精は圧倒的に美しく凛々しく、声までもが尊くて胸が震えた。
酔いでほてっていたユーリの頬が今はさらに赤みを帯びている。
「運命なんて・・・イアン様は詩人みたいですね」
その言葉にイアンは目を細めてユーリの滑らかな頬に触れた。
「私が詩人ならまず、この可愛らしい頬を薔薇に例えるよ。まだ咲いたばかりの、この柔らかな花にキスたいな」
「どうぞ!」
少しだけ照れて、でもハキハキと答えたユーリにイアンは困った顔でそっと頬にキスをした。
「こっちにおいで、風が気持ちいいよ」
手を繋いでガゼボの中のベンチへ行き、ユーリはイアンの隣に座ろうとした。だがふわりと体が浮いてイアンの膝の上に乗せられた。そして逞しい腕の中に閉じ込められた。
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