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しおりを挟むかすかな鳥の鳴き声とカーテンの隙間から差し込む光で、夏生はゆっくりと目を開けた。
頭の奥が少し重い。
寝起きの視界はぼやけていて天井の白が滲んで見える。その上コンタクトをつけたまま寝てしまったせいで違和感がある。
「やっべ⋯乾燥する⋯」
夏生は目を閉じ目頭を押さえた。
「どうした?」
同じく寝起きの気だるい声がすぐそばでして夏生はビクリと体を硬直させた。
「え⋯」
「そうか、コンタクトしてたんだよな」
松田の声だ。
夏生は少し身動ぎして全身の皮膚感覚を確認する。
裸じゃねぇか!!
バクバクと跳ねる心臓のせいで完全に目が覚めた。
「⋯オーナー⋯何やってんすか⋯」
恐る恐る目を開けて声の方に顔を向けた。
そこには予想通りの端正な顔があって、夏生のとぼけた質問に小さく笑った。
「何やってるって⋯そうだな、俺のベッドで裸の広瀬と朝を迎えている、かな?」
「は⋯待って待って待って⋯」
急いで昨夜の記憶を辿る。
松田の家に来て白ワインを飲んでおかわりをしてシャワーを浴びた。その先が⋯
無い⋯!
夏生の混乱をよそに松田は体の向きを変えて枕の上に肘をつき自分の頭を乗せた。
髪が乱れてアンニュイな雰囲気にドキッとしたがそれどころではない。
「⋯あ⋯の⋯」
松田のシーツから出ている部分が全部素肌ではないか。
愕然とする夏生に松田はニヤニヤしながら口角を上げて言った
「昨日は最高だったな。広瀬があんなに乱れるなんて想像してなかった」
「な、な、何が⋯」
動揺しすぎて言葉が出ない。
「どこもかしこも感じやすいし、おねだりも上手だし、俺翻弄されっぱなしだったよ」
心当たりがあり過ぎる。
夏生は反射的に尻に力を入れて後に違和感が無いか確かめた。
「やっ⋯」
て⋯ねぇよな⋯?
多分大丈夫。尻は平常運転だ。
とりあえず胸を撫で下ろして松田に聞いた。
「からかってますよね?・・・俺フロ場で倒れたんだ」
思い出した。同時に心底ホッとした。
松田は「バレたか」と小さく肩を動かした。
「残念。焦ってる顔可愛かったのに」
「もう、やめてくださいよ。⋯死ぬほど焦った」
「でもキスはした。濃厚なやつ」
「うっ⋯」
なぜキスをする事になったのだろう。どちらからしたのか、どんなのをどのくらい⋯知りたいが知りたくないし深掘りしたくない。
「⋯忘れて下さい」
「びしょ濡れの広瀬抱えてベッドまで運んだんだよ?キスくらい良いよねぇ?」
「⋯じゃ、それで良いです」
忘れてくれるなら何でも良い。
夏生が話を流すと松田が突然夏生の上に覆い被さってきてキスをした。
「⋯んんっ、んーんーんー!」
頬を片手で挟まれて唇を舐め吸われた。
感覚に覚えがある。昨夜もこんな風にされたのだろう。
「ご馳走様」
いつかのように自分の唇をペロリと舐めた松田は余裕たっぷりの笑顔で起き上がりベッドから降りた。
夏生が文句を言う間も無く「コーヒーいれてやる」と言って颯爽と寝室から出て行ったその下半身はちゃんとスウェットを履いていた。
しばらくして、シーツを体に巻き付けた夏生が洗面所に移動した。
鏡を見て絶叫する。
自分の体のあちらこちらに赤いキスマークが無数につけられていたのだ。
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