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しおりを挟む翌日。
今年の夏も「硝子」は連日満席で一日中賑わっているが、今日は珍しく穏やかな客入りだ。
ランチタイムが終わり、のんびりした空気が流れ始めた店内で夏生はテーブルを拭いていた。
「広瀬おつかれ、もうそろそろ上がっていいぞ」
「はい!」
香取が夏生に声を掛けた。
今日は夕方までのシフトだ。退勤したら帰って卒論の下準備をしようと考えていた。すると女性のグループ客が入ってきた。
「いらっしゃいま・・・げっ、また来たんですか?」
まだ夕方の早い時間だというのにユリカはやって来た。
「やだ、邪険にしないでよぉ。今日は研修が早く終わったから同期と飲もうと思って。すいてて良かったー」
そしてユリカの後に続いて入って来たスーツ姿の女性二人が「硝子」の店構えや内装に関心しながら夏生の顔を見た。
「わ!かっこいいね、モデルとかかな?」
「うそ~、すっごい綺麗なんだけど!」
コミュ力の高そうな同期二人はユリカとノリが似ている。
二人して夏生の容姿を何度も褒めた。
三人は楽しそうにテーブル席についてビールを注文した。そしてすぐに研修や仕事の話をし始める。
自分も来年の今頃にはああやって同期と仕事帰りに飲んだりするのかと想像してウキウキした気分になる。
頑張って卒論やるか!
やる気になっていると店の入り口がまた開いて他のスタッフが元気に迎えた。そちらをふと見た夏生はギクリとした。
涼しげな色と素材のセットアップに身を包んだ松田がいつもよりずっと早い時間に現れたのだ。
「え。なんで⋯」
今日もオシャレで颯爽としている。
松田は夏生の姿を認めると軽く目を細めて笑った。
「わ、オーナー来たぁ、ちょうど良い、オーナーも誘おう!」
ユリカは大きく手を振った。
「えっ!良いでしょオーナーは。同期水入らずで楽しく飲みなよ、オーナー入っても気ぃ使うだけだって。ホラ、今日のオススメでもじっくり見て下さい」
夏生はユリカと松田を接触をさせたくなくて気をそらそうとした。
だが松田はユリカ達のテーブルにやって来た。
「よぉ、久しぶりだな。昨日も来てたって聞いたけど?」
軽い調子でユリカに声をかけ、他の二人にもあいさつをした。
イケメンの松田が来て同期の二人は嬉しそうだ。
「ええ!オーナーさんですかぁ?
「こんなにかっこいいなんて~」
「良かったらご一緒しませんかぁ?」
これはダメだ。
松田も「良いのかな?」と言いながら夏生に酒を注文した。
夏生と松田が並んで立つ姿にユリカ達ははしゃいでいる。
「美形のツーショットの破壊力」
「この店なんなの?顔面偏差値高くない?」
「いきなりですけど、お付き合いしてる人いますか?」
同期の一人が聞いた。
初対面のくせにいきなりな質問をする。
さすがユリカの連れだ。
「いないよ。広瀬もいないよな?」
松田は首を傾けて夏生の顔を覗き込むように言った。
「えっ・・・」
ユリカが見ている。
右手の親指と人差し指で自分の顎を摘んで「むむ・・・」というような顔で夏生と松田を交互に見ているのだ。
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